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【無理ゲー】説明書を読まない子どもにどうやってゲームルールを理解してもらうか?
こんにちは。カンジモンスターズという、子ども向けのトレカ風なカードゲームを作っている、森本と申します。
前回、ゲーム製作についての記事を書きました。
![](https://assets.st-note.com/img/1720137079126-I01ROvWXfp.png?width=1200)
さて、前回は基本的なゲーム設計のお話を書かせていただのですが、
その続きのお話でございます。
今回は、ボードゲームの最も重要である課題、
"ルールの理解〜はじめてのプレイまで"
を取り上げたいと思います。
重要なのは、具体的な目標設定
まず、スティーブ・ジョブズの引用から。
マッキントッシュのオペレーティングシステムを作っていたラリー・ケニヨンのところへ行き,マシン立ち上げの時間がかかりすぎると文句を言ったこともある。説明しかけたケニヨンにかぶせるようにジョブズは訊ねた。「仮に起動時間を10秒短くするだけで人の命が救えるなら,そうしようと考えるかい?」そうするだろうとケニヨンが答えると,ジョブズはホワイトボードに数字を書きはじめた。世界中で500万人がマックを使うようになった場合,1日10秒,起動時間が余分にかかると,年間,3億時間ほどの違いになる。言い換えると,1年間で100人分以上の人生に相当する時間が節約できるというのだ。
子どもは、ルールを理解するまでなんて待ってくれません。
いきなり遊べないと、他の楽しい遊びがたくさんあります。
そして、具体的に目標設定を決めなければ、
失敗か成功かの判断が主観になってしまいます。
というわけで、遊びだすまでの時間の目標設定を決めました。
制限時間は、1分!!(ここは完全に勘、、、)
開封して、1分であそび出せる。
そこを目指すことにしました。
しかし、ここでも長く激しい戦いがありました。
まず、最強のボスが、いきなり現れました。
子ども向けゲーム第一の壁は、説明書を読まないということです。笑
子どもは説明書を読まない
ということで、まずは、子ども(小1〜小3)に新しいゲームを体験してもらいました。
どんな動作をするか、本番は自分たちでゲームを空けて理解するところからなので、こちらは渡すだけで、一言も話しません。
![](https://assets.st-note.com/img/1720158634692-upMlH5MP7i.png?width=1200)
世のゲームは、大人向けに説明書が書かれていることがありますが、
それでは、学童など子どもだけの居場所では機能しません。
Youtubeでバズったゲームなど、ある程度知名度のあるゲームは良いですが、これから認知度を獲得するゲームであれば、無理です。
また、未だに教育現場では、QRコードの動画などは機能しづらい状態にあります。
現場の支援員さんやスタッフさんがご高齢で、電子機器を使うことはよしとしていない場合もあるからです。
というわけで、文明の利器に頼らずに、物理的なものだけで子どもたちに遊んでもらわないといけない。
そこで、わたしたちは、根本的な問題を発見します。
子どもは、説明書を読まないということです。(爆笑w)
説明書の入ったゲームセットを渡すと、
説明書をどけて、
「なにこれ?」
「どうやってあそぶの?」
「わかんない。」
「まぁ、じゃいっか。」
実験終了。
圧倒的敗北です。
メイウェザーに立ち向かう、天心。
相手が悪かった、、、
文字の羅列である説明書はその存在すら認識されず、
殺処分となりました。
しかし、この逆境こそが我々を強くするのだっ!!
うんうんうなりながら、
「説明書をどうやってわかりやすく書くか?」
という問いに向き合っていたのですが、
これまた前回同様、問いを変換致しました。
「説明書、なくすか。」
「説明書があるからいけないんだ!」
チームメンバーは、僕が気が狂ったんだと思ったと思います。
ここから、わけのわからない問いと向き合うことになりました。
「どうやって説明書なしに、子どもたちにゲームをあそんでもらうか?」
選択肢をなくす!
しかし、そんなことできるのでしょうか。
および、できている事例はあるのでしょうか。
ヒントにしたのは、デジタルゲームのUIでした。
子どもたちは、スマホゲームではスムーズにあそぶことができます。
はじめてインストールしたプレイするとき、
機能するボタンだけを光らせたりして、
それを押させて、どう機能するかを表示します。
そして、その体験を通じてゲーム全体を理解していきます。
そして、僕たちの育った時代と違うところは、
それが当たり前の体験になっているということです。
ゲームの理解までが長く、難しいと、
その時点では、彼らにとってゲームでなくなってしまいます。
だから、ゲームを理解するまでの選択肢を、
スマホゲームのように、
常に、ひとつだけアクションを指示している出ている状態にできないか
と考えました。
先行事例はやはり宮本茂
説明書なしに機能するUIの実例として、
有名なのは、マリオブラザーズのUIです。
別の方のnoteより引用ですが、
![](https://assets.st-note.com/img/1720166901644-vo0edXSgYH.png?width=1200)
このように、見ただけで次に何をすべきか、わかるようになっています。
そんな風に、視覚情報だけで、子どもたちの行動をコントロールできないかと考えました。
![](https://assets.st-note.com/img/1720160063602-vC8juO1p55.png?width=1200)
まず、空けたらプレイシートが登場。
これを取り出したら、
![](https://assets.st-note.com/img/1720160136849-1T0lTIHhYf.png?width=1200)
ガイドカードにがあらわれます。
このうらをみてじゅんびをはじめよう!
という文字だけが目に映ります。
そしてさらに一工夫。
失敗した実験から取り出した子どもたちへの洞察がヒントになりました。
子どもは、触りやすいものをさわる
子どもたちに説明書を読んでもらえなかった実験で、
あることに気づきました。
説明書がすぐそこにあるにも関わらず、
カードをずっと触りながら、見ているのです!!
説明書を無視して。笑
これはなぜかを考えました。
子どもたちにとって、カードがあったら、
めくりたくなるのではないか?
そうあたりをつけました。
そしてもうひと工夫。
袋を2種類準備し、
最初に手にとって欲しいガイドカードはOPPの開けやすい袋を。
今手にして欲しくないカードはシュリンクした開けにくい袋を。
そうすることで、
ガイドカードから手にとってもらう確率をあげます。
そして、カードに、次にすべきアクションを一つずつ提示します。
![](https://assets.st-note.com/img/1720160546524-lTQD47uuA6.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1720160588706-islAFbHDqC.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1720160599421-MtL708MNCQ.png?width=1200)
というように、明確に1つずつ指示をすれば、迷うことはありません。
この、カードでゲームを説明していくスタイルは、フリードマンフリーゼのゲームにもヒントをもらいました。
![](https://assets.st-note.com/img/1720167145891-f4foHEtHtq.png?width=1200)
細かく、カードで1アクションずつ指示することで、良い効果がもう一つ現れました。
それは、説明書を読み込み、ルールを理解する人と、待っている人が別れないことです。
待っている退屈な時間を減らすことができ、子どもたちだけでもプレイできるようになりました。
![](https://assets.st-note.com/img/1720168630620-6RURR0OYYt.png?width=1200)
他にもいろいろありましたが、
無事ゲームをはじめてもらうことができました。
これにて、ミッションコンプリート!!
ゲーム製作自体が、とんでもなくおもしろいゲームだ!
ゲームのアイディアを子どもたちにぶつけてみると、
必ず課題にぶつかる。
しかし、その失敗の体験の中にヒントが必ず隠れていて、
失敗というのは、なにかのお告げのようなものである。
そのもやもやから、新しい問いを発見する。
そこにチャレンジしていくと、
次のステージに上がっていく。
そんな体験の連続だと思っている。
カンジモンスターズを遊んだ子どもたちの中から、
「将来、カンジモンスターズのようなゲームをつくりたい!」
と言ってくれる子どもたちがちらほら出てきた。
ずっと探究学習という、子どもたちの好奇心を伸ばす教育活動をしてきたが、
自らが探究している姿勢こそ、
子どもたちの探究活動を最も促進する教育なのではないかと思うようになった。
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〜森本佑紀 通称:モリソン〜 タンキュー株式会社 代表取締役 「学びをエンタメにする」という思いのもと、小学生向け教育コンテンツを開発。「世界っておもしろい。」を伝えるアナログのゲームの制作・販売事業と、小学生向け通信教育サービスを提供。2021年には、Amazonと楽天で「知育・学習玩具カテゴリー」で第1位を見事獲得。制作したゲーム作品は、マンガ誌『コロコロコミック』 『てれびくん』(共に小学館) にて漫画化された。
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