家庭内贈収賄。
20代の終わり〜30くらいまで、介護の仕事をしていた頃の話。
相変わらずの実家暮らし(当時介護職の職員をしていたが、夜勤があるなど不規則な勤務時間で、常に頭がぼんやりしていて、時差ボケのような状態だった。体力的に、この仕事は長くは勤められないな、と思いながら次どうしようと考えながら働いていた。そんな状態で、低いながらも安定した収入はあったけれど、一人暮らしや実家を出ることは考えていなかった。職場も実家のすぐそばだったし、友人知人も実家周りにいたし。)をしていたのだけれど、その日は両親は留守で、祖母と私の2人だけ家にいて留守番している状況だった。
ささいなことで口論し(目が不自由で、当時80代と高齢だった祖母と、些細なことで口論したり、言い合いになることはしょっちゅうだった)、
婆さんなんてもういいよ!
と、捨て台詞を放ち私は2階の自室へと上がっていった。
2人きりで留守番の夜だったけれど、私も頭に血が昇っていて、もう話もしたくない、接したくないと思っていた。
すると、一階の祖母から、私を呼ぶ声が、
◯◯ちゃ〜ん(私のこと)、ちょっと話がある。
めんどくさいな、と思いながら、階段を降りた。
すると、祖母がスッと片手を差し出してきて、こう言った。
◯◯ちゃ〜ん(私のこと)、今日2人しかいないんだから、仲良くしよう。
私は、なんか気が抜けたというか、脱力して、さっきまで怒ってたけど、もうどうでもいいやと思って、握手しようと手を握り返した。
すると、手の中で、
クシャっ
と、おかしな感触がした。
何か紙のような、ガサガサするようなものを掴んでいるような感覚だった。
すっと手を引っ込めて、自分の手のひらを覗き込んでみると、そこには、くしゃくしゃに丸め込まれた1000円札があった。
そんな、30前後で、1000円で手打ちを持ちかけられたというお話。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?