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新感覚!解決しないミステリー小説ロンドの旅Part2.ソナタの旅Chap.3マスカットの事件


15.淡白

翌朝、7時ちょうどに3人の部屋のインターホンが鳴った。ロンドとソナタは時間に正確で、待ち構えていたかのように部屋の扉を開け係員と挨拶を交わした。一方、旧友はいささかルーズなところがあり、特に朝が苦手で、5分経っても一向に出てこない。係員は1人1人に付いているので、ロンドたちは先に会場へ向かうことにした。

 彼は相変わらずね。

 はは。そうだね。どんな状況でも自分のペースを乱さないのが良いところさ。

 …物は言いようね。ただ単にだらしないだけとも言えるわ。

 そういう見方もあることは、僕も認識しているさ。

他愛もない会話をしながら数時間前に通った道を一歩ずつ進む。昨日の事件やこれからの研修、そして何より異様な客室のことは脳内の容量の大半を占めるホットな話題だ。もちろん不安もあるが、"上"の正体に近づけるまたとない好機と捉え、2人の胸中はむしろワクワク感が圧倒的に優っていた。

 おはようございます!!

係員がドアを開けると昨夜同様、壁際に立つ者たちが威勢よく声を発し深々と頭を下げた。数名の受講者は教室形式に並べられた席についていて、各々の机の上には朝食と思われる料理が並んでいる。見たところ、パン、オムレツ、スープ、ヨーグルトといったオーソドックスなメニューだ。ロンドとソナタも案内された椅子に腰をかけた。到着した者から適宜食事を摂るよう促されたので彼らも手をつける。そうして1人また1人と受講者たちは集まり、やがて旧友を除く9名が揃った。ソナタは斜め前に座るロンドに囁く。

 まだ来てないわね。

 そのようだね。

すっかり食事を終えコーヒーを片手に寛いでいる2人。周囲を観察しつつ、脳内ではこれまでのことを整理し、これからの計画を立てていた。

 みなさん、おはようございます。

責任者の女性は受講者たちの前に立ち挨拶をした。パーマがかった短い髪に縁が厚めの丸い眼鏡、派手な赤いジャケットとスカート、そして黒いピンヒールでばっちり決まっているという感じだ。一方、肩まである金のストレートヘアと瞳によく合う黒いジャケットとスーツ、革靴はロンドのお気に入りのスタイルだ。ソナタの腰まであるサラサラの黒髪は彼女のトレードマーク。服装にはこれといった拘りはないほうである。

 お1人まだ来られていないようですが、みなさん食事を終えられ一息つかれている様子ですので、これからのスケジュールについて連絡します。研修は9時から開始となります。会場はこちらになりますので時間になりましたらお集まりください。それまでは各自のお部屋を含め建物内で自由に過ごしていただいて構いません。研修の内容やスケジュールは後ほどご説明します。それではごゆっくり。

責任者は受講者たちから質問を求めることもなく、淡々と連絡事項を伝え終えるとすぐに会場を後にした。受講者たちが使用するドアの反対側に別の出入り口があり、事務局はそこをよく利用している。時刻は8時を回っているが、旧友の姿はない。ここまで来るともはやルーズというレベルを超えていて、"大物"とでも揶揄すればよいのだろうか。ロンドとソナタは彼についた係員のことを思うと居た堪れない気持ちになった。

 さてソナタ、食後の散歩でもしようか。

 あら?デートのお誘いかしら?

 …僕で良ければ。

 ロンド、自分に自信がない男は魅力がないわよ。

 それは君の好みの話だろう。時にはナヨナヨした人が好まれることもあるさ。

 そう…まあどうでもいいわ。行きましょう。

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