spring ephemerals


カタクリ



キクザキイチゲ





「エフェメラル」とは刹那、儚いという意味を持つ。



この季節、桜にばかり目が行きがちだが、山では他にもたくさん見るべき花が咲き始めている。むしろ山桜はまだこれからのこと。



「春の儚い命」と呼ばれる植物がある。



春の短い期間にだけ花を咲かせる植物たち。写真は、今日山の中で出会ったスプリング・エフェメラルの「カタクリ」と「キクザキイチゲ」 2つの種の群落が、芽吹く前の木々の下、灰色の世界の輪郭をそこだけ見事に彩っていた。



スプリング・エフェメラルと呼ばれる花はいくつかあるが、一様に彼女たちは、夏に葉茎を枯らし、翌年の春まで球根や根の状態でじっと地中で過ごす。よって春にしかその姿を確認することができないのだ。花ならそれはなおさらのこと。



美しさの本質には刹那的であることを宿しているが、その存在自体が我々の眼には刹那的であるスプリング・エフェメラル。この刹那を菌類や地衣類に話を広げると、我々の存在自体を相対化してくれるが、その話はまた別のときに。



春の妖精たちが、人知れず美しさを競ってる瞬間に立ち会えるのは、都会で生活している人間にはどこか遠くのお伽噺の世界に迷い込んだかのようで、自分だけの春を静かに点して歩く。



見上げれば渓流沿いの木立の中をセグロキセキレイが飛び、まだ若いツキノワグマにも出会うことができた。今年は雪解けが例年になく早く、山深くにも春はもうそこまで来ている。







北国の春は何より楽しい。







この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?