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冒頭の改稿②

前回からの続きです!

そうして、冒頭も大きく変わることになりました。
雛倉さんが次に送ってきて下さったのがこちらの原稿です。

第二稿の冒頭


第一稿の冒頭の前に、加筆されたパートが挿入されました。

雛倉さりえさん
「揺のパートのほかに視点をもう一つ取り入れようということになり、冒頭を別人物の日誌として始めています。当時、日記という形式がとても書きやすいという感覚があったので、類似の形式をとりました。この作品を執筆していた当時、コロナ禍で今よりも先のみえない状況でした。すべてが終わったあと、このできごとは後世にどういうふうに伝えられるんだろう、まとめられていくのだろう、とも思っていました。たとえばかつて私自身が教科書で読んだ、SARSについての章のように伝えられていくのかな、と。コロナ禍がおわったあとや、もしくはそのあとに生まれてきた人々がさまざまなデータをもとに俯瞰で語る言葉の方がより正確かもしれないけれど、渦中にいる人間にできるのは、今みているもの、今感じていることをそのまま描くことだけだと思い、そのような意図も一部込めて書きました。」


加筆いただき、一気に物語が重層的になり「さすが……!」と思ったことを覚えています。加筆箇所についてはぜひこの形でとお願いしたものの、主人公の視点に移ってからがやや長いのではという感想をお伝えし、最終的には雛倉さんがもう一度修正を加えて下さいました。

それがこちらです!

第三稿の冒頭


雛倉さりえさん

「日誌の部分について、当初の想定とは別の人物が書いた、という設定に変更したので、それに伴い、追記をしました。ラストに起こるおおきなできごとに続くよう、先取りのような形で記しています。
揺のパートについては、楽しくて描写しすぎたせいか「冒頭が重たい」というご指摘を頂き、一部削除しました。削った部分は、実は後半で再利用しています笑」


ということで、何度もやり取りをさせていただいた後に、この形で入稿させていただきました。ゲラになってから校閲からの指摘が入ったりと更に細かい微調整もありましたので、本をお持ちの方は見比べてみて下さいね!

原稿が変わっていく様子、お楽しみいただけましたでしょうか。
次回は、また別の場面について公開していきます。


雛倉さんのYouTubeでは、本が出来るまでの裏側をあれこれ公開いただいています。新潮社校閲部は出版業界でも有名で、メディアに取材いただくことも多いのですが、今回はなかなか見られない職人技(?)を雛倉さんに撮影いただきました!ぜひご覧下さい。