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もりおのブックレビュー(6月)

こんにちは,もりおです。
今回は,6月に読んだ本の中から,特に面白いと感じたオススメ本を3冊紹介していきたいと思います。

オススメ本①『10年後に食える仕事 食えない仕事』

1冊目はこちら。
 近年,AIをはじめとするIT技術の急速な発展と,それによる働き方・雇用のあり方の変化がニュースで取り上げられています。
 この本では,IT技術の発展がさらに加速していく2020年からの10年間で,「AIやロボットに代替される仕事」と「人間にしかできない仕事」がどのように分かれていくのかを書いています。
 個人的な興味からこの手の未来予測本は割とよく読むのですが,

①機械が強い領域 ↔️ 人間が強い領域
②知識集約的 ↔️ 技能集約的

という2つの軸で様々な職業を5つの領域に分けて未来を予測する手法は納得度の高いものでした。また,技術の発展だけでなく,技術が現実社会に浸透する際の「技術の実用化」「コスト」「既得権益」という3つの壁も考慮した考察を行っているため,かなり現実味を持って読むことができます。

 著者の渡邉正裕さんは日経新聞の記者として活躍後,IBMのコンサルタントを経て「My News Japan」という,現在の企業口コミサイトの先駆けと言えるようなウェブメディアを立ち上げられた方です。
 このウェブメディアで様々な企業や職業の方から現場のリアルな情報を取材し続けた経験が,現実的な未来観の醸成に繋がっているものと思われます。
 社会人はもちろん,進路を考える大学生・中高生にも是非お勧めしたい一冊です。

オススメ本②『賃上げ立国論』

2冊目はこちら。
 平成の30年間を通して日本が「給料の安い国」になったという現実を緻密なデータ分析で明らかにし,日本を諸外国に負けない高賃金・高生産性の国に生まれ変わらせるための施策を冷静に論じていきます。

 私は労働政策系の本を読むのがほぼ初めてで,著者の山田久さんが日本総研の副理事を務めておられることもあって「難し過ぎるのでは」と戦々恐々で手に取ったのですが,その予測は良い方向に裏切られました。
 全編にわたって豊富なデータを用いつつも平易な説明が為されていて,専門家でなくても日本の雇用環境を取り巻く現状が理解できるようになっています。

 この本では,日本と同じく少子高齢化の進む先進国でありながら,高い生産性と給与伸び率を維持するスウェーデンの社会経済モデルを一つの参考として提示し,さらにそれを日本で現実化するためのボトルネックとその乗り越え方を説いています。
 かなり論文調の本ではありますが,先述の通り内容は分かりやすく書かれているので,公共政策分野に関心のある大学生の方などにオススメです。

オススメ本③『営繕かるかや怪異譚』

3冊目はこちら。
 最近,『十二国記』シリーズで18年ぶりの新刊を出して話題をさらった小野不由美さんが現在,怪談専門誌『幽』にて連載中の小説シリーズ『営繕かるかや怪異譚』です。
 この本は,様々な家屋とそこに居住する人の身に起こる怪異を描く短編集です。

・きちんと閉めたはずなのにいつも少しだけ開く襖
・庭いじりが好きな夫がうっかり祠を壊してから庭に出るようになった何か
・車庫で車を出すときだけ現れる男の子 など

 個人的に和風ホラー小説が好きなのでよく読むのですが,このシリーズの特徴は,「主人公が驚くほど地味な扱い」であることです。
 タイトルにもなっている「営繕かるかや」の若い主人である尾端は,この手の小説の主人公にありがちな霊能力は一切持っておらず,起こる怪異の原因を突き止めて霊と対決するようなことはありません。あくまで「営繕屋」の仕事の域を出ず,家の一部に手を入れて作り替えることで怪異と正面衝突しないで済むように対症療法を行うだけです。
 起こる怪異も,地方の古い城下町ならこのような話もあり得るのではないかというリアルなものばかりで,小野さんの巧みな場面描写も相まって臨場感が半端ではありません。

 私がこの本を読んだきっかけは,小野さんの別のホラー小説『ゴーストハント』シリーズを中高生の頃に読んでどハマりしたからですが,『十二国記』ファンの方でも,小野さんがリアル路線だとどんな作品を書くのか,読んでみて損は無いはずです。




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