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【1分エッセイ】誰かが小説を読む理由

 なぜ小説は売れるのか。
 「小説を書くのが趣味です!」などと豪語しながら、恥ずかしいことに、私は今までその理由を知らなかった。
 例えば、ネットで作品名と「あらすじ」というキーワードで検索すれば、有名な作品であれば大抵内容が出てくる。事件の真犯人も恋愛の結末も、何でも分かる。その作品に何が書かれているのか知りたいなら、小説そのものを読まなくても良いのだ。
 中には、ドラマ化したり映画化したりする作品もある。百聞は一見に如かず。小説で長い文章をつらつら読むよりも、映像で見た方がよほどストーリーが頭に入るではないか。
 それなのに、なぜ文章ばかりの小説が売れるのか。
 最近ようやく気付いたのは、小説とは「本を読んでいる時間」を提供する娯楽なのだと。本を読む、即ち文章を読んでいる時間が楽しくて、人は本を手に取る。あらすじを知りたいからではないのだ。
 小説に書かれている一文一文を読み進めるごとに、その向こうにある物語の世界へと歩んでいける。文章の書き方次第で、その道は悪路にもなり得るし、楽しくてワクワクする道のりにも変わる。
 暖かな春の小道を楽しく散歩するような、あるいはドキドキしながらジャングルの奥地へ歩いて行くような、そんな楽しいひとときを提供できる文章を書きたい。
 だから私は、もっともっと文章が上手くなりたい。