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『84. 東京エクストリームウォークで100kmを歩き尽くす』バケットリスト

自衛隊の特集番組で、「100km行進」という
100kmの距離を3夜4日歩き続けるという
過酷な訓練があることを知りました

歩くだけでなく
30kgもの装備、道中には障害物、最後は戦闘演習
盛り盛りの訓練


幹部候補生になるための訓練とのことで
テレビを見ながら驚愕するとともに

フルマラソン2往復でも届かない100km

100kmもの距離を歩き続けた先には何があるのか

自身で計画してやってみようと思っていた矢先、
友人が広告のバナーで面白いイベントを見つけたと連絡をくれました

イベント名は「東京エクストリームウォーク100」

名前の遠り、100kmを歩くイベントです

小田原城址公園がスタート、明治神宮外苑がゴール
26時間以内に完歩するイベントです

コースマップがおそろしいことになってます


願ったり叶ったりとはこのこと
もちろん参加を即答しました

エクストリーム=「極限」の印象でしたが
米国のスラングだと
「最高」「超楽しい」という意味も
果たしてどちらか
WURKさんより引用

距離が36kmのビギナーズ部門と制限時間が2時間短くなるエキスパート部門とありましたが

とにかく100kmを歩くことが目的なので
距離100km、制限時間26時間
チャレンジ部門にエントリーしました

ルールはコース上3カ所に定められた「チェックポイント」を規定時刻内に通過してゴールすること

「チェックポイント」3カ所の他に「エイドステーション」が3カ所あり、そのどちらにも給水・給食所が準備されています

参加費はチャレンジ部門で16,000円とエクストリームではありますが、経験にお金は惜しまないことにしてるので問題なしとします

事前準備

一週間前
「大会参加キット」が事前に自宅に届きました

ナンバーカード、安全ピン、誓約書、参加賞(マスク、タオル)

いよいよって感じがしてきました

念のため、前回大会の完歩率を確認しました

公式Twitterより


210名がゴールを断念
しています

調べてみると理由は様々です
熱中症、足、膝、腰の痛み
衣類の摩擦によってできる擦り傷
どれか一つを庇うことで始まる悪循環
100kmならではの弊害がありそうです

更に雨が降ると完歩率ががくっと下がります

先人の知恵から学び、道具を揃えます

道具で補えるものは補います
参加するからには、途中リタイアは避けたいです

ザック、シューズ、マスク、帽子、靴下、サングラス、補給食、マスク、ヘッドライト、ニップルテープ、ウエストポーチ、雨具、モバイルバッテリー、ファーストエイドキット、テーピング、服一式

荷物は最小限に、でも念入りに
スタッキング能力が試されます

携帯電話とヘッドライトは大会必携品とされてます

着替え等の荷物は、スタート地点で預けるとゴール地点に運んでくれるので別けて準備していきます

この一週間は心と身体を整え、万全に挑めるよう
とくに何もせずに過ごしました

足掻いたって仕方ないの精神


一週間前の天気予報は雨予報
エクストリームも仕上げにかかってきています

ウェザーニュースより

運営さんも心配しております

公式Twitterより


そんな中良いこともありました

ザックが小さくて悩んでいたところ

長いこと入荷待ちが続いていたフランス発のスポーツブランドの「DECATHLON(デカトロン)のトレラン用ザック、EVADICT(エバディクト)が再入荷
大会前々日に無事に到着しました

ポケット15個15ℓ容量で重さたったの360g
2ℓハイドレーションも付きで9,590円(税込)

デカトロンの売りはなんと言ってもコスパの高さ
デザインも普通にカッコ良くて◎です

デカトロンの5,000円テントで
荒天キャンプを幾度と乗り越えてきました
品質の高さは身をもって確認済みです

エクストリームウォーク当日

2022年5月14日(土)

4時起床
長い一日が始まります

まず寝ぼけながらテーピングを巻きます
経験がないので見よう見まねです

電車を乗り継ぎ、会場まで向かいます

【0km地点】小田原城址公園銅門広場

出発地点 神奈川県小田原市城内6-1
出発時間 8:20

残念ながら天候は雨
少しでも早く止むことを願います

小田原城の門がスタート地点になってました
午前8時20分、ここから100km歩きます
想像すらできません

誓約書を提出、荷物を預けて、すぐ出発です

目指すは最初の休憩地点の平塚
距離24kmです

エクストリームの洗礼です

スタート直後は地図いらずで参加者行列に続くだけ

日頃の行いとは裏腹に、雨はすぐに上がりました

蒸れ始めた靴カバーとポンチョからの解放です
助かりました

国道1号、平塚まで17km

しかしながら道路案内標識の残km数が減りません

縮まらない距離と進まない時間
対価に釣り合わない疲労感

少しずつ不穏な何かが湧き出てきます
気がつけば13時です

もう4時間も歩いてます
それでも最初のエイドステーションに到着

目の前に広がる海

【24km地点】第1エイドステーション:平塚漁港しおかぜ広場

到着地点 神奈川県平塚市千石河岸53
到着時間 13:00


もう既に想定以上のダメージを足に受けています
給水、給食を頂きます

水、カレーパンタンパク質が8g摂れるコンポタ

配給品を貪り、ワセリンを各所に塗り込み
1時間も休んでしまいました
切り替えて出発です

目指すは第1チェックポイントの江ノ島です

ここから海岸沿いをひたすら歩いていきます

地平線を久々に見ました

江ノ島、サーファーがたくさんいました
前日天気が悪かったので波が大きいんですかね

浜辺にはBBQをする学生グループやサウナテントで整う社会人グループと素敵な休日を過ごす傍ら

黙々と歩き続ける
我々、エクストリームウォーカー

天気が回復して日差しがあります
帽子とサングラスはあってよかったです

全部投げ出して飛び込みたかったです

海も、見てるだけでは飽きが来ます

少しずつ大きくなる「江ノ島シーキャンドル」だけが私たちの希望です

【36km地点】第1チェックポイント:湘南海岸公園 クラゲ広場

到着地点 神奈川県藤沢市片瀬海岸2-19
到着時間 16:05

36kmのビギナーズ部門のゴール地点
8時間弱歩きました、配給を頂きながら休憩です

配給品!


膝が痛い


ハーフマラソンの時に痛めた所と同じ箇所です
確かに既にハーフ以上の距離歩いてますからね

こんなにも歩いたのに
まだ折り返しにすら達していないのが辛いです

そういった意味では次の第2チェックポイントで折り返しですが、そこまでの距離は20km

心を折りにくるGoogleマップ


20分休んで出発です
藤沢を目指します

日常感ある景色
私含め、メンバー全員が大分疲弊しています

膝と足の裏が悲鳴を上げているため
この程度の登り坂ですら泣き言も漏らすように

それでも休憩から1時間半
藤沢を抜け戸塚に突入です

ガッツポーズ

そこからまだまだ歩き続け
辺りは暗くなりはじめたので
配布された夜間用バッジを点灯

戸塚区に入ってからさらに1時間半
戸塚駅に到着です

異様な集団ですよね

中学生ぐらいの子達がスマホで調べてたみたいで
「これ100km歩くんだって。走りじゃないから簡単なやつっぽいよ。」と話をしていました

おじさんの自重、おじさんの治癒力になってからも
果たして同じ事が言えるかなと心で抗います

ここらで私たち4人の歩行ペースに差が出始めたのでツーマンセルに切り替えます

さらに1時間半歩きます
心は折り畳まれていますが、足を動かします

【56km地点】第2チェックポイント:横浜市児童遊園地

到着地点 神奈川県横浜市保土ケ谷区狩場町213
到着時間 21:05

前回休憩から4時間半、膝と足裏がもう限界です
さらに膝を庇って歩いたことで内ももにも痛みが

足裏はずっと痛いです
一歩出す度に痺れのような痛みが走ります
足ツボの痛みに近い感覚です

持続する痛みって精神をここまで削られるものだとは知りませんでした

次の目標地点を地図アプリで調べると1時間ほどで歩けると出てきました
助かったと思いましたが公式のルートを確認すると

この…みなとみらい経由がなければ…

楽しかったのはここまでです
個人的にはここからエクストリームに突入します

まず休憩明けはカクカクにしか動けません
身体が痛みで固まって動かないのです

かと言って痛みを庇って変な歩き方をしていると
別の箇所を痛めてしまうため無理矢理に修正します

もう何してても足が痛いです

激しい登り道と降り道を繰り返しながら1時間半
地図の右折の所まで来ました
直進すれば最短ルートなのですが…
断腸の思いで関内、みなとみらい方面へ

23時です
衝撃だったのがこんなに痛みがあっても
人間って眠くなるんだってことです

肉体的にも精神的にも極限状態です

弱音や愚痴を漏らし始める友人に容赦なくうるさいと言ってしまう私、そして数分後、お互いに謝罪

健全でない肉体には、健全な魂は宿らず


自分の弱い部分が炙り出されます
これがエクストリーム、恐ろしい世界です

そして日を跨いだ頃、みなとみらいに到着

コスモワールドの大観覧車の消灯を初めて見ました
深夜のみなとみらい、煌びやかで綺麗でした

あと一息と思い込んでましたが
悲しいことにここから30分歩くことになります

【70km地点】第2エイドステーション:ポートサイド公園

到着地点 横浜市神奈川区大野町1-4
到着時間 00:45

軽食と水分を補給
座って休むと足裏の痛みだけは少し緩和されます

疲労と眠気とで

70kmの達成感より
まだ30km残っている恐怖心が勝ります
そもそも制限時間内に間に合うのかどうか

壊れないでくれ…とすがるように足を揉み込むます

覚悟を決めて立ち上がると身体がバッキバキです

目指すは川崎、残念ながら未だ
「神奈川エクストリームウォーク」が続きます

ここで痛み止め「カロナール」を服薬
少し元気になった友人の自慢の技からげんきに救われ、多少の不安は食べることができました

我々の自慢の技が「むこうみず」でなかったら
この大会にエントリーしていなかったはず

それでも11kmの道のりは長く険しく

一歩踏み込むと土踏まずから電流が流れるオプションに苦しみ、さらに腕の筋肉痛と腰痛も加わり
私の中の極限状態の限界突破が終わりません

歩き続けるのも辛いんですけど
立ち止まるのはもっと辛いんです

赤鬼
深夜の赤信号に倫理観を問われます

【81km地点】第3エイドステーション:稲毛神社

到着地点 神奈川県川崎市川崎区宮本町7-7
到着時間 03:50


友人との協議の結果
ここでの休憩は最小限にすることにしました

多少でも痛み止めのバフが残っているうちに
次の7kmを縮めることにしました

10分の休憩で出発です

ここまで来たら行くしかない
この苦しみが全て無駄になることだけは
私も友人も望まない結末です

そして念願の時を迎えます


ついに神奈川から脱出、東京都に突入です!!

東京エクストリームウォークが始まりました!!

この喜びで脳を誤魔化しなんとか足を動かすも
3km弱を残して我々のバフは消えました

辺りが薄らと明るくなり始めます
こんなにも辛く苦しいオール明けは初体験です

【88km地点】第3チェックポイント:鈴ヶ森道路児童遊園

到着地点 東京都品川区南大井1-22
到着時間 05:50


私の今までの人生の満身創痍なんて満身創痍じゃなかったわけです

初めてのスノーボードの翌日の筋肉痛を
「この世の終わり」と比喩した過去の私

浅はかです

なんと最後のチェックポイントでは飲食だけでなく
鍼灸サービスを受けることができます

何気に人生初となる鍼灸体験
問診票を書いて鍼を刺されてきました

施術後、浮かれて帰ってきた私を
「気休め」の一言で一蹴する友人

すがったって、いいじゃないですか

出発します
最後の休憩は1時間と多めにとりました
身体はもうどうにもならないので気持ちで歩きます

結局最後は気合いです

「足が痛いのは当たり前」

この言葉をずっと頭の中で繰り返していました

漏れそうになる弱音を
この魔法の言葉(?)で打ち消します

1日以上歩き続けて痛くないわけがないのです

あと12km、ここまでよくがんばりました
フルマラソン2回分を既に歩いているんです

都内は信号が多いです
車道と歩道の乗り入れ用の傾斜すら踏ん張れません

完全にゾンビです
そんなゾンビの前に現れた「東京の象徴」

小田原から歩き初めて
ここで見る東京タワーは感慨深いものがあります

さらに1時間を歩きました
そしてついに、ついに姿を現しました

「神宮外苑」です!!

まだゴールまで距離が多少あるのがエクストリーム

それでも、長い一日が幕を閉じます


【100km地点】終点:神宮外苑室内球技場

ゴール地点 東京都新宿区霞ヶ丘町2-4
到着時間 09:00


もう何も残ってません
とりあえず勢いだけで記念写真

顔死んでます


水を受け取り、ゴールの記念品を受け取り

倒れ込みます
戦いは終わりました

完歩Tシャツと完歩証

私のタイムは24時間48分でした

達成感より安堵感が圧倒的に強かったです
無事に完歩できたことにひたすらに感謝でした

公式Twitterより
100km部門は328名がゴールを断念
最速ゴール14時間は異次元です

ほんとに凄い体験をさせて頂きました
今が人生で一番身体が痛いとすら思いました


それこそ部活やスパルタンレースなど、痛みで身体が吹き飛びそうになる場面は何度もありましたが
「24時間痛みと向き合う」気持ちと身体の強さが私にはまだ足りていませんでした

わたしにとってのエクストリームウォークは
極限状態で自分の弱さと向き合う大会となりました

この歳になると毎日社会で、仕事で負荷がかかる場面はあっても、こんなにも明確に大きな苦難と向き合うことができる場面って作れないと思います

苦労は買ってでもしろって
具体的にはこの大会のことなんだと思いました

ただ、私一人での完歩は無理でした
今回も感謝です

今後の人生において
他人の歩く速度に口出ししないとここに誓います

100km歩いた先には、何があったのかは正直よくわかりませんでしたが、
100kmを完歩した経験が、自分を鼓舞してくれる場面は今後いくらでもありそうです

東京エクストリームウォーク
100kmを歩き尽くしました!!




反省、問題、徹底回顧

①テーピング事件と皮膚問題

テーピングはあって良かったとは思うのですが
足の内側の皮膚の弱さを知りませんでした
皮膚が蒸れてふやけてしまい、テーピングを剥がす際、内もも4ヶ所、剥がれ落ちてしまいました

助けて、キズパワーパッド

休憩中に取り外しが可能なサポーターの活用や
保護テープなど、対策方法があったと思います

帽子にサングラス、コンプレッションインナーのおかげで日焼け対策は完璧でした
ピリッとしたヶ所にワセリンもすぐ塗ったのも良かった点です、ニプレスも効果があったと信じてます

ワセリンはまさかの配布があり二本体制でした

②靴問題と足の痛み問題

やはりランニングシューズとウォーキングシューズは別物ですよね、目的と設計が違うわけですから一番妥協しちゃいけない所だったと思います

逆に妥協しなかった100km仕様の靴下のおかげで
足のマメだけはほとんど回避することができました


③持ち物問題

ランニング用ザックは15Lで良かったです
8Lの友人は上着を諦めてましたが、ずっと動いているとはいえ夜は冷えました
肩も楽でした、密着性って大事ですね

コンビニがあるので食べ物飲み物で困ることはありませんでしたが、痛み止めはマストでした、持っていって良かったです
夜間は薬局は閉まっているので命拾いしました

ワクチンの副反応の時以上に感謝しました
ありがとう、カロナール

④雨問題

キャンプ用のポンチョにしたのですがサイズに余裕があって良かったです、靴カバーはすぐに雨が上がったので使い捨てが正解でしたが、一日雨だったら諦めて防水や速乾の靴にする他ないと思います
それこそ皮膚がふやけて持ってかれます

今回一番気に入っている写真


⑤ポテンシャル問題

膝に爆弾があるのを忘れてました

過去のハーフマラソンの際にハムストリングの筋肉量不足が課題であると医師から教えてもらっているのに、またやらかしてしまいました

私は普通の人より膝が柔らかいことで膝の可動域が広く、膝が真っ直ぐになりやすいことから衝撃が逃げ難い作りなんです

同じように足に爆弾を抱えている友人は
事前に医師に相談し、アドバイス通り筋肉をほぐしながら歩き続けることで、私よりも早く軽症でゴールすることができました

なんでも自分を知ることが大事です
知った上でどうするかはもっと大事でした


まだまだ人生勉強です

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