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青春HIGH-LOW老人とは何者か?

ある夏の夜、私は体中に「人間」という字を書けるだけ書いてみようと思いました。
「なぜそんなことを?」と頭に思い浮かぶ前に行動しないと夏が終わってしまう気がしたのでさっそく裸になって太ももから書き始めました。
足から腹へ…腹から腕へ…。
今、世界中で私と同じ行為をしている人がどれだけ居るだろう、そんなことを考えながらペンを走らせました。
それはそれは凄まじいスピードです。
でも実際はそんなに速くはなかったのかも。
感覚が追いつかず考えるより先に手が動いていたのでそのように速く感じていた可能性もあります。
「一つ書いた!」と思った瞬間にはもう三つ書いていたのですから。
「人間だけだとなんかアレだな」と思い右脇の下に「最高の感動は自分発信で」というキャッチフレーズ&意気込みを隠しアイテムのように書き足しました。
前面はある程度書けて「さあ、背中はどうしようか」と思ったとき私は顔がビショビショになっていることに気がついたのです。
「汗かな」と思ったのですが様子が違います。

それは鼻水でした。

鼻水が流れ続けていたのです。
そのことがわかった瞬間「ドカン!」という感覚とともに感動が爆発しました。
「おお」と余韻にひたる暇も無く何度も「ドカン!ドカン!」と感動が襲ってくるのです。
はじめのころは「いいぞ」と思っていたのですが、じきに私は怖くなりました。
感動の爆が止まらない!
「このままいけば死ぬかもしれない」と思いました。
そこで私は出来るだけ「何でもない」という顔をしながら「全然平気という気持ち」を盾にその衝撃と闘いました。
「ドカン!ドカン!ドカン!」
もしその光景を見ている人がいたらきっと華麗に踊っているふうに見えたことでしょう。
六畳一間の小さな部屋で私は死のダンスを踊ったのです。
「最高の感動は自分発信で」なんて書いていた頃が懐かしくさえ感じてきたとき「ドカーーーーーーーン!」と強烈なのが来ました。
その一発で私は倒れました。
倒れる瞬間、暗闇が笑っているように見えました。
気がついたら朝になっていたのです。
私はお風呂に入り石鹸で体中の文字を消しました。
そして朝ご飯を食べました。
味噌汁を呑みながら「なぜあんなことを?」と思いました。

おわり

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