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内部通報制度 -安心・安全な競技環境づくりに向けて-

一部の都府県を対象に「緊急事態宣言」が発令されました。それと並行して大型の経済対策も打ち出されるようです。経済学の世界では、このような財政支出は将来的な緊縮や増税とセットとされているので、「我々の世代はとんでもない負債を背負ってしまったな...」というのが正直な感想です。消費は冷え込み、これまで以上に貯蓄志向が強まるのではないでしょうか。(この辺の議論に関心のある方は、「恒常所得仮説」「中立性命題」といったキーワードをGoogleで検索してみてください。)

さて、今回のエントリーでは「内部通報制度」についてまとめようと思います。内部通報制度とは、法令違反などの早期発見・未然防止のために、組織の関係者からの申告を受け付ける制度です。通報事実によっては罰則が与えられることもあります。競技関係者にとって中央競技団体の内部通報制度は、"安心・安全に競技に取り組むための基盤"ともいえます。また、このエントリーは先日公開した「スポーツ団体のガバナンス」のエントリーとも関連がありますので、関心のある方はそちらも合わせてご参照ください。

公益通報について

公益通報とは、事業者の法令違反行為などに対して、それらを監督する立場にある期間に対して申告を行うことです。公益通報は、通報先によって以下の3種類に分けることができます。

①監督官庁への通報(文部科学省やスポーツ庁など)
②メディアへの通報(新聞社など)
③関係組織への通報(中央競技団体など)

これらのうち、"③関係組織への通報"がいわゆる”内部通報”に該当します。ちなみに、公益通報に関する制度は通報者の保護とセットで運用されなければなりません。具体的には、「公益通報者保護法」という法律があり、事業者の法令違反の発生と被害の防止を図る観点から、公益のために事業者の法令違反行為を通報した事業者内部の労働者に対する不利益な取扱いを禁止しています。

内部通報とコンプライアンス

スポーツ界の場合、内部通報の対象となる行為(以下、「通報対象行為」)は中央競技団体の「倫理規定」や「懲罰規程」、「禁止行為規程」などの規程に定められていることが多いです。これらの規程において禁止されている行為、すなわち通報対象行為を見かけた人は、「通報者」として所定の窓口に内部通報を行う必要があります。

内部通報制度の果たす重大な役割は、「コンプライアンス(法令遵守)の強化」です。最近までスポーツ界を騒がせていた不祥事の中は、競技者が"泣き寝入り"を強いられるようなものもありました。"通報対象行為の相談先がある""通報対象行為に対して中央競技団体が厳正に対処してくれる"という事実が泣き寝入りを防ぎ、組織の内側からコンプライアンスを強化していくことにつながります。

コンプライアンス強化に向けたJFDAの取組み

メジャースポーツの中央競技団体の多くは、内部通報制度を構築していますが、日本フライングディスク協会(JFDA)は未構築となっています。内部通報制度の構築は「NFガバナンスコード」にも定められていますので、早急に取り組まなければなりません。(NFガバナンスコードの説明は「スポーツ団体のガバナンス」のエントリーにまとめています。)NFガバナンスコードに定められていなくとも、昨今の社会情勢を踏まえればコンプライアンスの強化は必須事項であり、そのためには内部通報制度が重要であることは疑う余地がありません。

このような問題意識の下、JFDAはコンプライアンス強化に向けて「コンプライアンス委員会の設置」「内部通報制度の構築」を進めています。コンプライアンス委員会は、内部通報の窓口となるほか、通報対象行為に関する事実確認、調査、報告等を担う重要な専門委員会です。もちろんコンプライアンス委員会単独では対応可能範囲に限界がありますので、通報事実に関連する他の専門委員会(例えば、セクシャルハラスメントに関する通報であれば女性委員会など)と連携できるような体制を検討しています。

内部通報制度の中身ついては前半で触れた通りです。内部通報制度には公益通報者保護法が関係するなど、法的根拠に基づいた制度設計が求められるため、顧問弁護士の方からご助言を頂きながら検討を進めています。

コンプライアンス強化の目的は、"安心・安全な競技環境を創出すること"にあります。コンプライアンス強化は、何らかのハラスメントによって競技の継続をあきらめなければならない、泣き寝入りしなければならない、こういった不幸な状況を生まないための取組みです。今後の取組みの進捗は協会HPにアップされる予定なので、そちらもぜひ確認してみてください。

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