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リピーター

 リピート率200パーセントのお店へ行った。

「200%ってことは、あと2回くることになるってことよね。私たち。ここに」

「そういうことだと思う」

「でもこんなところにあと2回、くるなんてことある?」

 僕はあいまいな返事をする。彼女の意見にはおおむね賛成だ。
 だが何があるかわからない。なにせリピート率200%なのだ。
 用心してかかるに越したことはない。

 そこはアメリカンカジュアルといった感じの、若い人向けの店だ。

 からんとドアを鳴らし、店に足を踏み入れる。

「いらっしゃいませ~、何名様ですか?」

 仕立ての良いシャツと黒エプロンを締めた年配の女性が接客に来る。
 客あしらいが板についているという感じ。僕としては安心する。
 彼女に案内されテーブルに着く。

 僕ら以外に客は一組。おそらく父親と男の子だ。
 まだ昼前だ。忙しいのは今からだろう。
 彼らはこれで何回目なのだろうなんて思ってしまう。

 僕と彼女は向かい合わせに座って、メニューを見た。

 ハンバーグ、オムレツ、ナポリタン。+300円でランチにすると、サラダバーにコーヒー付き。

 ファミレスを、この店独自の味付けにしたものという感じだ。値段は若干高い。

「私分かっちゃった」

 彼女は僕に顔を近づけて言う。

「たぶん、割引がいいのよ」

 次来ると三割引き、さらに次が半額、みたいなことになっているのではないか。

 僕はメニューを初めから終わりまでめくってみた。

「そんなことどこにも書かれてないと思うけど」

「じゃあ料理がおいしいの。頼みましょう」

 僕はうなづき、ハンバーグ、彼女はエビオムレツのランチセットをそれぞれ頼んだ。

 料理を待っていると、少しずつ客が入ってきた。会社の制服を着たОLさんのグループや、トラック運転手、外回りの営業、郵便局員みたいな人たちもいる。

 店は混雑してきた。

「お待ちどうさま~」

 料理がやってくる。

 うまそうだ。
 ハンバーグは写真で見たものより肉厚だ。それと負けないくらい厚切りのポテトとニンジン。
 実際うまい。だが別にファミレスで食べたっていい。
 彼女もうまそうに食べているが、そこまで感動している風には見えない。

 あるいは素材が違うのかもしれない。農薬を使ってない野菜とか、ストレスのない環境で育てられた牛とか。
 でもそんなこと、僕には分からない。何回か通えば、あれ、という感じで気づくのかもしれないが。

 僕らは黙々と料理を平らげた。

 間もなく食後のコーヒーが運ばれてきた。

 たしかにうまい。コンビニのコーヒーに勝るとも劣らない。

 ほぼ同時に飲み終え、それから少し落ち着いてから席を立つ。
 その頃には店は満席で、入口には列ができている。

 僕らはそれぞれお金を払って店を出た。

 うまかったが、行動範囲から少し離れている。また来ようとはなかなかならないだろう。
 彼女に尋ねる。

「そもそもここがリピート率200パーセントなんて、どこで知ったんだ?」

 彼女は人差し指の先を顎に当てる。

「忘れちゃった」

 僕は彼女を見た。
 彼女は僕を見ていた。

「もう一回、来こようか?」

 そんな言葉を口にしていた。
 そして口に出してみると、僕はなんだかそうしたかったような気がした。

「いや、それは断る」

 僕は目を細め、彼女は表情を変えない。

「べつな子と来なさいよ。何せリピート率200%なんだから」


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