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2022.12.06 滋賀旅・前編~マッドサイエンティスト名水~

自動車教習所を卒業し、時間にゆとりができたから急遽旅行に出た。日曜にギリギリで予約を取って、火曜にすぐ滋賀に向かった。滋賀の水処を巡る旅で、日本名水百選のスポット3つと、デイリーの木村さん ※1 が紹介していた水路の美しい地域に行く予定だ。

今日は名水百選の方をターゲットにした。まず醒ヶ井(さめがい)駅で降りて、居醒の清水(いさめのしみず)※2 を見に行った。さめがいという響きから、頭の中でスピッツの「醒めない」※3 を流しながら歩いていた。

歴史的な味のある通りだなぁと思っていたら、中山道の道だったようだ。そういや岐阜旅行でも中山道を歩いていたな。水が澄んでて川草がなびいているのがハッキリ見えた。

その居醒の清水だが、川の途中のある区間がそれだったらしく、いつの間にか通り過ぎていた。川だ、川だと思っていたらそこが清水だったらしい。

そもそも清水って何?「〇〇の清水」自体はもうすでに何か所か行ってるんだけど、思い返せば一口に清水と言っても水路やら湧き水やら、蛇口1本の所もあれば沢だってあった。「清水」自体は地理的特徴とかじゃなく「清い水」ってことなんかな。

伝承としては、毒蛇にやられた勇者がここで腫れ・痛みを引かせたみたいなことだった。名水の謂れにヘビが絡んでるとこ多くない?気のせい?

駅に戻ると電車が出た直後だったから、別方面にあるらしい別の湧き水を見に行った。ただ駅前の観光掲示板をうろ覚えで向かったため、結局見つけられずにタイムアップとなり引き返した。

次は近江長岡駅から泉神社湧水 ※4 へ。大型貨物自動車がビュンビュン行き交うくせに歩道が狭い道を延々と歩き、山の中へ入っていく。しかしここでトラブル発生。地図アプリや日本名水百選ホームページにある地図と、看板の矢印の方向が全然違うのだ。

どっちに進めばいいのか分からず、とりあえず地図アプリの方を信じた。しかし指し示す場所にあるのはただの民家。こっちじゃなかった、二択を外したなぁと思い、看板まで引き返して矢印の方向へ向かった。

ただそれでも見つからないのだ。袋小路に入って行き止まりになった。二択が両方ハズレって何だよ。ちゃんと検索し直したら、地図アプリとも看板とも違う明後日の方向にあるようだ。細い田舎道の隙間を縫って泉神社湧水に向かった。

そこにあったのは、岩をくっつけた円柱の側面の四方八方から、管が伸びて絶えず水が湧いているものだった。なんだか管まみれの人造人間のような、培養液に浮かんでいる脳みそのような、そういったマッドサイエンティストの発明品のようなおぞましさを感じた。管が伸びているのがよくない。

地域住民の生活用水になっているようで、次から次へと水を汲む人が来ていた。着いた時に老夫婦が1組いて、その周りでカメラをパシャパシャするのもなぁと思ったからしばらく待っていた。

しかしかなりの量を汲んでいたようでなかなか終わらなかった。5分くらい待ってばあちゃんがどいたところをササっと撮った。待ってた間に車が2台も来てたし、この一瞬を切れ目を狙わないと永遠に撮れなかったと思う。

今日最後の名水は堂来清水(どうらいしょうず)※5。前の2つはギリ徒歩圏内にあったが、ここは駅から本格的に遠い。バスのダイヤに合わせるのが面倒だったから、駅でシェアサイクルを借りて向かうことにした。山道だったんだけどね。

軽快にサイクリングしようと思ってたが、借りた瞬間に雨が降ってきた。天気予報では曇りのはずだったんだけどなぁ。まぁ通り雨だろうしすぐ止むだろ、天気予報では曇りだったんだし(頑固)と思って気にせず出発したが、すぐに全身びしょ濡れになった。

髪からメガネから太腿からリュックまで濡れていた。リュックにはスマホもモバイルバッテリーも入ってるから大変だ。

この時すでに13時くらいになっていてお腹もすいてたから、事前に地図で目をつけておいた道中のカフェに向かった。デカ盛りのカツカレーが美味そうだった。しっかりエネルギーをチャージして山道と戦おうと思っていた。

玄関に「営業中」の札が掲げられていたからワクワクしながら入ろうとしたが、入り口に鍵がかかっていては入れなかった。なんでだよ、やってないなら営業中の札をしまえ。小雨の中、空腹と絶望に襲われていた。

しょうがないから先へ進むとトンネルがあった。リュックからスマホを取り出して写真を撮ったが、その時にリュックの内ポケットからイコカが落ちていくのが見えた。

元の位置に戻しておこうと思ってリュックを探したのだが、全然見つからなかった。中身を自転車の前かごに全部あけて探していたのに、それでも見つからなかった。トンネルの中で駐輪して探してたから自動車にご迷惑をかけた。交通量はほぼ無かったが細いトンネルだったし怖かった。

結局、リュックの背中ポケットに入れてた、四つ折りのパンフレットの隙間にちょうどスポッと落ちていき、軽く探しただけでは見えなかったようだった。「さすがに無いだろ」と思いながらパンフレットを覗き込んでようやく分かった。こんなホールインワンあるかね?

トンネルを抜けてラストスパート、この辺りで再び雨がひどくなってきて、心身ともに疲れていた。かなり疲れている時に出る「ヒュー、ヒュー」という息切れをしていた。

水溜まりを自転車で駆け抜けて、ずぶ濡れになりながらようやく堂来清水に着いた。山道の傍らにある小さい池という感じで、疲れてたのもあるしあまり印象に残ってない。山道を自転車で走るという達成感が大きすぎて、水処の良さは入ってこなかった。伝承もそんなでもないし。

堂来清水の手前にバス停があったから自転車から降りて写真を撮ってた。そしたら横からおっちゃんの声が聞こえてきた。しかし急に言われたから何喋ってんのか聞き取れない。

おそらくその時バス停の向こうに虹がかかっていたから「虹撮るならもっと前出た方がいいぞ!」みたいなことを言われたのだと思う。分かんないけど。だからとりあえず愛想笑いだけして後にした。

自転車で山道を走ってて、疲れてイライラしてて「知らない人に用も無くいきなり話しかけるなんて失礼じゃない?」と思ってた。なれなれしくて人との距離感を間違えている。

確かに微かに虹が見える

※1 デイリーポータルZにて名水や文化財の記事を書いているライターさん。木村さんが巡った土地を後追いしてよく旅をしている。

※2 日本武尊が毒にやられた時に、この地の名水で高熱を癒したらしい。改めて公式ホームページを見返してみたのだが、蛇なんて単語は一言も出ていない。俺はこの時、一体何を見てたんだろうか。

※3

※4 居醒の清水の源流である湧き水。珍しく飲んでもいい名水。

※5 1100年くらい前にこの地で干ばつが起こった際、白龍という龍神に雨乞いをしたところ水が湧き出したと伝えられている。…雨乞いして湧き水?

冬の時季に湧く水は「寒の水」と呼ばれ、米を研ぐときなどに使われている。…なにもそんな冷たい水で米を研がなくてもいいじゃんか。


この度で巡った名水は3つとも比較的アクセスがいいところにあった。駅から徒歩や自転車を使い30分~1時間で辿り着けるんだから、徒歩圏内と言っていいだろう。

もちろんあくまでも「比較的」である。日本名水百選に認定されている割にはアクセスがよかったというだけで、観光スポットとしてはアクセスが悪い方になる。

そりゃ「名水」と呼ばれる水なのだから、都市部の駅チカにあるわけがない。基本的には山の中に湧き出すような水ばかり認定されている。だから車で行った方がいいのかもしれない。

しかし泉神社湧水までの細道を見てもらえば分かるように、山の中が故に自動車で行くのが難しいスポットだってある。口コミでも「車で来ないで感がすごかった」と書かれるほど、秘境に湧く名水だってある。

ホームページでアクセスを調べても「※駐車場はありません」とか「※自動車では通れないほどの細道の先にあります」という脚注が書かれていることもある。

次からは徒歩と自動車のいいとこどりである、原付で行った方がいいなと思った。その馬力で坂道もガンガンズンズングイグイ上昇だし、山道のような細い道だってスイスイ行ける。

実際に別の名水に原付で向かったこともあるのだが、山の中のくねくねした細道を奥へ奥へ進んでようやくたどり着ける位置にあった。駐車場もあったのだが、こんな細道を自動車で行くなんて危なっかしいだろうと思った。

堂来清水は特に印象に残らなかったなんて書いてあったけど、疲れてない状況で改めて見返してみたらいいスポットじゃんって思った。水は綺麗だし、落ち葉と苔のコントラストもいいし。