薬物療法でなく認知行動療法を選んだ理由

パニック症の治療ガイドラインでは、「抗うつ薬の『SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)』を第一選択薬として、即効性のあるペンソジアゼピン系の抗不安薬を併用することを推奨しています。」とあり、パニック症を克服する人の多くはこの薬物療法を実践するようで、パニック症をカミングアウトした芸能人の方々も薬物療法で完治したという方が多いようです。わが国において、パニック症は西洋薬で治すというのが一般的です(欧米では認知行動療法が一般的です)。

しかし私は西洋薬を服用していません。西洋薬は副作用や中毒になるリスクが気になり、これまで避けてきました。その代わりに漢方薬を服用しています。しかし漢方薬はリスクが少ない分、正直即効性も期待できません。

2020年の年明けから始まったパニック発作はこれまでと違い、クリニックで処方された漢方薬の服用だけではなかなか快方に向かわず、思いのほか長引いています。これではいつまで経ってもまともな日常生活が送れないと、全国的に著名なパニック症治療の専門医がいるクリニックを教えてもらい、最後の砦としてそのクリニックを受診しました。

そのクリニックを経営する医師が推奨する治療は、冒頭の治療ガイドライン通りの薬物療法で、漢方薬のみで治そうとしている私に対し、「そんな治療では治らない」とハッキリ言われました。私自身、食物アレルギーは無いのですが、アルコールやカフェインには敏感で、薬が効きすぎて倦怠感がなかなか取れないという経験を何度もしていて、薬に対して嫌悪感を持っています。その旨を伝えると、医師は「処方する薬は副作用や中毒性はほとんど無い」ときっぱりした態度で言い切りました。

それでも副作用が心配と伝えると、「一生漢方薬を飲んで、つらい思いをし続けたらいい」と投げやりな態度で言われ、正直来なければ良かったと思いました。しかしパニック発作から解放されたい一心で、絶対好きになれそうにないその専門医の「副作用や中毒性はほとんど無い」の言葉に賭け、薬物療法に取り組む決心をしました。処方箋を持参して、薬局に行き、念のため薬剤師にも副作用や中毒性のことを尋ねましたが、医師と同じように「ほとんど無い」とのことでした。

その日の夕食後、副作用が無いよう神仏に祈りながら初めて錠剤を口にしました。15分もすると私の不安とは裏腹に半年以上続いていた緊張感がやわらいでいき、漠然とした不安な気持ちがどこかへ消えて無くなっていくようで、その夜は幸せな気持ちで眠りにつくことができました。翌日、数年ぶりに幸せな気持ちで目覚めました。しかし体が思うように動きません。やっと起き上がりましたが、手足が鉛になったように重く階段を降り、トイレに行くにも一苦労でした。結局一日中眠気が抜けず、ゴロゴロしながら一日を過ごしました。

それまであった漠然とした不安感、緊張感、全身の力みは嘘のように消えましたが、一日中眠く、体が重く何もする気になれません。やはり副作用が強く出たのです。

薬剤師に「眠くなることもあるので、車を運転する際は気をつけてください」と言われましたが、そんなどころの話ではなく、駐車場までまともに歩けそうにもありません。そのことをくだんの医師に電話し、薬の服用を中止したい旨を相談すると、「飲まなければパニック症は治らないよ。お好きなように」と患者を見捨てるような言い様に、この医師に関わりたくないと強く思い、同時にこの医師の言葉どおりしていたら、家から一歩も出られなくなると考え、1日半で薬物療法をやめました。

もちろん薬物療法が効果的で、完治した人もいると思います。というより大半がそんな方だと思いますが、悲しいかな私に限っては副作用がきつく、結果的に毒薬でしかありませんでした。私のような人は稀だと思いますが。

現在私は処方された漢方薬を服用しながら、定期的にカウンセリングを受け認知行動療法を実践しています。不安感や緊張感、全身が力みパニック発作に襲われることもありますが、体は自由に動き、好きなエクササイズやドライブを楽しみながらアクティブな日常生活を送り、パニック症完治に向け取り組んでいます。


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