補正通知を受けましたが全く納得できず2日間にわたってやり合ったお話です。
※なお、断っておきますが、本調査官の方を批判する意図は一切なく、また私は普段から登記官/調査官をやり込めたことを「勝った」と表現するタイプの人間ではありません。
概要
1人株主・取締役Aのみの株式会社が、取締役会設置会社に移行するとともにいくつかの定款変更を行うことになりました。併せて、取締役BC、監査役Xを追加し、取締役Bを代表取締役とすることになったため、変更後定款の附則に以下のような規定を定めたうえで、登記を申請しました。
ところが、完了日の3日前に「代表取締役を選定した旨の取締役議事録を追完してください」という通知が来ました。
電話でのやりとり
「いやいや定款で選んでますがな。見落としたのかな?」と思い、電話でやり取りをしたところ「定款に定めがない」「だから取締役会で選ぶしかない」と言われたので「いや附則に書いてありますよね?」「定款に定める場合は『代表取締役を●とする』としなきゃダメですよね?」「いやだからそう書いてますよね?」「消除しているじゃないですか」「いや時限的な定めにしてますよね」「取締役会で選ばない場合は定款の規定が必要ですよね?」「いやだからそう書いてますよね附則に。直接選定してますよね。」「じゃあ代表が変わるたびに定款変更するんですか?」「いやだからね、…」とこちらの言ってることと向こうの言っていることが全くかみ合わず、補正の意図がわかりませんでした。
ただ、どうも電話でやりとりをしているなかで、そもそも本ケースにおいて代表取締役を定款で直接選定ができる旨の認識があるのかよくわかりませんでした。ですので、登記官が知らないなんてことあるのかな?と思いつつも「では資料を送るので確認していただけますか」と伝えて受話器を置きました。
意見書1
電話を切った後、一応手元の書籍を何冊か確認し、改めて自分の見解が誤っていないことを確認したうえで、下記意見書をFAXしました。
先方からの回答書
上記を受け、その日の午後に下記のようなFAXが届きました。
意見書2
上記FAXを受け取りまして、どこを争点としているのか、なにをもって補正としているのか、正直まったく意味が分かりませんでした。
本件はクライアントから完了を急かされていたこともあり、このような意味の分からない補正で足踏みをしている場合ではなかったし面倒だったので一瞬補正に応じようかとも思ったのですが、やはりこれは認めてはいけないなと思いなおし、下記意見書2を再送いたしました(めちゃ長い)。
顛末
さてどうなるか、いずれにしても早く回答してほしいなと思いながら、翌日の朝イチに意見書2をお送りしたところ、その日の14時に「このまま進めます」との連絡がありました。
特に理由も言わなかったため「結局どこが引っかかっていたんですか?再度お送りした私の見解についてどうお考えですか?」と聞きましたがむにゃむにゃといまいちはっきりしない見解を述べてらっしゃってたので、まあとにかく今日が補正日なので必ず今日中に上げてほしい、そちらの見解相違で2日間も消費しているので1秒でも早く完了していただきたい、とだけ伝え、電話を切りました。
まとめ
認めるべき補正/認めていい補正(という表現が適切かわりませんが…)がある一方で、認めてはいけない補正があると考えています。今回の補正通知も、取締役会議事録を添付したり、株主総会で選定する形に修正すればあっさり調査が進むことになったかと思います。
しかし、「定款で直接選定ができない」「この記載では定款直接選定規定だと読み取れない」という見解は明らかな誤りであり、これを認めてしまうと、以後、私だけでなく他の代理人の申請もその誤った見解で審査することになります。
登記官と司法書士をはじめとする申請代理人は、商業登記法第1条にあるように「商法・会社法その他の法律の規定により登記すべきと定められた一定の事項を、商業登記簿という国家が備えた帳簿に記録して広く一般に公示することで、商号・会社等に係る信用の維持を図り、かつ取引の安全と円滑に資する」という共通のゴールを目指しています。
我々が誤っていることもありますし、その逆もありますが、お互いに正しいロジックを確認し合いながら、正確な登記手続きを進めなければならないと思います。
そのためにも、もっと研鑽を積んでいかないといけないな、と改めて思った一件でございました。おわり。