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【ゲンロン 大森望 SF創作講座】課題1梗概コメント【第6期】

課題1「あなたの特徴をアピールしてください」のコメント記事です。


「ゲンロン 大森望 SF創作講座」について

書評家・翻訳家・SFアンソロジストの大森望さんが主任講師のSFの創作講座です。


第1期の講義内容については、下記書籍にまとまっています。


以下、それぞれ梗概へのコメントです。作者名「作品名」としています。(敬称略、名前順です。)


荒波「地球酔い」

地球の自転運動が荒れて人々が常に乗り物酔いをするようになった世界で、科学者が対処する話。

地球規模で起こる現象のスケールの大きさと、一人の科学者の行為で進む展開が効果的で良いですね。
ウイルスや細菌の研究をしていたことで現象への対処ができて、その設定がクライマックスでもビジュアルとして活かされているのが上手いです。


難波 行「惑星トルクワァン」

記憶の集合体に触れる経験をする話。

登場人物の設定や記憶に触れる経験をするまでの流れなど、現実みを感じる描写となっていて良いですね。
触れる記憶に関しては、「かなりよくできていた」「ひと塊りの体験記憶」ぐらいの描かれ方なので、実際にそれがどういったものなのかはわかりづらいかなとは思いました。


夢想 真「脳虫」

地球外生命体と遭遇する話。

キャラの行動を通して話が進んでいくので情景のイメージがしやすくて良いですね。
幼少期に遭遇している生命体について、「見たことのない不気味な生命体」という避けた描写なので、十歳だったらもう少し観察して何かにたとえるとかはできるかもとは思いました。

地球の先住種族、別次元、AI、手先の羽虫とそれぞれ単独で描けそうな部分が集まっているので、要素盛りだくさんには感じます。


古川桃流「霧の膨張と微小なトカゲ」

機械技師の主人公が金払いのいい職場に行ったけどキレて出戻りする話。

話のベースである「霧」の設定がうまく描写や展開に使える感じで良いですね。里親の老時計職人、最初と最後だけで主人公の選択に直接絡まないので、教えられたことを思い出して行動する、一瞬里帰りするとかあってもキャラ立ちしていいかなとは思いました。

「霧」がスチームパンク感あって良いなと思っていたら、最後には物理で解決して放火endなのでバイオレンスでした。

相田 健史「「ガ」「リ」「イ」」

生命と概念の誕生の話。

ずっと抽象的な話でいくのかと思ったら終わりに恐竜が出てきたので、時代感をイメージするのが少し難しかったです。

ある程度人格がありそうな「ガリイ」それぞれは、何か具体的なものがあっての名付けなのか、この世界はどう観測されて描写されているのかは気になりました。


瀧本 無知「パシフィカ」

アフォーダンスの話。

人工島都市国家の設定、良いですね。
この国家の成立や生活のところで色々と展開は起こせそうですが、話としては神経学者の研究ベースに進むのでしょうか。

一般市民の生活やこの世界観での日常描写がエピソードとして入ってくるとうまく設定と絡ませられそうな気はします。


イサナ「糸は赤い、糸は白い」

きのこパワーで感情を交歓できそうになる話。

菌糸を脳に植えて感情の交歓をする技術がさらっと出てきて、あとはそれとは関係なく親密な関係になっていて良いですね。

現状相手の女性がどんなパーソナリティかわからないので、主人公の抱く感情や選択の意味がわかりづらいなとは思いました。


長谷川 京(けい)「異界からのスーパーライク」

資金繰りリアリティショーでマッチングする話。

ドラマチックな展開が連続していて、キャラの役割がはっきりしていて良いですね。
宇宙舞台での話なので絵としてもおもしろい描写になりそうです。

作中ではマッチングアプリが出てきていますが、「宇宙に散らばる多様な性に向けたアダルトサイトを運営」という冒頭なので、何かコンテンツとしての制作やシステム構築もしている想定なんでしょうか。地球人類以外の性産業の需要について詳しく描かれていないので、現状「アダルトサイトとマッチングアプリ」を組み合わせる部分でどういうビジネス構想なのかは想像しづらいとは感じました。

hiromitomo「輪廻する人工知能」

お見送りまでがリース期間の人造人間の話。

輪廻転生と人造人間の意識の移り変わりが桜と重ね合わさっているところが良いです。 女性がお年寄りであることは冒頭に出てこないので、人工知能の成長と契約の全貌がクライマックスですかね。

女性と人造人間の関係性で話が進むので、どうやって人として成長したことを示せるのかが気になるところです。


イシバシトモヤ「ゲノム撩乱」

金魚の品種改良とデザイナーベビーの話。

わかりやすいモチーフと展開で、ビジュアルイメージが明確で良いですね。
描写として詳しく描かれていきそうなのは金魚の品種改良部分で、デザイナーベビー部分は少なめ(生命情報技師だから本業ではそちらもやっている?)のような気がするので、オチの部分でこの2つのモチーフ選択の納得感が出るendになるかは少し疑問がわきました。(金魚の品種改良onlyよりも良く感じるend)


霧友 正規「星の管理者」

文明崩壊後、テレパシーでの交流が一般的になった社会で自分だけテレパシーできない少年の話。

人類が獲得したテレパシーが科学技術によるもので、その情報開示と設定描写が大きく描かれそうでよいですね。

一回人類の文明が崩壊した後なので、そこで求められる技術は果たしてテレパシーなのか……?とか、サーバーは小惑星の衝突でも残ったのか……?とか疑問はわきましたが、オチの部分で何らかの黒幕描写はあるので父と子の話でいけそう感はあります。


岸田 大「浪が火に咲きて、聲に炎える花が、貴方の詩として」

妹が詠んだ詩と同じように宇宙が終わる話。

冒頭、植物惑星に行って妹がおかしくなる部分、良いですね。花に食われる部分まで色々な植物の描写とともに絵作りできそうです。

とある家族、詩が大好きな妹ぐらいしかキャラの設定がないため、妹が語るようになった詩が世界の崩壊と直結していることに対してどう受け止めていいかはわかりづらいかなとは思いました。

「一冊の詩集」「テレビ」等が出てくるので、惑星間の移動は一般的になっても生活としては現在の延長ぐらいの世界観でしょうか。


岸本健之朗「テレジャイガーの島」

怪獣退治する話。

怪獣との戦闘シーンと物質転送要素があるので動きのある展開作れそうで良いですね。

作中の怪獣、体長八メートルなので大きめのワニぐらいのイメージなんでしょうか。警官が拳銃で対処しているぐらいなので、この世界基準でも「怪獣」というよりも街に出没した厄介な動物ぐらいじゃないかな……とは思いました。


渡邉清文「腐乱死体と妖精軍団、あるいは忘れられた叫び」

政府の陰謀と戦う話。

冒頭、部屋に残された絵物語から展開が始まるのわかりやすくて良いですね。

ミハイルが主人公で、彼が何かの正義感を持って事件解決へと向かうのかと思ったら途中で亡くなるので驚きました。

特殊清掃のような職業をしているメインキャラ2人ですが、絵物語の解読ができることと、戦う会社の規模感としてあまりマッチしていなさそうなので現状は警察小説っぽいな……とは思いました。


降名 加乃「離人」

人間とアンドロイドの心の話。

途中、「宣言とともに地区代表は爆発。社屋も爆発して崩れ落ちる。」部分、勢いあって良いですね。

転移の技術をベースに話が進むのかと思ったらアンドロイドとしての心身のあり方になっていそうなので、何か展開や舞台移動等が欲しいとは思いました。

《統局》が運用しているこの世界観がどうなっているのかの説明が少ない(仕事や生活がどうなっているのか)ので、ディストピアものとして読めばよいのかアンドロイドものとして読めば良いのかは迷うなと感じます。


KounoAraya「死なざるエメス」

人権を主張するロボットの話。

メアリの主張を通して、ロボットが一般化した社会の中での問題が描けそうで良いですね。 「プロ顔負けの殺陣」や「滑らかに罵詈雑言」を垂れ流せる機能、魅力的な設定なので描写として読みたいところです。


山本真幸(やまもと まさき)「アンプルリセット」

人々が感情をリセットして生活する社会で、ウサギの死を通して感情について考える話。

感情リセットの技術と機械型のウサギがいるので、ある程度社会が変化した未来の話なのでしょうか……発展した技術で機械のように動く人間と、感情を抱えた人間とウサギとの関わり合いがおもしろく描けそうですね。

感情をデータとして集める政府があるので、どういう経緯でこの技術が開発されたかは気になるところです。


髙座創「マスターピース辿って」

美大生がAIの作る絵画に感化される話。

1段落ごとに、ビジュアルとしておもしろく描けそうな展開が出てきて良いですね。AI美芸研等でがっつり取り組まれているテーマではあるので、SF作品としてどこまで科学に寄せていくかは気になります。

冒頭、五年ぶりに先輩と会うということは多浪した油画の学生か……?とか、小遣い稼ぎに二次同人を作っているがAIの生成したイラストには強く言うのか……?とか主人公の美大生のキャラはどうなっているんだろうとは思いました。


伴場 航「火星への道しるべ」

火星探査から帰還した宇宙飛行士が、自分だけ生還したことに向き合う話。

過去に起こった出来事に対して登場人物が考える展開、普遍性あるテーマな感じで良いですね。 「二十一世紀の末」で火星有人探査なので、技術的には現在の延長ぐらい?

病室を中心に事故についての話が進むのと、火星人とのファーストコンタクトは実際にはなかったっぽいので、大きい見せ場作りづらそうなのは気になりました。


猿場 つかさ「“パパ”活トピア東京」

羽蟻生物と互いに利益を与え合う関係にある女子の話。

キャラ同士の関係性や展開がわかりやすくて良いですね。SF的な世界観の設定として”パパ”を入れつつも、キャラを通して描写される世界と関係性の変化で共感して読めそうです。

西麻布や錦糸町(菌糸町)など実際の東京の地名が出てくるの、リアリティにつながって良いと思うのですが、現代とある程度地続きなこの世界に現れた羽蟻生物はなぜ”パパ”と呼ばれているんでしょうか……?羽蟻生物と女子たちで行われている行為のことを作品外から見て「“パパ”活」と呼ぶことはできると思いますが、キャラたちが“パパ”と読んでいるのは少し不自然に感じました。


夕方 慄「そのお玉が許せない、もしくは翻訳の話」

幼少期を思い出しつつ、ダイナーで打ち合わせする話。

今の時系列で起こっている出来事がダイナーの席で注文するぐらいなので、話としての落とし所や展開はどうなるんだろうと思いました。

現実の出来事と主人公に起こっていることが区分けされていないので、文章同士のつながりがわかりづらく感じるんですかね……。





(全員分書く予定なので、随時更新していきます……!)


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