炎の剣

 死んだ祖父の形見が炎の剣だった。
 彼は父ではなく、僕に剣の持ち主を指定した。

 注意書きによれば、鞘から出すと刀身が燃え出し、ドラゴンが来るらしい。
 でもなんだかバカになっていて、ちょっと抜いり、落としたり、とにかく強いショックを与えただけでもドラゴンがやって来るという。
 なんなら焼き肉をしてても来るという。

 どうせ炎もドラゴンも嘘だと思って抜いてみたら、刀身から出た火が天井を燃やした。僕は慌てて剣を鞘に戻した。

 このことで家族に、僕には友だちがいないことがばれた。
 こんなすごい物を手に入れたのに、誰にも見せないで家で一人で開けるなんて、もうあんたはなにやってんの!というようなことを母が言った。

 たぶんそんなような言葉だったのだろう。
 風がすごくてうまく聞き取れないのだ。
 僕らは今ドラゴンの背に乗っている。

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