読書習慣を身につける方法
はじめに
本を読んでみようと思って書店で手に取る。もしくは誰かに薦められた本を読んでみる。しかし読み始めたはいいものの、難しかったり、共感できなかったりして自分の読解力を嘆いてしまう、そんな経験はないでしょうか。
僕は、読書が好きです。しかし同時に苦手な事でもあります。でも好きなのでずっと読んでます。その中で自分なりに工夫してきたことをお伝えできればなと思ってます。
本記事では、速読法などのいわゆる読書のテクニックをお伝えしたいわけではありません。本と長い間上手に付き合っていくために心がけていること、日々僕がどのようにして本を読んでいるのか、挫折しないためにはどうすれば良いか、そういったことをお伝えすることができればと思っています。
こんな人におすすめ
・読書の時間がなかなか取れない人
・読んでもすぐに忘れてしまうと嘆く人
・感想が上手く伝えられずに困っている人
それでは、はりきって、どうぞ!
1.読めるスピードはひとそれぞれ
SNSなどを見ていると、今月は10冊読んだ!というような超絶うらやましいポストが流れてくることがある。Xでは月末の恒例行事なのだが、僕はそれを見るたびに、ああ僕ももっと本が速く読めたらなあ、と思っている。でもそんなことを考えていても仕方がないので、僕は冊数よりも自分が本と向き合った時間そのものを自分自身で認めてあげるようにしている。
イッキ読みと対峙する熟成読書
イッキ読みができれば良いな、と常々思っているのだが、イッキ読みにも弱点もあるのではないか、と考え自分を鼓舞していた。(ただ強がっているだけでもある)
きっとあるはずだ!そう、あれだけ最強だったドラゴンタイプのポケモンが、ある日突然可愛らしいフェアリータイプに負けてしまったように。(なぜドラゴンの技がフェアリーに効かないのか、納得はしていない。炎が水に弱いとかはわかるんだけどさ)
(注:ポケモンにはそれぞれ相性があり、全てに強いポケモンというのは原則存在しない)
イッキ読みを否定するわけではないので、ご理解願いたい。本記事の趣旨は、読書を始めたいけど、なかなか続かないんだよなあというものであるのだから。
確かに、イッキに読むことができれば、その分多くの作品にふれることができるだろう。
だが、僕の人生を振り返ってみると、昔、何度も何度も遊んだポケモンのゲーム。僕はいまだにポケモン赤緑のジムリーダーの名前を覚えている。どんなストーリーだったのかも覚えている。
当時僕は、家の方針でゲームに対する規制が厳しかった。ゲームは週に3回、1回30分、という筋トレですか?というような環境で育った。
そうすると、次のゲームの時間までに間隔が開く。その間何を考えているかというと、次はどんなポケモンに会えるのかな、リザードンに進化するまであと5レベル必要だな、とか、そうやって自分の中で反芻する時間が生まれる。
週刊少年ジャンプでもそうだ。当然の如く家にはマンガがなかったので、友達の家で読んでいたのだが、週刊誌だと、あたりまえだが途中で終わる、しかもめっちゃいいところで。おいおい城之内どうなっちゃうの!くそ、続きが気になりすぎる!とりあえずデュエルしよ、となるわけだ。
当然ながら1週間待たないと続きを知ることはできない。
しかし、大人になって、ゲームを好きなだけできる環境に身を置くと、ポケモンの最新作とかもうすぐにクリアしちゃうんですよね。大学生の頃はそこからが本番じゃ!とひたすら孵化厳選をしていたのだが、すぐに終わってしまうので、子供の頃のあの反芻する時間がない。するとどうなるか。
ジムリーダー誰だっけ?ナンジャモしか覚えてない!ライバルの名前さえ忘れている!ポケモンの名前ももう忘れている。
アニメもそうだ。好きなアニメは何度も見てしまうが、おすすめされてイッキに見たアニメは、その時は、ああ面白かった、となるのだが、しばらくするともうきれいさっぱり忘れてしまっている。主人公の名前さえ思い出せない、なんてことはよくあることだ。
子供の時の体験とこれらの体験を比較してみると、自分の体内で作品を熟成する期間がないのだ、ということに気づいた。
そうか、週3回のゲームや週1のマンガというのはサブカルチャー的バルクアップだったのか。
要するに、本はイッキに読めなくても良いのだということを強く言いたいのである。何日かログインできずに自分を責める必要はないということだ。むしろその時間に、無意識の中でその作品を反芻し、熟成させている可能性だってあるということだ。
時間で考えてみる。
本の単位は何か。おそらく、おおくの人は冊だと答えるだろう。
否、本の単位は時間である。
1時間で読める人もいれば、5時間かかる人もいる。
24時間以内に読みっきてしまう人もいれば、1週間かかる人もいる。
なんだよそれ、効率が悪いじゃないか、という方はどうかお引き取り願いたい。そもそも読書とは、タイパとか効率とか、そういうものと対極にあるものである。それに抗うために読むのだ。そういうものに息苦しさを覚える人たちが自分のペースで本を読むから、楽しいのである。
ちなみに僕の先月(2024年8月)の読書時間はおよそ30時間である。
冊数で言ってしまうと1冊だ(悲しい)。でも30時間、って聞いたらなんだか楽しい冒険だったなあと思えるのである。ちょうどRPGを1回クリアするのと同じくらいだ。
とりあえずここまでのことを整理する。
読書は、自分自身のペースで向き合うものである。
読めない時間も、熟成期間だと考えれば良い。
時間で考えれば、勇気が湧いてくる。
読書とは、タイパといった現代の流れに逆らう手段である。
2.挫折には大きく2種類ある。
本を読んでいて、なんだか自分に合わないな、と思って読むのを中断する。それ自体は悪いことではない。
同時に、読んだはいいけど、上手く感想なんて書けないよ、本当に読めたのかな、と不安になる。
僕は、前者を中途挫折、後者を読後挫折と呼ぶことにした。以下、それらをどう乗り越えていくのか、ささやかな提案をしたい。
本当にそこでやめますか?
大前提として無理に読む必要はない。違うな、と思えば、またその時が来れば読めば良いのだし、来なければそれはそれで良い。
ただ、知っておいてほしいのは、読書とは、要するに筆者との対話である。
日常生活において、初対面でもすぐに仲良くなれる人もいれば、初めはそんなだったけど、しばらく話しているうちに、なんだよ、この人めちゃ面白いじゃん!という経験をすることがある。
すぐに仲良しになる人もいれば、時間がかかる人もいる。意外と時間がかかった人のほうがじわじわおもろい、みたいなことありません?
読書も同じことが言えるのではないだろうか。
話し手のリズム、言葉遣い、内容がはじめからバチーンと自分にあえばそれは僥倖だ。もしもし、運命の人、ここにいますよ。
だが、たいていは、そう上手くいかないものである。
日常の対話と同じように考えよう。
話し手のリズム、癖、馴染むのに少し時間がかかることがあるが、次第にチューニングがあってくる。すると、本を読むスピードが上がる。ノってくる。
この人おもろいな、こんな視点を持っているのか、とその人の一面を知ったような気持ちになって、(あくまでもつもり、ですよ)なんだか仲良くなったような気持ちで本を読むことができる。
そして、著者と(勝手に)仲良くなったら、ぜひ同じ著者の本をもう1冊読んでみてほしい。だってもう傾蓋の知己じゃん(勝手に)、ズッ友じゃん(勝手に)。
考えていることや主張、テーマも予測しやすいだろうし、文章のリズムも経験済みだ。これは、小説でも、エッセーでも、文芸書でも、ビジネス書でも同じである。
一応言っておきますが、小説は、お花畑空想物語じゃないですからね。フィクションという舞台で繰り広げられる「現実」だ。作者は、登場人物に己の主張を託すのだ。そして、自分じゃなくって、誰かに語らせるんだから、踏み込んでくる、あるいはわからないようにそっと仕掛けてくる。話がそれました。
中途挫折は、あなたの読書レベルに関わらず訪れるものです。
特に初めての著者との対峙は、現実での対話を想像して対処してみるのが良い。
まとめ方、ハンパないって。そんなんできひんやん、普通…
次は、読後挫折に関してである。(中途挫折と読後挫折、まだ誰も言ってないといいな。気に入っている。)
読後挫折とは、本を読んだは、いいけど、本当に身についたのか、とか理解できたのかな、と不意に訪れるあの不安である。それが起きたら最後、もう本は読みたくない、と思ってしまったらとても悲しい。
そして、本の内容を上手にまとめることができる人、すごいですよ。書評とかブログとか、エックスとかで、ズドーンと書かれているのを目にするたび、僕は圧倒され、うう、僕にもできたら‥と毎晩枕を濡らすのだ。
ということで、あれは上級者テクニックなので、僕は諦めた。できる人はやれば良い、それはすごいことだよ!自信持ちまくって良いと思う。
その代わりに僕がやっていることは抜き書きノートである。
抜き書きは近藤康太郎『三行で撃つ』(CCCメディアハウス)でも推奨されている。そのほか、さまざまなところで紹介されていると思う。多分。僕の発明でもなんでもありません。昔から何かを書いている人たちはみんなやっていた、そういうことだ。
本当は、本の内容を上手にまとめた読書ノートが作りたかった。でもできなかった。読書ノートコンプレックスである。
抜き書きとは、もうそのままの意味である。本を読みながら、気になったところをチェックしておき、あとで、ノートにその一文を書き写す、というものである。
ちょっと面倒かな、と思ったのですが、読書の理解度がぐーんと上がります。特に、時間が経った後にそのノートを見返すと効果を実感できる。
抜き書きノートの作り方。
その1 ノートを用意しましょう。普通のやつがいいです、あまりにも分厚いノートは挫折を引き起こす。
その2
なんでもかんでも書いていたら腱鞘炎になってしまう。そして嫌になる。テーマを絞っておくと良い。
例えば、気に入ったセリフ、とか風景の描写、とか、特に響いた言葉、とかなんでも良いのだが、あらかじめ絞っておくと、書きやすいし、続きやすい。目安としてはノート1ページくらいで収まるくらいが良いのではないだろうか。
その3
これは著作権の観点で、本当に気をつけないといけないことだが、本文は一言一句同じように抜書きすること、そしてページ番号をメモしておくこと。
これで、もし自分自身で何かを書こうと思ったときに、引用という形で用いることができる。とても便利だ。
間違ってもちょっと変えて、自分で使っちゃう、はダメですよ。剽窃だから。たまにアヤシイの見かけるけどさ。NO MORE 文章泥棒。
3.言葉にならない気持ちを大切に
本を読んだけど、面白いしか感想が出てこなかった。
別にええやん、面白かったなら。
それでもきっとあなたの心が動かされた何か、というものはあるのです。いまはまだそれが上手く言語化できないだけで、それが無いということはない。
無理に焦って言葉にしようとすると、陳腐なものが出来上がる。
どれだけグロテスクなものが出来上がったとしても、「ゼルダの伝説」に登場する勇者リンクはハイラル平原の中心でむしゃむしゃ食べ、挙げ句の果てに回復すらしてしまうが、僕たちはリンクのように超人では無い。
あなたが感じ取った、かすかな、灯りのような気持ちは大切にしまっておけば良い。もしかしたらそのうち表現できるようになるかもしれない。
4.僕の読書法
僕は、一度に30分が限界である。それ以上は寝てしまうか、疲れてカフェを離席するかしてしまう。それでもウルトラマン10体分なのだからそこそこだと思う。
筋トレ読書法と勝手に読んで本を読んでいる。
5分*3セット、ととりあえず決める(時間やセット数は裁量次第)
お風呂を沸かしている時間、寝る前、朝起きたら、ご飯の前後、など状況はなんでも良いのだが、そこに読書を挟み込む。
はじめは5分*3セットで良いのでは無いだろうか。タイマーを使うのも良い。結構集中できる。こんな感じで、電車で30分、それ以外でなんとか30分捻出して毎日本を読んでいる。
家の中ではだいたい立って読むか、布団の中で読んでいます。
要するに、寝たく無い時と寝たい時、単純な理由だ。
さいごに
無計画でとりあえず走ってみたのだが、読書については僕の中でもう少し深く掘っても良いのかもしれないと思った。
最後に今読んでいるの本の紹介。
『鬱の本』(点滅社)
『カフカの日記』(みすず書房)
シオラン『生誕の災厄』(紀伊国屋書店)
僕は、絶望の中に幸せを見出したいのだ、たぶん。
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