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テトラ101号室の住人

釣りを始めてわかったことが、一つだけある。

ゲーム性を求めるなら、いろんなところに出かけて釣る方が楽しいが、確実に夕飯のおかずを仕入れるつもりで行くなら、いつも決まった所に行く方がいい。通い続けるうちに、ポイントがわかるからだ。

私がよく行くのは、ちょい投げ釣りのキス、サビキ釣りのアジ、穴釣りのメバル、カサゴなどの初心者釣行。
中でも、この「穴釣り」が、魚さえいれば誰でも釣れるのでとにかく楽しい。

釣りを始めた昨秋に、大学時代の友達から
「穴釣りが面白いよ。テトラの隙間とかにブラクリでサバの切り身を付けて落とすだけ。いれば釣れるよ」
と教えてもらった。
持つべきものは、釣り好きな友人だ。

それから何度か試してみて、コツを掴んだ。

YouTubeには、穴釣りで「お魚マンション」を探り当てた人たちがウハウハしている爆釣動画がよくアップされているけれど、私にもマンションほどではないにせよ、よく釣れる穴が一つある。

その穴は、テトラと堤防の隙間の本当に小さな穴だ。よく見ないと見落としそうな隙間である。
巨大な堤防ブロックの1つ目、複数ある欠けた箇所のうちの1番目の真ん前にあるので、忘れないように「テトラ101号室」と呼んでいる。

このテトラ101号室では、不思議なことに、いつ行っても必ず根魚が2匹釣れる。メバルだったり、カサゴだったりの違いはあるが、いつも同種の魚が2匹釣れるのだ。

2匹以上は釣れないので「お魚マンション」とは呼べないけれど、入居希望者がいつも待ってるということだと思うので、なかなか良い物件なのは間違いない。

上から見ていると、他の穴との違いは全然わからないのだが、日当たり、エサの落ちて来やすさ、沖へのアクセスの良さ、近所に迷惑な住人がいない、など、魚にとっての良い条件が揃っているのだろう。そしてきっと、入居条件に「二人でルームシェアしてもらうこと」が含まれているのに違いない。

だーれも釣れていなさそうな日でも、テトラ101号室に直行すれば、あっという間に2匹釣れる。そして、その2匹だけをクーラーボックスにしまい、さっさと撤収してゆく私を、
「何者だ、こいつ?」
と見ているガチな釣り人たちの目が楽しい。
へっへっへと心の中でにやつきながら、名人感が出るように、他の穴も一応覗いては
「ここはダメだな」
と首を振ってみたりする。アホだ。

今日も、カサゴが2匹釣れた。小さいので夕飯にはこれだけでは間に合わないだろう。スーパーで鶏肉も買って、一緒に唐揚げにしようと思う。

今日も楽しい釣りだった。
さあ帰ろう。

**連続投稿109日目**

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