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2022.08.26 山陰旅・前編~空白の4時間40分、というか兵庫旅~

バイトのシフトを調整してもらって6日間の休みができた。実家に行こうかと思ったが、今年もまだ家族がコロナを心配しているってことでやんわりと断られ、代わりに青春18きっぷで旅行することにした。日本名水百選めぐりなら密も避けられるしいいんじゃないかなと思って。

今、鳥取の温泉宿で1泊している。ちょうどいいイスと机が無くて、変な高さで日記を書いている。低い机に日記を開き、部屋と部屋の間の段差に腰かけている。

スケジュールがキツキツのような気がして、最寄り駅の始発で出発した。北大路駅 ※1 5時24分発。逆算すると4時50分にはアパートを出ることになるから、4時半に目覚ましをかけた。

最近は日の出が遅くなって日の入りが早くなっている。秋が近付いている。真っ暗の中30分くらい歩いて駅に向かった。5時の始発のくせにそこそこ人がいた。

まずは兵庫の駅近の名水を2か所訪ねた。1つ目は宮水 ※2。水源は酒造会社の敷地内にあるらしく、その近くの碑に向かった。しかしその碑のエリアにもロープが張られていた。なにせ朝7時手前のことだから。

付近には何かしらの組合のおじいちゃんたちが休憩中なのかたむろしていて、この状況でロープを越えて入っていくわけにもいかず、遠巻きに写真を撮るだけで諦めた。そもそも水源そのものを見られないのならば、碑ごとき遠くから見ても近くで見ても変わらんやろ。

続いて布引渓流 ※3。新神戸駅すぐ近くの裏手の山の中にある。かなり急な階段をヒーコラ言いながら上がってく。ほぼ登山だった。名水スポットよりも上に上がるとなると「ここからは本格的な山登りの服装の準備をして登ってください」という注意書きだってあった。

朝8時で既に汗だくだった。滝を少し眺めてすぐ戻った。下りの方が膝が笑ってたし、足の指に負担がかかった。

途中、布引渓流と新神戸駅の中間くらいに数軒の民家とアパートがあったのが謎だった。新神戸駅徒歩1分、裏手に滝、ボロアパート。ここに住んでる人はどうやってこの物件を見つけて、どうしてここを選んだの? アクセス良さそうで悪くない? 山の中だし、そもそも新神戸駅って新幹線の駅だよ?

布引渓流近くの三ノ宮駅から姫路→佐用と電車を乗り継いだ。この佐用駅からがネックで、佐用ー智頭(ちず)間(兵庫県南部から鳥取へと、中国地方を縦断する区間)は、JRが特急しか通っていない。あとは智頭線という非JRの路線。

JR特急・智頭特急・智頭鈍行という三択で、智頭鈍行を選んだ。特急は金がかかると思って、ここだけ青春18きっぷを使わずに追加でお金を払って電車に乗ることにした。

智頭特急を見送り、切符を買おうと思い運賃表を見てみたら、何故か分からないけど智頭鈍行よりも智頭特急の方が安かったのだ。智鈍 ※4 は950円、智特 ※4 は530円。鈍行よりも特急の方が安いなんてある? 速くて安いって至れり尽くせりじゃん。

ああ俺の差額420円。青春18きっぷを使って大きく得をしているくせに、420円に血眼になるのも変な話だけど。あと智頭駅でスマホの電池が40%だった。ラジオを聞くのをやめて電池を節約した。

佐用駅で1時間待ち(智特をうっかり見送ってしまったのを含めて)、そこから智鈍1時間。智頭駅で50分待ち、再びJRに乗り50分かけて鳥取駅に行く。そこで30分待って30分かけて温泉宿の最寄り駅の浜村駅へ。とにかくこの時間帯が退屈で退屈で。眠くなりながら、ラジオも我慢して4時間40分を過ごしていた。

温泉宿のチェックインには間に合ったものの、やっぱり4時半起きで正解だった。自分が言った到着予定時間を超えると宿に迷惑がかかるから、それにドキドキしながら電車に乗っていた。

青春18きっぷが故に特急禁止ってだけでも時間がかかるというのに、山陰とか中国地方縦断の路線は電車の本数が少なすぎる。1時間に1本、特急を除くと2~3時間に1本とかザラ。乗り換え待ちの時間も長いし、スマホの電池もある。結局温泉宿についた時には残り13%になっていた。

ホテルではなく温泉宿である。1泊12930円(比較的安くない?)、大浴場付き、夕食・朝食あり。いい宿を見つけたものだ。温泉の夕食が楽しみだった。海の近くだから海鮮も美味しいんだろうなぁ。夕食前にひとっ風呂入ってお腹を空かせて向かった。

海鮮焼き・すき焼き・炊き込みご飯・刺身・煮魚…。もう本当に大満足! 自分の部屋ではなく食事処で食べてたので写真は撮れなかったが、海の幸をたっぷり食べた。

なんか食べてる最中に汗が止まらなくて、終わった後には汗だくだった。さっき風呂に入ったのに。しょうがないから部屋のシャワーで冷水を浴びて体を流し、汗びちゃになった浴衣を脱いで私服を着た。温泉宿だし浴衣で過ごしたかったのに。

今しがた日本名水百選のサイトを見たら、佐用駅に向かう電車で播磨徳久という駅を通ったのだが、そこの川も名水認定されていたらしい。千種川といって、おそらく車窓から見てた。でも写真に収めてないからこれはノーカンだな。3日目の帰りにでもサクッと寄れないものかね。

浜村などという田舎にわざわざ宿を探したのは、ここにも名水があるからだ。布勢の清水といって、駅から7km先にある。それがまあ遠いのだ。バスも通ってなく、温泉の朝食もあったから出発は遅くなる。予定では布勢の清水にも寄るつもりだったが、結局行くのをやめた。このために浜村に泊まったというのに。


※1 京都に住んでいた時の最寄り駅。「最寄り」と言いつつも徒歩25分ぐらいかかってたんだけどね。

※2 硬度が高くてリンの含有量が多く、鉄分を含まない酒造用に適した水質。江戸時代、この地域の水で作られたお酒だけが夏の暑さでも品質が落ちず、秋になっても美味しく飲めるということが発見されて、近隣の酒造会社がこぞってこの水を使い始めた。

ロープが張られて入れなかったと書いてはあるが、名水百選のホームページの写真でも鎖が張られているため、結局いつ行っても近くには入れなかったのだと思う。

※3 六甲山に水源をもつ生田川の一部分。昔から色んな人が和歌で詠んでいるっぽい。滝なので直接水を汲める場所は無く、従って飲むこともできない。飲めない名水ばっかじゃねぇかよ。

※4 智頭鈍行を略して「智鈍」、智頭特急を略して「智特」。


noteに定期的に旅行記を載せているが、青春18きっぷを使った旅の話は初めてとなる。まあ人生で2回しかやったことないんだけどね。5日間JRが乗り放題になる切符で、5日間分をフルに使おうとなると盆休みや年末年始の休みをほぼ丸々出かけることになる。

長期休み期間中ずっとどっかに行っていたいというバイタリティと体力のある人ならいいのだが、自分はそんなずっと外出の長期休みなんて到底ムリで、何日間は家でただ静かにくつろいでいる日が欲しいと思っちゃうタイプだ。

お得に電車に乗れる代わりに半強制的に5日間どっかに行かないといけないこの切符が、自分にとっては劇薬のように思えてくる。どこまでも行けるがその分代償もでかい。

だからこの憧れの青春18きっぷ旅は、大学時代くらいにしかできないものだと思っている。社会人になってからの長期休みで使おうとなると、どうしても腰が重くなる。転職のための無職期間中に切符の販売が重なるなんてことがあれば、もう1回やってみてもいいかななんて思う。

「JR乗り放題」とは言うものの、特急列車は追加料金がかかる。乗車料金がフリーになるのであって、特急料金は別で発生する。だから基本的には各駅停車、都市部を通る時に快速に乗れたらラッキー、なんてもんである。あと当たり前だが智頭線のように、JRじゃない区間はお金がかかる。

この経路でも京都~兵庫区間は快速に乗ることもできたが、鳥取に入ってからは基本的に各駅停車でゆっくり走っていたのを覚えている。1日目は宮水と布引渓流を眺める以外はずーっと電車に揺られているか、駅で電車を待っているかの無の時間を過ごしていた。空白の4時間40分である。

兵庫辺りでは海が見えたし、播磨徳久あたりの景色は確かにキレイな川が見えた、智頭線は田園風景が広がっていた記憶がある。電車に乗っている時は百歩譲って景色を楽しむワクワクがあった。

1時間に1本しかない電車を、そんなに冷房も効いてない田舎の駅で待っている時間が、なかなかにしんどかったなぁ。どうにかしてラジオを聞いて時間を潰していたが、それだって電池の残量は減っていく。

出先でSNSやYouTubeを見ないから、今までモバイルバッテリーを持ってない生活だったというのもある。この旅の教訓として「モバイルバッテリーが必要なほど、俺のスマホは経年劣化してきている」と思った。実際この山陰旅から帰った次の日に、エディオンに行ってモバイルバッテリーを買った。

宮水は楽しめなかったなぁ。水源が会社の敷地内にあるというのだから。日本酒を嗜む習慣も無いし、レモンサワーばっかり飲んでるし。へべれけな名水マニアがいたら、この辺りで日本酒を買ってみるのもいいと思う。

布引渓流は綺麗だった。ここで和歌を詠んでる歌人が沢山いたということは、歌人って体力のいる職業なんだなって思った。松尾芭蕉の「おくのほそ道」だってよくよく考えりゃ、めっっっちゃ歩いて旅してたわけだから。

そりゃ疲れ果てて「松島や ああ松島や 松島や」なんていうアホ俳句しか詠めなくなるわけだわ。歌を詠む時は、一回休憩してからにしましょうね。

温泉の夕食で何を食べたかをもうちょっと書き残しておいてほしかった。謎の発汗に気を取られていたんだろうな、そっちの方が面白い話だし奇妙なエピソードでもあるし。

人生で初めてアワビを食べたのは覚えてる。かったい貝、くらいの印象だったかな。海鮮焼きで熱々の状態で、たしか軍手とか渡されてなかったから、とにかく割り箸で力を込めて引っぺがそうと悪戦苦闘していた。だから汗まみれになったんかな。

本当の山陰旅は後編にて。これじゃ兵庫旅だったな。もう2日間で3か所の山陰の名水を巡ります。あと個人的に「山陰」「山陽」という、陰キャ/陽キャ的な名称の分け方が好きじゃない。光と影、的なネーミングセンスなのかな、だったらカッコいいけど。