君が生まれた日

君が生まれた時、お母さんはすでに40代で、初産にして超がつく高齢出産だった。

慌てん坊の君は待ちきれなかったのか、お父さんとお母さんが結婚するのとほとんど同時に、大急ぎでお腹にやって来た。

子供が生まれたら、なかなか旅行にも行けなくなるかもしれないと思って、お腹にいる君と一緒に、飛行機に乗って国外旅行にも行った。
だけど君とは生後数ヶ月から、何度も飛行機に乗って、いろんな国へ行くことになったんだけどね。

君はお腹にいる時、よくお母さんのお腹をガンガン蹴っ飛ばしたから、お母さんは道端でうずくまって動けなくなったりした。

君が生まれる時、なかなかお腹から出てこられなくて、お母さんも苦しかった。
初めてお腹の外に出た時、君が最初に会ったのはお父さんで、それまでお母さんとずっと繋がれていた臍の緒を、記念にお父さんがハサミで切った。
君の顔を見ると、お父さんは、ありがとう、ありがとう、と言って泣いていた。

そのあと君は、すぐにお母さんのお腹の上に乗せられて、口をパクパクさせながら、まだ見えない目で、一生懸命おっぱいを探していたね。

日本では臍の緒を大切に取っておくので下さい、と助産婦さんにお願いしたら、先がクリップで止められた、異様に長い臍の緒を渡されて、家で干物みたいにぶら下げて乾かしていたら、ある日いつの間にか無くなっていた。
もしかして飼い猫が食べちゃったかも…と思うとお父さんにも言えず行方不明のまま。せっかく出産祝いにもらった臍の緒入れは、今も空っぽのまま。

あれから、あっという間に時は過ぎて、君はもうお母さんの背をとっくに追い越した。

だけど君は、まだまだ甘えん坊で、もう一回生まれて赤ちゃんになりたい、なんて言うけど、もうお母さんのお腹には戻れないんだ。

泣き虫で、わがままで、ひどい言葉で反抗したり、憎ったらしい時もある。
風邪をひいて寝込んでいるお母さんより、誕生日ケーキを作ってもらえなかったらどうしよう、と心配している君、ちょっとひどい。


だけど


生まれてきてくれて
ありがとう

お父さんとお母さんの元にきてくれて
ありがとう

お誕生日おめでとう