むげん

 無限について書かれた論文が面白い。

 僕が読んで特に面白かったのは、「これ無限に食べれる」とか、「これなら無限にやってられる」みたいな無限についての研究だ。

 研究者はその無限を取り出すことに成功した。
 まさに厳密科学という感じである。

 その無限の中に入って中を旅するのだ。

 フィールドワーク。

 研究者はときとして旅人になる。

 だが意外なことに、彼らの無限はどれもアパート一部屋にも満たないせまさだったらしい。

 結局彼は、人が言う無限とは部屋一畳分程度の、そんな広さなのだと、そう締めくくっていた。

 まあ確かに畳一畳ほど広げられたグミやどら焼きなんて、その場で全部食べることなんてできない。

 それで次に彼は、漫画家や小説家、職人なんかの無限を取り出した。

 彼らはこれ無限に書けるとか、無限にできるなんてことは言わない。

 これがとてつもなく広かったらしい。

 たった三人の調査だった。だが無限の広さを確認するまで30年を費やした。
 彼は無限界の伊能忠敬と言われている。

「どうして無限の空間を作りだすことができたのです?」

 彼は彼らにそんな質問をした。

「そんなの知らない。無限なんて考えたこともない」

 それで彼は、思いついて自分の無限の中に入ってみた。

 彼は消息を絶った。

 自分の無限を旅しているようだった。

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