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『幸福な生活』の中の「賭けられた女」のトリックについて語りたい

本日は百田尚樹さんの『幸福な生活』をご紹介します。

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実は長いこと積読になっていた本だったんですが、読んで衝撃を受けました。

「夫婦ミステリー短編小説集」と呼びたくなるようなドキドキハラハラな展開のお話ばかり。

長い本を読む気が起こらない日もありますよね。
そんな日の気分転換に、短編ってあるんだなと思いました。

昔から短編小説は読まないジャンルだったんですが、食わず嫌いだったかもしれません。

忙しい日は隙間時間にサクッと読めてすごく良い。

さて、この本はどれも「夫婦生活」という共通点がある19編から構成されているのですが、びっくりするような秘密が隠されていて、ギョッとします。

淡々と読んでいくと、だんだん雲行きが怪しくなっていきます。
流れが読めなくなったあたりで、「え?え?」と思いながら最後のページを開くと。

一言だけのセリフが突如として現れます。
あとは真っ白の余白。

茫然自失。
ぽかーん。

しばし、数秒の余韻ののち、

「怖っ!!」
「ヒェー」
「マジで!?」

と思わず叫びたくなるんです。
その1行だけの世界観にハマること必至。

「母の記憶」「ビデオレター」「そっくりさん」「ママの記憶」が結構好きです。

連れ添った夫婦でも秘密はある。
母は本当はどんな女性だったのか?
夫はどんな性癖を隠しているのか?

ラストに向かっての急転直下が、クセになります。

ここからは、ある短編がキツネにつままれるような読後感をもたらしたので、ご紹介したいと思います。

「賭けられた女」という作品があるのですが、とても不思議な物語でした。

人気作家の大門という男がホストを務めるパーティでのこと。

自慢話の大半はホストのギャンブルの話ばかりで、会場には鼻白む者もいた。
作家に挑発的な態度で登場するのが、フリー編集者の三宅である。

三宅は美しい妻である純子を同伴していた。
そして、なんと会場には三宅とは親密な関係のデリヘル嬢もいるのだが、妻の手前、おいそれとはべたべたできない。

純子の古風な言い回しに心の中で嘲笑し悪態をつきながらも、ことの成り行きを面白く見守っている。

大門は三宅の美しい妻を不躾に眺め、下心を隠そうとしない。

やがて大門は、三宅の挑発にのり、三宅の美しい妻と一夜を共にするために大門に差し出すことと、自ら所有する高級車をひきかえに賭けを持ち出す。

三宅はしぶしぶと賭けにのることになる。

そうして、会場の熱視線の中で行われるギャンブルの勝敗はいかに?

注目される最後の1行には何が書かれていたか?

最初読んだときは、きょとんとなりました。
「え?一体どういうこと?」

最後の1行を読んでも、頭の中にクエスチョンマークが飛びまくるだけです。

ページを最初から読み直し。
行きつ戻りつしながら、慎重に読み進めてやっと理解できました。

「何か」を見落としていると見抜けないトリックとなっています。

気になる方はぜひ読んでみてください。

大人のための、美しい秘密とトリックに魅了されてみてはいかがでしょうか。






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