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『室町繚乱 義満と世阿弥と吉野の姫君』阿部暁子

内容(「BOOK」データベースより)
京と吉野に二人の帝が存在した、南北朝の時代。南朝の帝の妹宮・透子は、北朝に寝返った武士・楠木正儀を連れ戻すべく、乳母と二人きり、吉野から京へと乗り込む。京についたとたん人買いに攫われてしまった二人を救ってくれたのは、猿楽師の美少年・世阿弥と、透子たちの宿敵である足利義満で…。世間知らずの姫君が混迷する時代の中で見たものは。瑞々しい筆致で描く書き下ろし時代小説。

初版が2018年ですか~!!3年前。

阿部暁子先生の書かれる歴史ものは、コバルトの著作から大好きでして。この本の発売日もわくわくしていた記憶があります。

私は日本史が好きでして。
ただ、平安時代、特に後朱雀天皇あたりをうろうろしているのですが。
南北朝といえば、北朝の三条厳子に興味を持っているので、なんとなく北朝を調べていました。

ですが、この本を読み終わったとき。
心のすべてを南朝、特に、後村上天皇と楠木正儀に持っていかれました。
(タイトルの三人もすてきなんですけど。吉野の姫君=透子の成長物語なんですけど)

北朝との和平を願いながらも、命が短く、果たせなかった後村上天皇。
彼の死後、南朝を裏切り、北朝に寝返った正儀。
髪を切り、男子のふりをして、吉野から都に自分を訪ねてきた椿の宮(透子)に「戻って」「裏切者」と懇願されたりなじられても、北朝にいる彼の真意は、義満から透子にあかされます。

「正儀は俺の臣となったが、結局のところ、心はいまだ後村上院に仕えているのだ」

南朝で南北朝統一をいくらとなえても聞き届けてもらえない。それゆえ、北朝に寝返ったのだと。
主君を亡くしても忠義を果たそうとする正儀に泣けます。

透子も、彼の真意を知り。のちの世阿弥との交流。
そして、義満のもとで北朝の内情を知り。
そして、伯父宮の気持ちを知り。成長します。

兄天皇(長慶天皇)に、すべてを話し、ちっぽけな自分でもなにかできると信じて進もう、と思うのでした。

最後の、透子とのちの世阿弥(鬼夜叉)の最後のセリフも好きで。

「わたしね、本当の名は、透子というの」
 鬼夜叉は、しばらく黙ってまばたきしていた。
「……高貴な女人は、本当の名を簡単に教えてはいけないんじゃないの?」
「そうよ」
 だからこそ教えたのだが、鬼夜叉はもしかして、鈍いのだろうか? (略)
「いつか父を超える名人になった時に名乗る名前、実は考えてあるんだ」
 そして鬼夜叉は、透子の手のひらに指で字を書きはじめた。
『世阿弥』

名前を交換するって、素敵なラストだなぁって!!

この本を読んでから、すっかり後村上天皇にはまってしまい、御陵にまで行ってしまいました。それは別記事にします。

とにかく大好きなこの本。
宝塚の『桜嵐記』のあとを描く物語なので、そちらに興味がある方にもこっそりおすすめです。
 

twitterでもつぶやいた。↑

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家にもあるんだけど、また買っちゃったんですよね。いい本は何冊あってもいいですよね~。

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