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あたり一面大横綱!

日曜日、午前11時の大阪城公園。
春の日差しに照らされてベンチでゆっくりとその暖かさを楽しむ。
自分のような男にそんな時間があってもいいのだろうか。
いいのかな?
 本当に?
 大丈夫?
 自分にも伺いを立てるなんて。
心が弱っている証拠だと思った。
「人生を急ぎすぎ。休みなさい。」と陽気が言ってる。
そんな気がする。
今まで脳が混乱してたのはこんな日が無かったからかもしれない。
やらなきゃいけないことはたくさんあるけど今日はもういい。
ここで自分のすべてを天日干ししよう。
心を解放してエネルギーをチャージしよう。
「VIVA LIFE!」
そんなこと思ってたらいきなり突風が吹いて俺の中の"人間らしさ"を全部吹き飛ばした。
なんてこった。
生きる上で大切な意味も人格も言葉も感情も一瞬で引っぺがして持って行ってしまった。
心を開けすぎた!
大阪城が模様に見える。
春の風はいたずらをするとは聞いていたけどいたずらがすぎる。
ひっくり返ったタンスのように自尊心とかアイディンティティとか情熱とかあの子との思い出とかがぼろぼろとこぼれていく。
もうどうしようもない。
人間らしさなんていう曖昧で見えないものが飛んで行ってしまったのだから探しようもない。
終わった。
何もかも。
叫び声が聞こえてくる。
それはどうも自分の声だ。
人間らしさが無くなった者はこんなに叫びまくるのか。
もう人間じゃない、獣だ。
鼻水が出てる。
喉が千切れるほど叫びまくってる。
もうどうでもいい。
でもその後どうなる?
終わりを覚悟した俺はもう何がどうなろうと知らん!とばかりに他人の視点で自分を見た。
驚いた。
赤ちゃんみたいな顔をしているよぉ。
おっさんの胴体に赤ちゃんの顔。
「今、産まれました」みたいな顔で空を見ている。
なんて無垢な瞳をしてるんだ。
終わるには惜しいが終わるしかない。
向こうから二倍人間らしい奴が来た。
そうか、飛んでいった俺の人間らしさはどうもこの人に収まったらしい。
帽子じゃないんだから。
人間らしさゼロの男と人間らしさ二倍の男がすれ違う。
あとは頼んだ!
VIVA LIFE!

おわり

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