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2021.05.30 ディープな京都の姿を案内したい

こないだ大学の課題で「京都という街を象徴する1枚を撮り、文章を書く」というのが出た。

こっちに引っ越してきて2年。京都ってどこか不思議な街だなって思うことがある。

俺が撮ったのは、上賀茂神社 ※1 の入り口辺りの風景。

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ここに気になることがある。世界遺産の入り口近くに、堂々とガソリンスタンドが営業してるのだ。

よくよく考えるとおかしくない? 世界遺産だぜ? 地元の世界遺産、五箇山合掌造り集落とかは、世俗と分断されてるイメージがある。だから神社のすぐ近くにガソリンスタンドが営業してるって、不思議な感じがする。

京都の歴史について学ぶ授業を取ってたことがある。その講義内容を思い出した。

江戸時代から明治時代にかけて本格的に東京遷都が行われ、有力な皇族・公家・商人が東京に大移動して、その影響で京都の人口は3割ぐらい減ってしまったらしい。行政が崩壊しそうだと思った府知事とかが、西洋技術の吸収とか勧業にめちゃくちゃ力を入れたんだとか。

それじゃないか? 世界遺産のすぐ近くにガソリンスタンドがあるのって。

もともと文化財や史跡がいっぱいあるのに、勧業に力を入れて人口の確保に一生懸命になった。そのために、歴史と生活が密接になっている、ストレートに言うとゴチャゴチャしている街づくりになっているんだと思う。

よくこういうことがある。工場のすぐ近くに天皇の塚があったり、京都御所の西端の地下を電車が走ってたり、散歩してるといきなり紫式部の邸宅に出くわしたりするのも、そういう歴史があったんだと思う。

四条河原町 ※2 の交差点に、京都高島屋のビルがある。このビルは一角がへこんでて、そこに池善化粧品店という小さい建物がある。

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おそらく高島屋を建設する際に、池善ビルは立ち退きを拒否したのだろう。

京都の都市部・高層ビルが立ち並ぶエリアにはそういう建物がいくつかある。ビルとビルの間にちょこんとある小さい建物、マンションの一角を折り曲げてそこにある家。

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これもこれで歴史と勧業・人口の対立、水と油みたいな関係性があるんだと思う。立ち退き拒否なんてまさに対立の現れじゃん。

あと京都の不思議な街づくりというと路地裏かな。

こないだ四条河原町で細い路地裏に入った。歴史的な建物は立ち並んでるけど、どんな建物なのかというとイタリアンとかバーなのよね ※3。

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オシャレっちゃオシャレだけど、よくよく考えるとおかしくない? なんだか心と体がバラバラな感じがする。

別の路地裏は石畳が敷かれて風情があるのに、建物をよくよく見ると普通に風俗があんのよね ※4。

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あたかも平然とした顔して建ってるけど、お前風俗だからね?

あとおじいちゃんが風俗の入り口に立って、ギリギリ違法にならない程度の客引き ※5 をしてるのよ。景観をぶち壊しやがって。

そのぶち壊しっぷりも、またディープな京都の姿というか。

誰か友達を京都に呼んで案内する時は、こういったとこを案内したい。清水寺とか金閣寺とか祇園とかはもうガイドブックを見ればいいのよ。ネット検索で情報が全部出るから。全部ね。

京都在住の者として案内するのなら、どうせならガイドブックにもネットにも載ってない京都観光をしたいじゃない。ディープなことをしたいのよ。

ガソリンスタンドの横を通り、高島屋のへこみを見て、路地裏のイタリアンでパスタを食べて、風俗を遠巻きに眺める。そんな1日。

誰が理解してくれるのかは知らんけど。できれば2泊3日で来てほしいね。1日は普通の観光をする時間を確保してほしい。私の観光はあくまでも蛇足ですので…。


※1 「古都京都の文化財」の1つとして世界遺産に登録されてる。

※2 京都市でもかなりの都市部。商業施設やビルが立ち並ぶが、1つ裏に入れば歴史的な風景も見ることができる。

※3 柳小路通りという名前の路地裏。

※4 木屋町通りという名前の路地裏。森鷗外の小説『高瀬舟』の舞台となった高瀬川が流れてる。

画像検索をすると綺麗な風景が見られるが、実はさりげなくぽっちゃり風俗や熟女風俗も紛れてる。もうちょっと別のところで営業してほしかった。

※5 立ちふさがったり付きまとったりする客引きは違法だが、入り口でただ「いらっしゃいませー、どうですかー、遊んでいきませんかー」とつぶやく程度だったら違法じゃない。たぶん。


たぶん京都の行政サイドも、できれば世界遺産の近くにガソリンスタンドなんか置きたくなたかったんだと思う。景観を乱すことになるんだもん。

だけど京都に住んでくださってる方に快適な暮らしを提供するために、しょうがなく営業を許可してるんだと思う。

かつて人口が激減した過去を持つ土地だからね。人々が流出していくことの怖さは、行政が一番知ってるんだと思う。

もちろん「もともと文化財や史跡がいっぱいある街」という事情もあるんだと思う。そんじょそこらの都市に比べて、景観に気を遣って人口も確保して…というように、配慮すべきことが多いんだと思う。

景観でいうと「京都のコンビニは歴史的な景観を壊さないように、控えめで目立たない色をしている」という話は有名だろう。条例で厳しく決まってるらしい。

(あくまでもこの条例が適用されてるのは文化財が多く残る一部のエリアだけで、普通に人々が暮らしてる住宅街などのエリアでは普通の色合いをしているが。住宅しかないエリアでコンビニが控えめな色をしててもどうしようもないじゃん)

ただこれもよくよく考えれば「景観を壊したくないのなら、神社の近くにコンビニなんか建てなきゃいい話じゃん」と思わないだろうか。史跡だけで固めれば、景観も守られるはずなのに。

それでもコンビニを建てないといけない理由があるのだ。観光客に快適な観光をしてほしいからなのだ。

京都観光に来た際は、ぜひともこういう「行政の苦悩」を味わってほしいものだ。…本当に誰が理解してくれるのかは知らんけど。

ちなみに清水寺とか金閣寺とか祇園とかを観光する際は、ベタに着物をレンタルして人力車に乗ることをオススメする。1回私服姿で神社をめぐってみたことはあるのだが、イマイチ気持ちが乗らなかった。