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一滴の雫と世界の浄化💧

私は真っ暗な校舎で
殺人鬼に追われていた

冷え切った窓ガラスが延々と並ぶ中で
2つの足音が響き渡る

私の逃げる足音と
殺人鬼の追いかける足音

窓ガラスの向こうでは
私と似たような制服を来た生徒が
いたが、むっちり系美女に
何かをされていた

彼女はスーツを身にまとっていたが
スーツスカートの裾からは
闇夜に光る程に白い太ももが見えていた

ほっそりしているようで
肉付きの良い身体の頭部では
茶色いボブヘアが揺れていた

そして一瞬合ったその瞳は
紅色をしていた

私はそんな彼女の姿を目の端で
チラリと捉えながらひとまず
視界に入ってきたトイレに逃げ込む

あえてトイレの掃除道具が収められている
業務用ロッカーに身を隠した

ドゥエットだった足音が
ソロに代わり

ギーッとトイレのドアが開かれる

私は濡れたモップの臭さに耐えながら
清掃用の黄色い制服の内側に
息を殺して隠れていた

カツ
 カツ
  カツ

足音が近付き、一つ一つの
ドアが開けられていく

ギーッ
 ギーッ
  ギーッ

そして私の隠れているロッカーの
手前までその足音がやってきて
ドアノブに手をかける気配がする

”見つかってしまう!!”

そう思った刹那
トイレの外側で足音が駆けていった

その足音につられて
殺人鬼はトイレを出ていった

黄色い制服をフード代わりに被りつつ
恐る恐る半開きになったロッカーのドアから
外側を覗き込んで見る

殺人鬼の気配がなくなっていた

私は周囲を警戒しながら黄色い制服を置き
トイレを出て上の階にある教室へと向かう

そこには他のクラスメートが
いるはずなのだ

ふと先程のむっちり系美女が気になり
窓の外をコッソリ見ると

彼女の周りで先程からいた
生徒が意識朦朧とした状態で
ゆらゆらと揺らめいていた

何やら洗脳でも受けているようだ

“コワイなぁ”と思っていると
どこからともなく悲鳴が
いくつも聞こえてきた

キャッーーーーっ!!
助けてーーーっ!
だれかぁーーー!!!

誰かがあの殺人鬼にやられたに
違いない

”こうしてはいられない!
とにかく上のクラスに逃げよう!”

そう思い階段を上がっていく

足音をなるべく抑えて
身をかがめながら一階一階と
上に登って行く

先程まで真っ暗だった廊下とは違い
少し光が見えてきた

朝日でも登ってきたのかな?
それともただの蛍光灯かな?

と考えながら
ようやく教室のある階に到着した

その時、後ろで
恐ろしい気配を感じた

振り向かなくても分かる

殺人鬼だ

私は全速力で廊下を走る
この廊下の端に私のクラスがある

そこに行って鍵を閉めよう

そう考えながら走る廊下は
たがしかし、障害物レースのように
机と椅子が煩雑に投げ出されていた

蹴躓きながらも何とか教室に辿り着き
鍵を締め切った

クラスメートは各々に恐怖の表情を
浮かべながら

ドアを一点に見つめる

その教室の真ん中には
一つ空白の机があった

誰も座っていないその机には
細いガラス瓶が置かれていて
一輪の赤い花が生けられていた

“あれは何かな?”

そんな事を気にしながらも
殺人鬼がガタガタと揺らす
教室のドアを何とか押し込める

私の努力の甲斐あってか
ドアの揺れが収まった

良かったぁ

と息をついた途端
目の前に窓ガラスの破片が
飛び散った

パリーーーん!!

教室に設置されていた窓ガラスを
殺人鬼が蹴破って入ってきたのだ

呆気に取られている私を一瞥した
殺人鬼は静かにあの机へと向かった

そう
花の生けられた
あの机だ

その花にそっと手を添えて
血の涙を流していた

周りのクラスメートは
蛇に睨まれた蛙のように
身動き一つ取れない

殺人鬼は頬に流れた
赤い涙の跡を残しながら

その赤黒い瞳で各々の
クラスメートに近付いていく

お前らがアイツを殺したんだ!!
その罪を贖って貰う!!!!!!

そう叫びクラスメート一人一人に
水を浴びせかけ、ノートを千切り
火を放っていた

私は先程まで抑えていたドアに
もたれながら、その殺人鬼の
殺人鬼たる所以を脳内画像で見ていた

どうやら殺人鬼の唯一の友人が
このクラスメート達によって
散々な目に合わされていたようだ

そしてそのまま命を落とした

そんなビジョンが脳内で
勝手に再生されていた

ふと我に帰り
”何とかしなきゃ”と
思い立った私は教室を飛び出した

先生か誰か頼りになる人に
助けて貰おうと思ったのだ

しかし、、

飛び出した廊下の先で待っていたのは
あのむっちり系美女だった

殺人鬼とは異なる真紅のように強い
紅の瞳を持ちながら私にジリジリと近寄る

その彼女の手には
何本ものカッターナイフがあった

”まずい!”

そう感じた私は廊下をまた
走っていた

廊下の端だと思っていた教室だったが
どうやら廊下はまだ続いていたらしい

必死の思いで逃げる私だったが
怒涛の勢いで追いかけてくる
美女に捕まりそうになる

その手を回潜り(かいくぐり)
廊下に設置されていた窓ガラスを
自分の丸めた身体で割り
外に飛び出した

重力に引きずり込まれる感覚に抗いつつ
校舎の突起物を所々掴みながら
一階ずつ落ちていく  

”あんなに一生懸命登っていたのに
というか、あれ何階だったのかな?”

”今掴んでいる突起物が5つ目で
後は3つだから8階だったのかな?”

そんな事を考えながら
ひたすらに次に掴む突起物に神経を
尖らせて落ちていた

すると上から何かが降ってきた

ヒュン 
 ヒュン
  ヒュン

と降ってきたそれは
カッターナイフだった

見上げれば先程の美女が
般若のような顔立ちに変わり
私をめがけてカッターナイフを
振り下ろして来るではないか

その降っていく音から察するに
切れ味はなかなかに鋭いらしい


ひーっへへへ!!!
逃げられるかしら?


と奇声を上げている

カッターナイフの雨をすり抜けながら
残す階があと一つになった所で
左の手のひらにカッターナイフが
掠って(かすって)いく


ぎゃーーっははは!!
当たったわ!!!!!

もう逃げられないわよ!!


8階上にいるむっちり美女
もとい般若が嬉々として叫ぶ中
何とか地面に降り立つと、、

そこはゾンビやヴァンパイアだらけの
世界になっていた

空はほとんどか闇に覆われて
私は切られた左手を抑えながら走っていた

”掠っただけの割には出血の激しい
左手だなぁ”

と他人事のように考えながら

ペロペロ舐めるも出血が止まらず

”いっそ武器に出来ればよいのに”

と思っていたら自転車置き場に
辿り着いた

周りではうめき声や叫び声が聞こえる中
ひとまず自転車に乗ろうと
私は何故か思い立ち

目の前の自転車に乗る

しかし鍵がかかっていて使えない

焦っていると目の前にゾンビが出現して
私はとりあえず手元にあった
自転車を思いっきり投げ飛ばす

そのまま逆方向に走ると
別の自転車を見つける!

オンボロだけど鈴が肌色の
自転車が呼んでくれた気がしたので

勢いよく飛び乗り
漕いでいく

鍵も特になかったのか、
普通に漕ぐことが出来て一安心する

左手の出血は続くも、その血液は
左手全体を覆って行き
1つの大きい拳になろうとしていた

自転車のハンドルが掴みづらかったが
ひとまず全力で漕いでいると

風がふわりと吹いて
私は空を飛んでいた

驚きながら地上を見ると
建物は燃え、人が蠕き(うごめき)
世界は混沌と化していた

そのまま漕ぎ続けて
闇が一面に広がる空の裂け目にある
光の中を通り抜けて行くと

ドラゴンボールで登場していた
猫仙人に逢った

諸々の事情を説明すると
世界に通じる筒の中に
猫仙人は1滴の仙水を落としてくれた

チャポンという軽やかな音ともに
放射状に水の波紋が広がり

世界が浄化されていった

許可を貰って
世界に通じる筒を覗き込むと

青い海と青い空と白い雲と
キラキラ輝く世界が広がっていた

「有難う御座います!!」

と深々と頭を垂れてお礼を伝える私に

「にゃん」

と猫髭をさすりながら
笑ってくれていた

目が覚めた。リアルだ。。

はぁーーー。

思わず溜息が出る。

その私の声に反応して
彼がロフトを登ってくる

「どーしたの?
オレの肩を揉んでくれるの?」

”間抜けにゃ話を降ってくるにゃー”

と思いつつも彼に笑いながら
仕方なく肩を揉んであげる

「寝起きにゃんだけど、私○」

そう言う私に

「幸せーー」

とその大きな身体を
狼犬のように広げる

そんにゃ彼の姿に
癒やされて私の悪夢は
終わりを告げたのだ。

日常と非日常を放浪し、その節々で見つけた一場面や思いをお伝えします♪♪ そんな旅するkonekoを支えて貰えたなら幸せです🌈🐈 闇深ければ、光もまた強し!がモットーです〇