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なぜ物理学は数学を適当に扱うのか

こんにちは.はじめましての人ははじめまして.mosse_sanです.

この記事を書いている時期は夏になります.クーラーのかかった部屋にもセミの音が暑さを伝えてくる時期でもあります.
日本のどこもかしこも35℃以上になってきていて,場合によっては40℃以上.そろそろ気合で乗り切るなんて言ってられなくなります.

さて,今回は「どうして物理学は数学を適当に扱うのか」についての持論をまとめていきたいと思います.
数学屋さんが物理屋さんにキレるというのはある種の理系ネタなのですが,これにはちゃんとした理由があるのではないか,というお話です.

よくある言い争いの概要

理系ではよくある,物理屋さんが数学を適当に扱う部分に数学屋さんが怒るという話.
(半分ネタではありますが,中には本気で怒っている人もいるでしょう)

例えば,本来ならちゃんと確かめなきゃいけないことをすっ飛ばしてしまったり,勝手に数式の形を変えてしまったり,入れ替えてはいけないものを入れ替えたり...…

数学的にやってはいけないことをやってしまうことがある物理学の世界.それが数学屋さんの逆鱗に触れてしまうようです.

ではなぜこのようなことになっているのでしょうか.

数学と物理学,そもそもの目的

数学にも物理学にも,それぞれ何故できたか,何を求めたいかという目的があります.

数学の目的:数の性質について知ること

数学は世の中の「数」と言われるものを研究をする学問になります.

数にはどのような規則性があるのか,数という概念を拡張したらどうなるのか,面積を正確に測るには,数を集めたものの性質は,などなど数えたらキリがありませんが,とにかく「数」を探求していく学問になります.

また「数」を扱うための論理や,「数」とは何かという哲学的なものも扱うこともあります.

物理学の目的:世界の未来を予測すること

物理学は,端的に言えば「未来予知」をするのを目的にしています.
世の中の法則性を見つけ,できるだけ少ない情報で未来を言い当てたいのが物理学です.そのために機器で測定を行っていきます.

記述のための言葉として,我々が日常で扱う言語と数学を用います.

物理学からすると,数学は細すぎる

「数」にプライドを持つ数学は,ズレがあったり曖昧であることを嫌います.自分たちが愛する数をあまりないがしろに扱ってほしくはないのです.

ただ,物理学にとって,数が目的なのではなく,その先の「そこから世界の何が分かるか」が重要です.あくまで数,数式,定理などは「道具」であり,本当に必要なものではないのです.

物理学がしたいことは,世界を「正確に」記述することではなく,未来を予知することです.
なので,数学の人が「いや,これは0.02%ズレがある」なんて言っても「いや,大体あってるからいいじゃん」となるのが物理学です.

「過度に逸脱しないこと」が大事

数学は「厳密性」が大切になっていきます.数の法則には目立った例外があってはいけないのです.

ただ,物理学において厳密であることはあまり意味がありません.むしろ大切なのは「法則が言葉や数式で書くことができる」,「大体その通りになる」ということです.ぼくはこれを整合性と呼んでいます.

物理学には考えるものの「大きさ」によって分野が分かれていたりします.
たとえば,僕たちの生きている世界ぐらいの大きさでは「力学」と呼ばれる分野が強い力を発揮しますが,もっと小さくなるとそれでは記述できなくなり「量子力学」が生まれます.私たちの大きさよりもっと大きくなると,今度は宇宙規模の話になり,重力が無視できなくなってくるため,今度は「宇宙物理学」や「一般相対性理論」などになります.

それぞれがその考える大きさで誤差を無視できるとき,それぞれがその大きさの世界をある程度ちゃんと記述することができます.なので,何かに統一されることはなく,それぞれが分野として機能しています.
そこでわずかな例外を見ようとして厳密性を重視してしまうと,それこそ煩雑になってしまい,物理が求めている世界の本質を見失ってしまうことさえあります.

「近似」こそ物理学である

先ほど「誤差」という話が出てきました.誤差をちゃんと書くと「無視できるほどの小さな差」ということになります.ここに関連することなのですが,実は物理学は限りなく正確な測定は決してできないと言われています.

というのも,何かを測ろうとするときに,自分たちの目や装置を使うことになります.
ある程度はちゃんと測定できるかと思いますが,目でも装置でもどう頑張っても細かすぎてあってるかどうかわからない部分の値が存在します.そういうときはわからない値をわかる範囲で四捨五入・切り上げ・切り捨てを行います.

このようにして,現象が起こるときだけでなく,測定をすることによっても「誤差」がどうしても生まれてしまいます.なので,小さすぎる値はそもそも考えずに大枠で捉えられれば,もうそこが限界であり,しかし未来を知るにはそれで十分なのです.

なので,形がそっくりな関数や,大体同じような値に「近似」してしまうことでさらなる考察が進めば,それは全く構わないことになります.「近似」こそ,物理学の本質であると言えます.
大枠をとらえることこそが物理学の要なのです.


ここで,僕が見つけた面白いサイトを紹介します.東京大学の物理学の先生なんですが,大きい声で「厳密性が嫌いだ」と言っています.ぜひ参考にしてみてください.



いかがでしたでしょうか.学部生の中には「数学を厳密に扱いながら物理学をしたい」といって大学にいる人もいます(僕も言ってしまえばそのクチでした).
しかし,物理の本質はそこではないということに気がついたとき,物理学に失望するわけではなく,それにより新たな世界が開けたような感じがします.

「物理学の本質は近似である」ということをぜひとも覚えていただけると幸いです.


以下は物理学を始めるうえでおすすめの本です.物理学の輪郭が見えてくると思います.

以下のもう一冊は「本格的に物理学を始めたい」という人向けの一冊です.まずはここからという本です.

それではご覧いただき,ありがとうございました.

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