【1分小説】つまつま・ようじ
お題:「あきれた妻」
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つまようじは、先のとがった方の8割が“ようじ”で、つまむ部分2割が“つま”らしい。
と、妻が言っていた。
家に帰ると、こたつの上に異様な光景が広がっていた。
つまようじの“つま”側のみが大量に散らばっている。
「おめでとう」
妻はみかんを食べる手を止めない。
そして大量の“つま”を示して、
「ハーレムだよ」
などと、のたまう。
自然とため息も出る。
勝手にやるのは良いが、片付けるのはいつも僕なのだから。
「で、どれ選ぶ」
「何が?」
「この中から一匹選ぶんだよ」
妻は再び“つま”を指し示す。
こちらも疲れているのでいちいち構ってはいられない。
僕は適当に一つの“つま”をつまみ上げた。
「じゃあこの子で」
「おめでとう!」
妻は、みかんの食べ過ぎでみかん色になった手で拍手した。
「お幸せに!」
「はいはい」
僕は荷物を置き、洗面所へ向かう。
「お幸せに!」
「分かったってば」
“つま”を傍らに置き、蛇口をひねる。
ドタドタと、足音が迫って来る。
「ねえ、本当にその子でいいの?」
振り返ると妻がいた。
やれやれ、と彼女を抱きしめる。
「ただいま」
「おかえり」