2023 初釣行@敦賀半島

今シーズンの釣りが始まった。

いや、凄腕アングラーたちの間ではとっくに始まっていたのかもしれない。
けれど、私は

「海水の温度上昇は2ヶ月遅れ。今はまだ、海の中は真冬。魚の活性も悪い」

というネットの記事を信じて、のんびりしていたのである。

しかし、数日前、敦賀の知人が潜って突いた魚の写真をSNSにアップしていたのを見た。

「え? ちょっと待って、もう潜れるの?! 海は、そんなにあったかいの?!」

慌てたのなんの。

釣りは、まだ先だと思っていたので、なんの準備もしていない。
そういえば、昨年の秋、リールの調子が悪くて、よく糸が絡んでいたのも、そのまま放置している。

ならば行かねばなるまい。
三水釣具店へ。

2023年初出撃ということで、私に釣りの手ほどきをしてくださった店長のいるお店に、リールを持って伺った。

店に着くと、ムシエサ、オモリ、ハリなどを選んでレジ横の台にのせ、さりげなくリールも並べる。

「あのー、これ、ここで買ったリールなんですけど」

「うん、覚えとるよ」

おおお! 覚えていてくださったのか!
それだけで、かなり嬉しい。

「最近、糸フケが多くて。なんで絡んじゃうんでしょう? 私の手入れが悪いんでしょうか?」

悪いも何も、手入れなどしたことがない。
やり方も知らない。
毎回、水洗いして、干して終わりだ。

「どれ? ああ、これはね、糸の巻きが足りないの。ギリギリまで糸を巻いてないと、繰り出す時にここの出っ張りに引っかかって、絡むんだよね」

師匠のお言葉は明快だ。
そして、そのままリールのハンドルを何度か回してみて

「音がおかしいね。シャリシャリ言ってる。中、錆びてるんじゃない?」

とドライバーを取り出して、分解を始めた。

「ええ? 毎回ちゃんと洗ってたのに、塩が残ってたんでしょうか?」

「いや、メーカーは、洗え、洗えというけれどね、こんな精密機械、内部構造がわからない素人が適当に洗っていいもんじゃないんだよねぇ」

話しながら、師匠は、すでに分解を終え、音の出る箇所を突き止めている。

「ほら、ここ。錆びてるでしょ。たまにでいいから、ここに油をさしてやって」

そうして、どんどん本体を組み上げていき、今度は、ハンドル部分も分解して、油をさして下さった。
細かい部品が、レジ横のテーブルに並んでいく。

「こんなに部品があるのに、よく順番間違えませんねえ」

と感嘆していると、

「こんなのまだ、簡単な方だよ。高いリールは本当に中身が複雑だから」

と言いながら、ハンドルも完成させてくださった。

ShimanoやDAIWAなど、釣具メーカーには、名だたる自転車メーカーが多い。
外から見ている分にはわからないけれど、分解してみると、ベアリングなど技術的に共通する部品も多いのだろう。

はじめてリールの中身を見せていただき、私は、生涯、リールの分解だけはしないと心に誓った。

お会計の際に、

「リールのメンテナンス代は?」

と聞いてみたのだが

「そんなの、誰からももらったことない」

とおっしゃる。
大手のチェーン店では、ありえないこのサービス。
だから師匠は、好きなのだ。
優しい。
私は、いつでもどこでも、人の情けにすがって生きている気がする。

さて、師匠にチューンナップしていただいたリールを携え、敦賀半島に向かう。

1箇所目、沓。
まるで釣れない。
ここでボウズなら、もう諦めた方がいいとすら思う、私の中のベストポイントなのに、アタリすらない。

2箇所目、敦賀原電の対岸。
海鳥が時々潜って、何か捕まえていたので、絶対魚がいる、と思ったのに、やはり釣れない。
根掛かりして、ハリとオモリをロスト。

ちなみに、発電所の付近は、冬でも温かい排水が海に流れ込むので、魚がよく釣れると、まことしやかに噂されているが、絶対嘘だと思う。
敦賀原電のそばでも、美浜原発の近くでも、私は、釣れたことがない。
魚さえいれば私にも釣れるはずなので、いないのだと思う。

3箇所目、白木の「テトラ101号室」。

ここで無理なら「海の中はまだ冬なのだ」と思うことにしようと、釣り糸を垂れると、今日は1匹だけかかった。
一安心。
今シーズンの初釣行が、ボウズで終わっては、幸先悪い。

堤防から降りてくると、2人のおじさまが、岸壁の近くに座って、なにやら黒いお魚の処理しているのが見えた。
クーラーボックスの中は、ものすごい大漁だ。
びっくりして

「ええー?! こんな時期に釣れる魚がいるんですか? すごい!」

と声をかけると、

「グレは、今が旬だよ。よく釣れてるよ」

とのことだった。
春先に産卵するため、冬から今頃までが、脂がのってうまいらしい。
内臓がとても臭いので、そのまま持って帰ると、奥様が嫌がるらしく、現地で下処理しているところだと言う。

「いやいや、こんな大きなお魚釣ってきてくれたら、それだけで、惚れ直しちゃうのに」

と言ったら、グレを2匹分けてくれた。
やはり、私は人の情けにすがって生きているなあ、と思う。

そんなわけで、本日の釣果は3匹ってことで、よろしいでしょうか。

いただいたグレは、お刺身で食べた。
コリッコリで、美味しかったが、内臓は本当に臭かった。
まだ爪の間から、グレのにおいがする。
しあわせのにおいだ。

今年も、釣りシーズンが始まったのだ。

**連続投稿424日目***

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