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重たいテーマを「暖かく」描くとは?野木亜紀子のドラマはなぜ面白いのか。

2020年春クールに放送されたドラマ『MIU404』を見て以降、絶賛の野木亜紀子ブームが(僕の中で?)起こっている。

熱が冷めやらず、野木亜紀子さん脚本のドラマをひたすらに見続けるStayHome生活を送っています。

過去作品も含めて5作品を観たなかで見えてきた野木亜紀子作品の面白さを勝手に考えてみました。

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野木亜紀子さんとは?

1974年生まれの脚本家。
今では人気ドラマ/映画を生み出すヒットメーカーだが、デビューは36歳と実は遅咲き。
学生時代に演劇にのめり込むも、就職したのはドキュメンタリー制作会社でした。
そこで取材やインタビューを続ける中で「自分には現場は向いていない」と脚本家を目指しだした。そのため一時期は脚本家を目指しながら派遣社員としても働くなどをしていた時期もあったそう。

野木作品の魅力1:作品を通して登場人物たちと成長していく物語

『空飛ぶ広報室』の冒頭、テレビディレクターとして航空自衛隊の広報室担当をすることになった主人公の稲葉リカ(新垣結衣)は「戦闘機は人殺しのための機械」と堂々と言い放ってしまうほど航空自衛隊に対しての理解もなく、「自分の中の正義」のみを押し付け周りに体当りする強気な女性。
そんな稲葉が夢に破れた新米広報官の空井大祐(綾野剛)との出会いをきっかけに少しずつ変わっていく。
空井の、そして航空自衛隊の価値観、考えに触れるなかで、だんだんと他者の痛みや感情を理解し、人として成長していく。

自衛隊という特殊な環境を扱いながらも、稲葉はじめとする野木作品の登場人物が抱える悩みは何も特別なものではない。見ていて共感できるものばかりだ。
だからこそドラマの向こうの登場人物たちの成長をどこか他人事に感じることができない。
一視聴者の自分もドラマを見ながら自分に向き合い、主人公たちに刺激を受け、1歩踏み出していく感覚を持つことができる。

野木作品の魅力2:現代社会の闇に切り込んだテーマと暖かさ

『アンナチュラル』では「不条理な死」をテーマに法医学者として日々解剖に向き合う主人公たちを描く。

「死」という重たいテーマを扱う以上、各回ともに必ずしも明るい場面ばかりではない。
結婚間近の恋人を殺害された登場人物が犯人をナイフで刺してしまうシーンなど。目の前で救えなかった(命だけでなく、人生も)瞬間には、視聴者としても本当にやるせない気持ちにもなる。

『MIU404』でも「違法ドラッグ」「留学生の受け入れ問題」など現代社会の闇に切り込み、現実の重さを感じるシーンがたくさん描かれている。

一方で、こういったテーマを扱うドラマに有りがちな「とにかく辛い気持ちになって終わる」ということがないのも野木作品の特徴だと思う。
『アンナチュラル』では三澄ミコト(石原さとみ)と東海林(市川実日子)の掛け合い、『MIU404』では井吹(綾野剛)と志摩(星野源)の掛け合いが生み出す「温かさ」が緊迫するストーリーをときに緩ませ、最後にはどこかほっこりした気持ちを残してくれる。

実際に野木さんもインタビューで以下のようなコメントを残している。

「辛い中でも、どこか“温かさ”を残しています。それはテレビドラマだから。私は映画の専門学校出身で、卒業後はドキュメンタリー制作会社で働いていました。映画やドキュメンタリーは最後が残酷だったりモヤモヤしてもいいけれど、ドラマは違う。シリアスな題材を扱う場合も、見終わったときの気分は意識しています」

現実の重たい問題を取り扱いながらも、だからこそ一般視聴者に届けるためにも「温かさ」を忘れないところに野木作品の魅力があるような気がしている。

野木作品の魅力3:原作ファンも楽しめるアレンジが!?

野木作品の脚本には他の作家が原作を手掛けているものも多い。

『アンナチュラル』『MIU404』はオリジナル作品だが、小説や漫画を原作にした脚本も数多く手掛けている。

「なんだ、原作をドラマにしているだけなのか?」と思う方もいるかもしれないが、原作がある作品も単にそのままで作っているわけではない。
むしろ、原作があるからこそ。世界観を正しく理解し壊さないようにしつつも、テレビドラマという表現方法に適した形に変えていく難しさがある。

例えば『空飛ぶ広報室』。
原作の小説では主人公を綾野剛が演じる空幕広報室の空井大祐として新米広報官の成長を描いていた。
しかし、ドラマ化にあたっては主人公を新垣結衣が演じるテレビディレクターの稲葉リカに変え、野木オリジナルの視点で脚本を捉え直している。
また、原作には登場しないテレビドラマオリジナルのキャラクターを生み出し、それぞれにストーリーを作ったりもしている。

野木さんは世界観を理解するために原作に留まらず過去の有川作品も資料として読み込んでいたそう。
原作の有川浩さんも「原作に出てきても違和感がない!」とお墨付きの出来上がりになっているとか。

野木作品の魅力4:どこまでも真っ直ぐな心を持つ主人公たち

野木作品に出てくるキャラクターには「アタマで論理を考えて…」という小賢しい大人たちもたくさん登場する。
それに対比して描かれるのがとにかく真っ直ぐな心を持った主人公たちだ。

そして、真っ直ぐな主人公たちが周囲に影響を与えていく構図も特徴的だ。

『MIU404』では「初動捜査」のみ担当を担当する機動捜査隊の仕事にもどかしさを感じる志摩(星野源)の心を、「誰かが最悪の事態になる前に止められる良い仕事」と井吹(綾野剛)の真っ直ぐな一言が変えていく。

この「真っ直ぐさ」は全作品に共通していると思う。
『アンナチュラル』の三澄ミコト(石原さとみ)、『逃げ恥』の平匡(星野源)、『空飛ぶ広報室』の空井(綾野剛)など。
どの作品の主人公たちも自分自身の価値観を持ち、そこに向かって真っ直ぐなところが周りの心を動かしていく。

個人的に1番好きなキャラクターは『重版出来』の主人公の黒澤心(黒木華)。王道中の王道に真っ直ぐだ。
大学時代はオリンピックを目指して柔道に打ち込んでいたが、怪我で断念。
一念発起してマンガ編集者を志し、入社試験で社長を背負い投げして、なんとか興都館のマンガ雑誌『週刊バイブス』の編集者に配属される。

新人なのでマンガに対しての知識はゼロ。それでもマンガを良い作品にするために一直線。
「俺たちが取り戻せないものを持っている」と周りの編集者たちにも刺激を与えていきます。
自分が発掘した新人の中田のデビューが決まったシーンで、満面の笑みで涙を流すシーンに個人的にはグッと持っていかれました。

野木作品の魅力5:癖のあるキャラクターと癖のある俳優/女優陣

野木ドラマは主人公以外のキャラクターも魅力的だ。

『空飛ぶ広報室』では空幕広報室室長であり、「詐欺師」の異名を持つ鷺坂(飛田恭兵)がいい味を出す。
広報の根回しに関してはとにかくプロ中のプロ。自衛隊の飛行機を「商品」と言いながら、いかに商品を活用して自衛隊の活動を正しく世間に広報して行くのか?その手腕に圧巻される。
一方で隊員の気持ちを誰よりも把握し、面倒見のいいおじさんの側面も。空井と稲葉が結ばれる最終シーンでは「こういうのは既成事実を作っとかないと…」とちゃっかりハグシーンを激写。
『空飛ぶ広報室』を見た方はファンになった方も多いのではないだろうか?

『逃げ恥』もストーリーや主演2人の魅力はもちろんながら、強力なサブキャラクターたちの魅力なくしても語れない。ゲイの沼田(古田新)、おばの土屋(石田ゆり子)、イケメンの風見(大谷亮平)など個性の立った、だがどこか人間味のあるキャラクターたちが作品に面白さと深みを出している。

キャラクターも魅力的ながら、演者が複数作品にまたがって出演しているというのもファンには嬉しいところ。
新垣結衣・綾野剛・星野源・黒木華などの主演陣はもちろん、ムロツヨシ・要潤・松重豊など癖の強い俳優陣も登場するのも嬉しいポイントだ。
連続で作品を見れば「あ、この人が今回はこの役なんだ」と作品をまたいだリンクを楽しむことも出来るはず。

「リンク」と言えば、最新ドラマの『MIU404』にはドラマ『アンナチュラル』のキャストが登場し、物語自体ももリンクする。

視聴者はここで『アンナチュラル』の世界がドラマ終了後も続いていたことを感じることができる。まさにTo be continued…であると。


終わりに

完全に素人の物好きで書いたので、異論も反論も認めます!

野木亜紀子さんの作品は見た人の気持をどこか暖かくしてくれる。次の作品も今から楽しみです。

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