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HSP気質×マーケティング思考

私は、マーケティングを行う部署に居るHSP気質の人間だ。

マーケティングへの理解が深まってきたのは正直ここ2~3年のだが、HSP気質の人はマーケティング思考を得ると生きやすさが増すのでは?と思うようになったので、今回はそれを説明しようと思う。

HSPの人が生きづらさを感じる場面

感受性の高いHSPの人は、日々たくさんの刺激を受けてしまうし、考えにふけることも多い。生きているだけで、内外から溢れ出る高密度な情報の海で溺れてしまいそうになる。

そうやって自分が持っている情報量が多くなるほど、何か行動を決定しようとする時に、たくさんの可能性や危険性に気が付いてしまうのだ。

「この場合は次にどうしよう?」「もしかしたらこんな危険性もあるのでは?」「こう考えると実はこちらの方が良いのでは?」「こうするなら手順はどうなるのだろう?」「こちらを選ぶとあそこにも影響が出るのでは?」

大事でも小事でも判断をくだすまでに他の道やそれぞれの懸念点にまで想像が一気に及ぶ。そして疲れる。

「いろんなことが気になって小さなことも決められないし、決めたとしても時間がかかってすっかり疲れてしまう」――そんな生きづらさを感じる場面は、HSPの人に特に多いのではないだろうか。

私自身そんなことが無数にあって、決定に至れないこともよくあった。考えすぎて疲れて放棄してしまうのだ。たくさんの情報に気が付いてしまう中で、何を基準に決定すればいいのか、どの情報にフォーカスすればいいのかわからず、途方に暮れてしまっていた。

自分で決定できず、決断の早い他人の決定に従ったり、機会を逃してしまったり。決断というのはエネルギーを使う行動だから、自分で決断しないことは楽ではあるけど、自己肯定感は下がる一方だ。

マーケティング思考に必要な思考

たくさんの情報を取得してしまう中で、どの情報を優先し、何を基準に決定していけば良いのか。

この意思決定を大いに助けるのが、マーケティング思考だと思う。

正確に言えば、マーケティング思考に必要な「戦略的思考」を身につけることだ。

マーケティングとは端的に言えば「売れるしくみをつくること」。顧客の思考や行動を徹底的に理解し、魅力的な商品開発や的確なプロモーション策を実行し、営業せずとも自ずから売れるようにすることだ。

そのためには「誰に」「どのような商品を」「どのようにして売って」「何を達成するか」を考え、組み立てていかねばならない。それを組み立てる道筋には、無数の取捨選択と意思決定が発生する。

今回はマーケティングを論じる記事ではないので、商品云々とか売り方とかいったことは一旦横に置いておこう。何せその「売れるしくみ」を組み立てる道筋に、戦略的思考が必要になるのだ。

戦略的に思考する手順とは?

思考の順番としては、ざっくりと以下のとおりだ。

1.目的を考える
2.戦略を考える
3.戦術を考える

イメージしやすいように、今回は身近な「部屋の掃除」で解説してみようと思う。(私の部屋は物が多くてすぐ汚くなるので…)

1.目的を考える

まずは目的を考える。今決めようとしていることは「何のため」のものか、大きく向かう方向を決めてしまうのだ。

部屋の掃除をする目的は何か。直近で私が目的としたのは「在宅ワーク可能な部屋にするため」だった。急に在宅ワークが求められた時点で、デスクはあるものの物置状態で使えなかったため、「快適な在宅ワーク空間をつくる」よりも「在宅ワーク可能な部屋」を目指すことにした。

2.戦略を考える

次に目的達成のために何を選び、何を選ばないか決める。

この汚い部屋を「在宅ワーク可能な部屋にする」ために、どこに手を付けるべきか。部屋を見渡して私が選んだ戦略は、「デスクまわりを片付ける」であった。むろんそれ以外の場所も片付いてはいなかったが、目的達成のために「デスクまわり」へ自分という資源を集中投下したのである笑。

3.戦術を考える

最後に、戦略を実行するための具体的行動を考える。

「デスクまわりを片付ける」という戦略のために私がとった戦術は、「デスク上の8割を空けて会社のパソコンを操作するスペースを確保する」ことと「座席に座って無理な姿勢にならない程度に足元の荷物を移動させる」ことであった。(部屋の汚さが偲ばれる…)

戦略的に考えれば、シンプルに考えられる

掃除の例を挙げたが、「なんだ、それだけ?」と思われるかもしれない。

しかし「目的」を最初に設定することがとにかく強いのだ。部屋を片付けていて「これも移動させるべきかな?」と迷ったときに、「在宅ワーク可能な部屋にするために必要な移動だろうか?」と目的を思い出すのである。目的を設定しておけば、目的を基準として思考や行動を振り分けられるようになるのだ。

さらに戦略として「デスクまわりを片付ける」に集中したため、それ以外の所には手を出さず、デスクまわりに関わるところだけ意識を向ければ良かった。結果として、平日でも比較的短時間で在宅ワークへの備えを完了することができた。

これが目的や戦略を立てずに「とりあえず片付けよう」と部屋の掃除に手を付けてしまうと、「ついでに本棚の漫画も整理しよう」とか「在宅ワーク中に飲むお茶を揃えよう」とか漫然と手を広げてしまいがちだ。あれもこれも気になって十分に手をかけられないし、いつまでも掃除が終わらなくなる。

たくさんの情報を取得してしまうHSPの人が、どの情報を優先し、何を基準に決定していけば疲れを減らして生きていけるのか。

それにはまず目的を明確にすることだ。これが行動をシンプルにする。目的が行動を選別する基準になる。

そうすれば、必要そうに感じる行動も目に入ってしまった改善点も、「目的から外れる」という理由で一旦横に置いておけるのだ。

このあたりの考え方をもっと解りやすい文章で知りたい方は、是非この本を読んで欲しい。

マーケティングを知らない人に向けて書かれたマーケティングの入門書なので、とても読みやすく解りやすいです。新卒の自分に読ませたい本No.1。

ちなみに今回の例は自分の部屋という自己完結的な話だったが、マーケティング思考になると戦略的思考に加えて「顧客視点」が大きなポイントとなる。これも「顧客を軸に考える」という基準を持つことになるので、これもまた仕事上の思考と行動をシンプルにする、とても大事な思考だ。

今回の記事では「生きやすくなる」ことに絞って戦略的思考にフューチャーしたが、仕事で成果を出すという視点ではマーケティング思考も不可欠だと思う。

HSP、だからこそ戦略的に生きられる(かも)

戦略的思考は、ビジネスにおいて身につけておきたい、万人にとって役立つ思考方法だと思う。

しかし実は「HSPの気質が活きる思考」でもあるのではないだろうか。

目的を決め、戦略を決める際には、複数ある選択肢の中から最適なものを選択することになる。この時、そもそも選択肢が複数あることに気付けなければ、選択することもできない。

選択肢に気付くには、アンテナの感度を上げることと、マイナスの情報から目を逸らさないことが必要だ。

得てして人は都合の悪い情報から無意識に目をそらしてしまうものだが、HSPは意識せずとも常にたくさんの情報に気付くことができる。幸いにして、アンテナの感度は抜群だ。良い情報や必要な情報はもちろん、懸念点や不安材料もキャッチできる。

不安材料もきっちり含めて検討された戦略は強固だ。

だからこそ、ビジネスでも必要になるこの思考は、HSPの特性を活かせるものでもあると思うのだ。この敏感さを活かしつつ生きやすくなるのなら、これほど嬉しいことはない。

とはいえ一朝一夕で身に着くものでもないので、まずは「目的は何か」を繰り返し意識し、思考のクセをつけるところから始めてみてはどうだろうか。

選んで入ったわけでない高密度な情報の海でも、むしろその中に居ることを活かしながら、上手く波を乗りこなせるような生き方を目指していきたいと私は思う。


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