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頭の中に何匹もいる話

頭の中に翼竜が住みついたなんて誰に相談をしたらいいんだろう。
この忙しいときに何でこんなことに。
何匹もいる。
そんなはずないのに。
頭の中に生き物が住めるわけがないし。
これは変だ。
俺は普通だ。
ミュージシャンだけどドラッグもやってない。
できるだけわけのわからないことが起きないように生きてきた。
翼竜のことなんて今まで真剣に考えたことが無いし意識もしたことがない。
でもいる。
奴らは確実に頭の中にいる。
ドバドバ飛び回ってキイキイ鳴いて考えるのを邪魔する。
思考をインプットするところが奴らの黒い影に覆われて何も始まらない。
「とりあえずどうしよう」という初めの考えさえまとめさしてくれない。
どうしようもない。
風呂に入りたいけど風呂まで行く考えがまとまらないから風呂にも入れない。
翼竜が一匹バサっと飛んで心のカメラの前に着地してアップになった。
そして飛び立った。
どうもおかしい。
俺は俺の頭の中をよく見渡した。
ここはどうも、いや、しかし、でも。
どうもだいぶ昔からここは巣だったのじゃないか。
ハッとして思った。
そもそも俺の頭の中が俺の頭の中だというのが間違いで俺の頭の中がもともとジュラ紀で翼竜の巣だったとしたら。
頭の中だから頭の中だなんて思い込みで頭の中は古くから翼竜の巣で俺はそこでモノを考えてたのじゃないか。
翼竜はもともといたけど見ようともしてなかったから見えてなかった。
翼竜はむかしからいた。
俺の生まれるもっと前から。
そうだ。
逆に言うと翼竜は
「なんでこんなところでモノ考えてるの?」って思ってるはず。
なんてこった。
奴らに申し訳ない。
そんなわけで俺は足でモノを考えることにした。
ああ、考えにくい。 

おわり

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