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孫にワクチンを接種させるなと姑の圧力が

著者:ケイヒロ、ハラオカヒサ

接種数1.95億回時代のワクチン忌避

新型コロナ肺炎ワクチンの接種をめぐって本年の10月以降大きな変化があった。

反ワクチンなどカルト的な集団からの離脱方法を伝える記事を書いたことがきっかけになって、筆者のもとに数多くの相談が寄せられた。10月以降、家族内のトラブルに悩む人から届くメールが増え、そのなかでも姑(義理の母)による干渉が群を抜いて多かった。

こうした変化は接種対象年齢がさがったからだろうし、姑の干渉が家族内トラブルとして古典的でありふれていることとも関係しているだろう。

だがそうであったとしても当事者にとってのつらさが救われるわけでなく、子供の健康と周囲への影響を考えると悩みは尽きない。

姑だけでなく、舅(義理の父)と姑、姑と夫の兄弟姉妹が反ワクチンに染まっているなど親族内に包囲網がつくられている例があった。そんなものは無視してしまえと片付けられるならよいが、親族間のトラブルは解決どころかやり過ごすのさえ困難だ。

では筆者が扱った事例を紹介しようと思う。10月以前から続いていた例だ。


逃げ場を失った家族

地方在住の女性から姑が反マスク、反ワクチンを押し付けてきて最近は義理の姉夫婦まで加わり疲れ果てたとメールが届いた。

彼女は中学生の子を持つ母親で、義理の父母の家とさほど離れていない地区で暮らしている。徒歩圏なので姑がしょっちゅうやってくるだけでなく電話やLINEでマスクをするな、ワクチンを打つなとうるさい。義理の姉夫婦がやや離れた場所で暮らしているのが不幸中の幸いだが、それでも押しかけてくるだけでなく反ワクチンのビラを家々に投函しているとあって頭が痛い。

その地方で中学生への接種がはじまる以前でこのありさまだった。

「はいはいわかりました。お義母かあさん、そろそろ帰ってください」と言えたり、ドアを開けずに済むなら話は簡単だった。そこまで拒絶していないのに、義母に対して態度が失礼すぎると義理の姉夫婦に詰め寄られる。さらに子供の下校時刻に通学路で待ち伏せされるとあっては追い詰めれて身動きが取れない気がした。

また反マスク、反ワクチンの主張だけでなくワクチンを接種せずマスクもしない人たちによって新型コロナ肺炎に感染させられるのではないかと恐怖も感じる。

筆者は、夫との協力関係を大切にして、電話やLINEを可能な限り無視するよう伝えた。こうしても家にやってきてドアを開けろと騒ぐだろうから、どこまで強硬に対応できるか彼女とやりとりを繰り返した。

警察は民事不介入の原則がある。さらに親族間のトラブルとなると動きが悪い。110番通報で警察が出動した結果、姑と義理の姉夫婦との関係がいま以上にこじれるだけでなく更に攻撃的になる可能性もある。

「縁を切るほかないともう考えています」

彼女は新型コロナ肺炎ワクチンに限らずHPVワクチン接種など将来にわたる問題が山積みだと考えていた。その後、子供に届いた接種券が郵便受けから姑あるいは義理の姉夫婦によって盗まれていたのが発覚して、この頃から夫が変調をきたしはじたのだった。

接種券を盗まれてからというもの、彼女は毅然とした態度で姑や義理の姉夫婦を無視したり拒絶するようになったが、夫は関係の悪化に耐えられなくなっていった。夫もまたマスクやワクチン接種の重要性がわかっているため板挟みの苦痛を感じ、息子として弟として罪の意識に悩んでいる様子だった。

夫は彼女に何も言わず家を出てしまう。ケイヒロが関東にあるビジネスホテルで面会すると彼はため息ばかりをついていた。


潜在的な問題を拡大したコロナ禍

紹介した事例は極端に思われるかもしれないが、親族からの押し付けだけを見ればとくに珍しいものではない。

これらはコロナ禍によって発生したトラブルというよりも潜在的な問題が噴出しただけで、パンデミックがなければ遅かれ早かれ別の問題で頭を悩ますことになっていただろうと思われる。

コロナ禍は問題を拡大させただけだ。そして、ひとたび拡大した問題は元の大きさに戻せない。

舅や姑などが関係しない場合も同じで、あの人がおかしくなった、自分が反ワクに陥ったというケースもパンデミックがなければ別の厄介ごとに見舞われていただろうと考えたほうがよい。

それくらい日常は微妙なバランスのうえに成り立っている。

おかしな考えに取り憑かれた人と向き合わざるを得ないとき、あるいは生活をともにせざるを得ないとき、その人とあなたの意向がどのようなものであっても「これは遅かれ早かれ直面していた問題で、それまでの状態に戻ることはない」と思ったほうがよい。戻れるなら奇跡だ。

解決策は、こうした前提のうえに人それぞれのかたちで存在している。


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