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命日

花を手向けよう、私の恋心に。
何の花にしようか。何色にしようか。花束にしようか。一輪の花にしようか。私らしくて良いかもしれない。

サヨナラ。恋心。
それは私にほんの少しの苦さだけ残して去っていった。
もう再び燃え上がることはない。
手向けた花の様に、しおしおと枯れていく。
私はその花に水をやることもなく枯れてゆくのを見守るだけ。
地に帰っていく私の恋心。いつ来るかも分からない春に向けて土を肥やす。


私の心は晴れ晴れしている。もう貴方に縛られなくていいんだと。
手向けた花とは対照的にピンッと張っている。
どうやらこの恋心はあまりにも養分が必要だったらしい。今の私には手に負えないほど。
身勝手に好きになって、身勝手に思い上がっては身勝手に落ち込んで。
どんどん私を蝕んでいく。
もう私が貴方を想い続けるために必要な養分は底を尽きてしまった。
この恋心を育む力が無くなってしまった。



今日、私の一つの分人が死ぬ。
秋晴れが気持ちいい今日を命日に選ぶ私は中々センスがいい。

貴方を思い続けていた私の分人はもう更新されることなく、私の中から消えてゆく。





今、この恋心は消え去る。
バイバイ、好きだった人。バイバイ、貴方を好きだった〈わたし〉。




今日は身勝手な恋の命日。





2023.11.05.    森野











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