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神真都Qは信者にとって会いに行けるアイドルなのかもしれない

神真都Qと従来型陰謀論との決定的な違い。アイドルとしてのイチベイ。活動に参加することで完成する、陰謀論のエンターテインメント化。前例なき陰謀論の構造について。

著者:加藤文(ケイヒロ)

従来型の陰謀論とあきらかに違う神真都ヤマト

筆者は1週間前に以下の論考で神真都Q(ヤマトキュー)とは何か、その危険性はどのような性質のものか説明した。


上掲の記事では、神真都ヤマトQを知るための第一歩を複雑にしないよう、いくつか説明を省いている。そのひとつが、従来型の陰謀論と決定的に違う点についてだ。

従来型の陰謀論は匿名で姿を現さない提唱者が広めるものだが、神真都Qは提唱者が姿を現して名乗りを挙げている。神真都ヤマトQが「宗教」と呼ばれるのも、提唱者が教祖然と姿を見せ活動の前面に立っているからだ。

一般の陰謀論は提唱者が匿名であることから神秘性と説得力を生じさせ、匿名のまま姿を表さないのは責任逃れのためにも重要になる。

Qアノン陰謀論では、最近になってネット掲示板運営者のジム・ワトキンスとロン・ワトキンス親子が提唱者として突き止められそうになったが、彼らは曖昧な発言で逃げ回っている。

Qアノン陰謀論が掲示板からはじまってSNSに伝播したのは新しかったかもしれないが、それ以外は古典的な陰謀論の手口を踏襲している。ジム親子がQか、親子がQを乗っ取ったか、どちらであっても神秘性と説得力を維持し、責任を逃れようとするため名乗りをあげられないのだ。

いっぽう神真都ヤマトQは元俳優の岡崎イチベイこと岡崎礼の説得力によって信者を獲得している。『組織と人 【神真都Q】の暴走を幹部さえ止められなくなる日』で説明した組織の暴走は、社会への責任だけでなく構成員への責任からも逃れられない実名主義ゆえの問題と言えるだろう。


神真都ヤマトQはイチベイ・ファンクラブではないのか

神真都ヤマトQが実名主義を取る理由は、
1.岡崎イチベイのナルシズム。
2.岡崎イチベイを信奉する集団が神真都Qへ発展したため。
3.神真都Qの本質がタレントをマネージメントする手法にあるため。
以上3つだろう。

以下は、神真都ヤマトQが創設される前の、岡崎イチベイこと岡崎礼が登場する動画だ。


最後の動画は、まさにファン交流会だ。

反ワクチン陰謀論を語っていた岡崎イチベイのTwitterアカウントが凍結され、神真都ヤマトQの前身となる集団が形成される。この前身集団が神真都ヤマトQに衣替えする際、デモ参加者は個人情報を提出するよう求められた。

さらに団体の構成員になる際にも個人情報の提出が求められている。

個人情報収集は参加者の囲い込みや個人情報売買のためと言われているが、賛同者の篩い分けが行われたのは間違いない。

反ワクチン陰謀論を語る岡崎イチベイのファンクラブのごとき集団から、覚悟を持った先鋭的な者だけが神真都ヤマトQに残ったのだ。

構成員側がファンクラブの会員のように振る舞っているだけでなく、神真都ヤマトQそのものがタレントをマネージメントする手法の上に成り立っている。まず独自で独特なネーミングを決めてロゴマークを制定している。キャラ設定ありきだったのだ。また入会手続きを経なくてはさまざまな活動に参加できないシステムをつくった。

まるでアイドルをデビューさせるかのようなお膳立てであり、これらは差別化、集客、組織化、管理、集金に好都合だった。

実名主義とともに、中央集権で地方分団を束ねる組織をつくりあげた陰謀論集団は異例中の異例だ。前述したように陰謀論の多くは匿名の何者かによってはじめられ、信じた者が共感しあうことはあっても、ここまで系統だった組織をつくる例はなかった。

Qアノンが議事堂を占拠したときも、明確な命令系統や指揮系統をもつ組織だった行動ではなかったのだ。

こうして神真都ヤマトQは、新たな層を開拓して構成員を集め現在に至っている。


アイドルに会いに行ける神真都ヤマト

神真都ヤマトQの構成員たちと接触した男性は、岡崎イチベイの持て囃されかたにアイドルへの熱狂と同質のものがあることと、イチベイが公開する最新ポートレイトを構成員たちが心待ちしている様子を証言している。

神真都ヤマトQを構成する人々のボリュームゾーンは40代から50代の層で、ついで高齢者が多く地方ほど年齢層が高くなる印象だ。

ここで思い出すのは、AKB48が創設された2005年以降、会いに行けるアイドルが続々と誕生し、いまやファンの年齢層が40代から50代程度まであがっていることだ。

また『冬のソナタ』で火がついた第1次韓流ブームが2003年からで、ファン層は現在50代から60代といったところだろう。ロケ地やゆかりの地を訪ねる聖地巡礼に積極的で、タレントの到着を空港で人垣をつくって待っていた人々だ。

これらのファン層すべてが神真都ヤマトQの構成員ではない。また、いつの時代もファンにとってアイドルに会いたいのは変わらぬ心理だ。しかし若年層がバーチャルなVtuberに入れ込んで投げ銭する意識と、前述の層がアイドルとの出会いに執着する意識には大きな隔たりがある。

これらが神真都ヤマトQの年齢構成を決定づけていると断定するには材料不足だが、提唱者で教祖の岡崎イチベイがアイドルで、そのアイドルに会いに行けるのが神真都ヤマトQとしてまちがいなさそうだ。

神真都ヤマトQは反ワクチン陰謀論集団であるだけでなく、活動に参加することで完成するエンターテインメントとして機能しているのかもしれない。


エンターテインメント型陰謀論への危惧

神真都ヤマトQの危険性については冒頭に掲載した別記事に詳しく書いた。同記事では、オウム真理教の例も挙げた。そのうえで神真都ヤマトQの特性として、「会いに行けるアイドル化した教祖」と「活動に参加することで完成する、陰謀論のエンターテインメント化」がある。

岡崎イチベイと幹部にとって陰謀論はキャラ設定と舞台の世界観、デモや実力行使はアイドルが舞台に立つようなもので、近況報告やポートレイト写真は宣伝材料をつくって配る感覚だろう。もちろん本来の目的は別のところにある。

構成員は神真都ヤマトQを讃えると同時に、自ら参加して神真都ヤマトQを完成させようとする。テレビやライブでアイドルを楽しむだけでなく、握手券つきCDを買って握手会に参加することで、会いに行けるアイドルの世界観を完成させるようなものだ。

新興宗教の教祖がアイドル化するのは不思議ではないが、芸能界で使われる手法を陰謀論で利用するのは神真都Qがはじめてではないだろうか。この手法を採用した神真都ヤマトQの真の幹部が岡崎イチベイなのか、それとも彼は傀儡にすぎないのかわからないが、新機軸はいまところ成功しているかに見える。

だが、この先は誰も経験していない。注意深く見守り、危険な領域に差し掛かったなら声を上げて制して、反省点を将来へ生かさなければならないだろう。神真都ヤマトQは実力行使で世界を変えようとする集団なのだ。

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以下の記事で反ワクチンと陰謀論の構造をあきらかにした。(筆者執筆)


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