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文学フリマ個人参加で約50部完売レポート

このnoteでも販売している旅行記の紙版を作成し、

文学の同人誌即売会「文学フリマ東京38」にて、約50部の完売に成功しました。

「文学フリマ」のサジェストで「売れない」が出てくるような世界で、誰かとの合同ではない個人参加での50部は、まずまずの成功と言えるでしょう。
どうしてこんなに売れたのか、いわゆる手前味噌になりますが、ポジティブな反省会をしてみます。



①事前宣伝

Twitterでのまともな宣伝は、フォロワー4000弱の登山アカウントで1週間前に1度やったきりです。
フォロワー1300のライターとしての垢でも多少文フリに触れましたが、こちらの垢はインプレッション数を見ればわかるようにほぼ死に体であり、何の力もありません。

「展示即売会は事前の宣伝が重要」「だからSNSでどんどん宣伝しよう」という説もありますが、本当にそうでしょうか?
現在のTwitterは、垢のスコア(運営からの評価)が低かったり外部リンクが貼られていたりすると、びっくりするほど他人のタイムラインに載らない仕様です。

宣伝をするなら、事前に長い時間をかけて垢を育成し、よく考えて慎重に行わないと、ほとんど意味がないか、逆効果まであり得るでしょう。
たとえば「宣伝うざ」と思われてミュートされるとスコアはどんどん下がっていきます。


②表紙

圧倒的なデザイン力があり、この旅の趣旨をすっかり理解してくれていた師匠(@0529Staro)にお願いしました。

あまりにも良い

方向性は丸投げです。
プロのサイドに愛がある時、依頼者は素人考えであれこれ言うより任せてしまったほうが良いものになる――というのは、演劇を通して学んだことでした。
もちろん、これは愛がある場合に限った話で、何もない場合は困られるか手を抜かれるだけです。


③ディスプレイ

今回の文フリは2回目。
多過ぎる情報はノイズになる――というのが、初回で学んだことです。
当時はKindleなどの情報をQRコードを添えて紹介していたのですが、見向きもされませんでした。

ちょっとゴチャゴチャし過ぎ

文フリの来場者が興味を持つのは、その場で買える紙の本だけと断じていいでしょう。
持ち込んだ2冊(メインは新刊1冊)を、できるだけ少ない文字数で伝えようと考えました。

今回は長机半分

うちよりずっと派手で、高さのある、目立つブースはたくさんありましたが、自分がお客として回った時、よほど題材そのものに興味がないと、びっしり書かれている文字情報を近くで読もうという気にはなかなかなりませんでした。

見本には「見本」と書くべき――というのも、初回で学んでいたことでした。
「読んでみていいですか」という確認が必要な状況は障壁であり、「お手に取ってご覧ください」という声かけは無くても済むなら無いほうがいいやつです。
足を止めて「ほう」という顔をしている人に「よろしければ立ち読みどうぞ」と声をかけるのが、たぶん最高効率となります。


④セールストーク

前述の「よろしければ立ち読みどうぞ」の一言以外、こちらからは一切売り込みをしませんでした。

自分がお客として回った際、立ち読み中に熱いセールストークをかけてくる人がいましたが、あれは悪手です。
普通の人間の頭は、目で文字を読みながら耳で人の話を聴けるようにはできていません。
どちらからの情報もぐだぐだになります。

立ち読み中は押し黙り、圧をかけないよう、暗証番号を入力している人を見ている(見ていない)店員のように、視線さえ逸らしていました。
もちろん何か質問があれば突然饒舌になって喜んで答えました。
成約率は8割近かったので、たぶんこのやり方で正解だったと思います。


⑤題材

売れた最大の理由は、どう考えても題材がバチクソ強いことにあります。
徒歩で日本縦断と言われたら、旅や登山にあまり興味がない人でも「へぇ〜」と思うでしょう。

文フリに限ったことではありませんが、他人の興味を引けるものを作るのか、それとも自分のやりたいことをやるのか、表現者は常に悩まされます。
YouTubeの世界では、再生数を伸ばしたければ、そもそも視聴者層が多いジャンルを選び、ネガティブな感情(不安など)を煽るのが近道とされています。
同じ「踊ってみた」でも、心を込めて何ヶ月もかけて作ったオリジナル曲より、話題の新作アニメのオープニングテーマのほうが百億倍伸びやすいです。
それでも多くの人がオリジナル曲で勝負したいから、「伸びない」「売れない」と苦しむわけです。

僕はたまたま、自分のやりたくてやったことが人々の興味と合致していました。
オリジナル小説ではこんなに売る自信はありません。


⑥値段設定

相場とクオリティーからして、1000円でも完売したかもしれませんが、500円でした。
すでにnote上で500円で販売していたのが一つ。
もう一つは、原価(印刷代)が1冊258.4円で、文フリ参加費と合わせて、完売すればトントンになる計算だったからです。
作品への値付けは「堂々としよう」という意見も多いと思いますが、僕は「損しなきゃいいんじゃないの」と考えています。

あ、もう一つ、同時販売する小説も500円で、合計がちょうど1000円だからというのもありました。
「2冊セットで100円引きにしようか?」と一瞬考えましたが、この価格帯ならほんの100円ぐらいサービスしなくても買う人は買ってくれるし釣り銭の用意が面倒になるだけと判断して却下しました。


反省点

沖縄を徒歩で縦断した人が、同じ500円で旅行記を販売していて、物々交換。
ページ数はさすがに違うものの、カラー写真が豊富で、「やはりカラーは良いな」と感じました。

面白かった

当方はカラーを巻頭数ページにまとめることでコストを抑えたわけですが、そのページ数を増やしたり、モノクロ写真を足したりしても、1冊あたりの原価を300円以内にはできたはずです。
モノクロ写真でもあるとないとでは全然違うので、本文中にもっと入れておけば、立ち読みからの成約率をさらに上げられたかもしれません。

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