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カタログ制作の裏側 - マザーハウスのアートディレクターのお仕事 -

マザーハウスのカタログは、構成作りから撮影、印刷まで全て社内のアートディレクターが企画しています。生産地より届く商品をまとめたカタログは、お客様に季節の新作やものづくりの挑戦をお伝えする大切なツールのひとつ。

今回は2022年秋冬のカタログ制作について、マザーハウスでアートディレクターを務める立石と長田にインタビューを行いました。凛と商品が並び、毎回きれいにまとめられたカタログ制作の秘話や、カタログを通して「マザーハウス」というブランドをつくるアートディレクターのお二人を紹介します。

プロフィール

左:立石、右:長田

立石
2017年にマザーハウスへ入社。
絵を描くことや人の思いを表現することに関心を持ち美術大学へ。卒業後は広告製作会社で11年務める。デザイナーとして働く中で「自分が心から納得できるものを伝えたい」と思い、マザーハウスに入社。現在はアートディレクションチームのチーフマネージャーとしてマザーハウスのビジュアル全般のディレクションを行う。

長田
2017年にマザーハウスへ入社。
好きを仕事にしたいと思い美術大学を卒業しグラフィックデザイナーとしてパッケージ等を手がける制作会社に勤務。ある時大きな交通事故に遭い、自分の生き方を見直す中で、兼ねてから関心のあった国際協力を志し青年海外協力隊としてインドネシアへ赴任。任務中に感じた思いを胸にマザーハウスへの入社を決意。現在はアートディレクターとしてポスター、カタログなどの印刷物や、WEB媒体などのグラフィックデザインを行う。

「ニュートラル」というコンセプトをもった2022年秋冬のカタログ

ー 今回のカタログの見どころを教えてください。

長田:今までのカタログは、まず「その季節の主力商品」をどう表現していくかを考えるというやり方で制作していました。ただ、今回は、商品ひとつひとつの見せ方からではなく、初めてカタログ全体のコンセプトからから考えることにしたんです。そして、カタログを通して「マザーハウスの今」を伝えることを大事にしました。山口から今年のデザインについてヒアリングした内容や、各商品の特徴から考えぬいて出てきたものが、中立や中間を意味する「ニュートラル」というコンセプトでした。

2022年の秋冬カタログ

全体のコンセプトが決まっても、なかなかカタログの細部に落とし込むのは一筋縄ではいかなかったですね。「ニュートラル」という抽象的な言葉をビジュアルにしていくために、モデルの性別や国籍、年齢を何パターンも検討しましたね。全体のカラーバランスやスタイリングの方向性なども含めて議論を重ねました。

一緒にブランドを伝えるモデルと出会うために

 ーカタログを制作する上で、大変だったエピソードを教えてください。

立石:作りたい世界観を一緒に表現してくれるモデル探しは難関でしたね。モデル探しは、まず各事務所からモデルの写真集をもらうんですけど、やっぱり写真だけではわからなくて。私と長田とで、モデルのオーディションを行うことにしたんです。その中で大切にしたのは、私たちのブランドや理念について知ってもらい、理解してもらうことでした。それから、実際にマザーハウスの商品を持ってもらって、撮影して、雑談して。

ー 1人ひとりのモデルにブランドの説明をするんですか?すごく手間をかけてるんですね。

立石:はい。一見大変なんだけど、商品にマザーハウスの哲学が込められているからこそ、モデルのみなさんにも直接私たちからブランドの事や商品のことを伝えたいなと思っています。会話を重ねて商品を持ってもらうことで、しっくりくる・こないが分かるんですよね。奇跡的にマザーハウスの商品を普段から使ってくださってる方にも出会いました。

長田:オーディションが終わっても、結局誰にお願いするかの話し合いがまた大変で…。それは撮影してみないと分からないことがたくさんある、というのもあります。もちろん、ベストを想定してモデルオーディションに来てもらう方を選ぶのですが、実際に撮影してみると「こんなモデルはどうだろう?」とアイディアが膨らんで、追加でオーディションの手配するなんてことも度々ありました。

誰かが答えを持っているわけではない中で、みんなの意見をまとめ上げていくことは大変ですが、それ自体も、アートディレクターである私たちの仕事だと思っています。

ー お話をお伺いすると、カタログに写るモデルを見る目が変わりますね。

立石:モデルに求める要素とカタログを作るための制約との狭間で一時はどうなるかな…と思いましたが、最終的には、この方にお願いしたい!と全員が思える方々との出会いがあり、できることはやりきってよかったと思いましたね。

カタログを手に取るお客さまの存在 

ーマザーハウスの アートディレクションという仕事の面白さはどこにあるんでしょうか。
立石:素材を調達、生産と開発からお客さまの手元に届くまで基本的には、ほぼ自社で行っているので、生産側の思いも、お客さまの反応もわかるということが一番の強みだと思います。そして、なにより大切なのは、お客さまの存在ですね。前職では、つくって終わりでその先のお客さまの反応が見えなかったので。ビジュアルを作る仕事に対しての納得感はすごくありますね。

長田:実は、カタログがリリースされた後は、お客さまのInstagramのコメントを結構見たりしています(笑)コメントを見て、次はこうしてみようかなと考えたり。今回のカタログも、お客さまからの反応はどうだったか店舗のみんなにヒアリングをさせてもらいました。

チームで同じ目標に向き合えるのは、お客さまがいるから。

立石:カタログ制作やWebページも、私たち個人の意見というより、マザーハウスの顔として出ていくものだから「お客さまにとってどうか」という同じ目的に向かっている中で、お互い活発に議論できています。

長田:チームとして立石さんには圧倒的な信頼感があります。私が何を言っても、「お客さまにとってどうか」という視点をぶらさずに自分よりも高い視点から意見を正面からぶつけてくれるのはありがたいです。

アートディレクターはビジュアルからブランドの進化を伝える仕事

ー 最後に、マザーハウスのアートディレクターとして、大切にされていることを教えてください。

立石:一つ目は商品を作っている生産地の職人のみんなの進化に負けないようにビジュアルもアップデートしていくことです。商品や品質が少しずつ良くなっているのに、カタログからその進化が伝わらないのはもったいないと思うんですよね。

二つ目は「表現したいマザーハウスらしさって何?」ということをみんなで考えながら妥協せずに追求しています。もっと商品をかっこよく見せたいと思って、照明を強くしたら革がビニールのように映ってしまい素材の良さが伝わらなかったり、撮影がうまくいっても印刷してみると表現したい色と異なってしまったり…。

長田:商品に追いつくことももちろんですが、最近は「3年後、ビジュアルを通してブランドをどうお客様に発信していくのか?」ということも話すようになりました。

立石:正直、アートディレクションの仕事を長くやっていると、ビジュアルを、きれいに作るスキルは身に付くんです。だけど、このビジュアルを通して、見ている人に何を伝えたいのかというところまで考えて落とし込むことこそがとても本質的で大切なことだと思っています。「このビジュアルで、本当にお客様に伝えたいことが伝わってる?」「ちゃんとお客さまに受け取ってもらえているかな?」と自分たちに問いかけながら、これからもアートディレクションの仕事をやっていきたいと思っています!

編集スタッフのあとがき

一見華やかに見えるアートディレクターチームのお仕事は、本質を形にするための地道なトライ&エラーの連続であるとカタログ制作の裏側を通して知ることが出来ました。技術的な難しさだけでなく手間をかけるべきところにかけ、起こる全てを実験と捉えて次への糧にしていく姿勢は、マザーハウスのものづくりそのものでした。

カタログ制作過程での大変だったことをお話しいただいている中で「進行系のものが大変すぎてもう何が大変だったか薄れちゃってました!」と笑いながら話してくださったアートディレクターチームから、次はどんなものが生み出されるのか。商品と合わせてどうぞお楽しみに!

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