AKBは夢を追いかける少女たちが居場所をさがすステージだ。
アイドル好きにどんなイメージがあるだろうか。
「AKBが好き」
そう伝えると、返ってくる反応はさまざまだ。ただ、大体あまりポジティブなものではない。
それもそうだ。いまのAKBは、最新シングル「サステナブル」が37作連続ミリオンセラーを超えて、じつはまだまだCDセールスのトップを走っている。なんて話は、みんな知らない。きっとオワコンなイメージなんだ。
黄金期のメンバーは次々に卒業してしまい、2019年には長年つづいたレギュラー番組もどんどんなくなってしまった。
AKBINGO!(2008年1月〜2019年9月)、AKB48のオールナイトニッポン(2010年4月〜2019年3月)、AKB48 SHOW!(2013年10月〜2019年3月)…有吉AKB共和国も週刊AKBもだいすきだったよ。
風物詩のようになり、地上波のゴールデンタイムに中継されていた総選挙もジャンケン大会も、今年はない。年初には、世間のみなさんから白い目で見られるような、倫理観を問われるような事件も起きた。
AKBは胸をはって「ファンです」とは言いづらいブランドになりつつある。AKBの救世主と言われていた、期待の大型新人が突然卒業してしまうことも発表された。最近、ほんとにいいニュースがない。
でも、そんなことはわかっていて、それでも応援しているんだ。
「AKBが好き」と話すと「どこが好きなの?」と必ず問われる質問へ、いつもうまく言語化できていなかったモヤモヤをこのnoteで解消してみたい。と同時に、今まで興味のなかったひとに、新しい見方を提示できたらいいなと思っている。
わたしにとって、AKBの好きなところは「夢を追いかける人のためのプラットフォーム」であることだ。組織に翻弄されながらも挫折をしたり、成長して自分の居場所を見つけていく少女たちのストーリーだ。
それでも栄枯盛衰をくりかえす組織や、それぞれのメンバーを通じて「ここにいたこと」の意味とは?「努力はかならず報われる」のか?と目が離せないのだ。センターになるだけがてっぺんじゃなくて、それぞれの個性を輝かせていると、誰かが見つけてチャンスを与えてくれるさまを見てきた。
AKBのことがどれくらい好きか?
秋葉原の劇場には何度も足を運び、握手会も何度か通い、大箱ライブにはかならず行く。レギュラー番組は毎週録画して見ていたし、歌番組もチェックする。好きなメンバーの表情をきちんと確認するために、最低3回は見返す。総選挙のような重要なイベントには、家族を巻き込みながら、泊まりで遠征するくらいは好きである。
AKBにハマったのは、社会人生活にもすっかり慣れた、2010年の春。ポニーテールとシュシュが席巻していたあの頃だ。ヲタク界隈でいう「ポニシュ新規」で、決して早い方ではない。
「束ねた長い髪 水玉のシュシュ」と歌う前田敦子の、ちょっとしゃがれた声が好きだった。「恋のしっぽは捕まえられない」とじゃれあう高橋みなみと大島優子を見て、なにこのかわいい生き物、と思った。
彼女たちのミュージックビデオや出演する音楽番組、秋葉原の劇場のライブ映像を追いかけて、総選挙のスピーチも第一回から見返して、完全にハマった。
巨大組織「AKBグループ」で自分のポジションを見つけた人たち
まず前提知識をいくつか共有してみる。
AKBはグループ全体で、現役メンバーが600人以上。AKB48単体でも100人以上いる。学校の同級生くらい人数がいるから「あの子いたよね」「話したことない(むしろ知らない)」がいても、不思議ではないレベル。
今までCD以外にも劇場公演だけで歌われたものも合わせると、楽曲は1200ちかく存在する。AKB48以外には国内に5グループ(名古屋、大阪、福岡、新潟、瀬戸内)、国外は東南アジア中心に9グループを擁して、超グローバル企業の様相をおびている。
1:リーダー像は1つじゃない
この大所帯、運営会社がそれぞれ異なるのがまたややこしポイント。メンバー全体を統率して、運営サイドとのコミュニケーションを図るのが「総監督」で、現在は3代目総監督に「向井地美音」が就任している。グループの置かれたフェーズによって、総監督が見せる姿がちがうことも印象的だ。
初代総監督、高橋みなみは、わたしから見ると「昭和のリーダー」だった。スター揃いの個性的な初期メンバーたちを圧倒的な人間力とストイックな姿勢で、見事にまとめていた。仲間たちを叱咤激励しながら、細やかにコミュニケーションもとる。メンバーの些細な変化にもよく気がついて声をかけるから、元気のない子には「飲み行くか」と言い出しそうな感じだ。そのままズバリ「リーダー論」も出版している。
二代目の横山由依は、本人も語っているとおり、高橋みなみとはまったくタイプが違う。カリスマ性で引っ張るのではなく、素直に自分のできること、できないことをさらけ出して、得意なメンバーにそれぞれ補完してもらう関係性をつくっていた。
この春から総監督を引き継いだ三代目の向井地美音は、原点回帰を図っているように見える。彼女は生粋のAKBオタクで、抜群のルックスと子役経験(篠原涼子の娘役で、アンフェアにも出演)から「第二の大島優子」と加入直後から人気をあつめていた。
そんな彼女がセンターを目指すのでも自分の夢を追い求めるのでもなく、グループを背負ってたつ覚悟を決めた。二代目総監督の意志をつぎ、小さな会場をまわる「全国ツアー」を実行にうつしたのだから、もう応援しちゃう!という気持ちが高まるのである。
2:異動や転勤で開花する才能
メンバーにはグループ間の異動や兼任制度があり「ちょっとあの支社を盛り上げてきてよ」「本社で経験積んでこいよ」「海外転勤よろしく」という会社のような展開が往々にして起こる。また「組閣」の名のもとに、おなじグループ内にあるチーム編成が変わり、それぞれのキャプテンが任命される。
スキャンダルが発覚して「左遷」と揶揄されながらも、そのプロデュース能力を開花させた指原莉乃を筆頭に、新天地を得たことで活躍したメンバーは多い。
日本でもそれなりに活躍していたが、海外転勤でむかったJKT(ジャカルタ)で人気を爆発させ、いまやTwitterのフォロワーは140万人をこえる仲川遥香。
くすぶっているように見えた時期を経て、SKE(栄)へ異動して、名古屋のメンバーにもファンにも愛されて、デビュー9年目の26歳ではじめて総選挙の選抜にランクインした大場美奈。
そう繰り返し、見えぬ未来への挑戦を歌ってきたAKB。アウェイな場所でファンからもメンバーからも信頼を獲得して、自分のあらたな強みをみつけた者にチャンスの順番が回ってくる。
3:そこで技をみがきつづけることの意味
ずっと追いかけて見ていると「ここにいたことの意味」や「努力は報われるのか」に思いをはせずにはいられない場面に遭遇する。
会社ともよく似ているが…超期待の新人が、周囲の期待をよそにすぐ辞めてしまう。反対に、最初はそこまで注目されていなかったが、コツコツと仕事の経験をつむことで、ふとした瞬間から花開く場合もある。
例えば「太田三姉妹(太田プロ所属のAKBメンバー)」と呼ばれて、前田敦子、大島優子とならんでフィーチャーされていた小野恵令奈。出世の登竜門でしられる「渚のチェリー」ではセンターをつとめ、グループ初のシングルCDに収録されるソロ曲も与えられ、抜群のアイドル性で人気を博していたが、AKBが大ブレイクした直後、ほどなくして卒業してしまった。
ほかにも将来を期待されて、加入直後からセンターポジションを任されたり、ドラマ出演のチャンスを与えられたような多くのメンバーが、早々と卒業していった。
一方、長く在籍したことで開花した例もある。
加入直後から抜擢をされていた「宮崎美穂」。指原莉乃と同期で「次世代エース」と推されて、エリート街道を歩んでいた。しかし、その後、どん底ともいえる低迷期が続いたが、いまは見事な復活を遂げている。勉強をつづけた韓国語を活かした仕事も増えて、後輩たちからの信頼も厚い。
もう1人。いまやグループの顔になりつつある「岡田奈々」。「三銃士」と呼ばれて同期3人で推されていたが、つねにその中では3番手だった。彼女はなにごともマジメに取り組む姿勢を貫き、すばらしいパフォーマンスとともにマジメさが個性として昇華されている。
日の目が当たらないときも自分の技を磨きつづければ、いつか花開くときがくる。努力の方向性さえ間違えなければ。そんなことを教えてもらっている。
ちなみに、わたしは一度転職をしたのだが、強い動機になったのが「挑戦し続ける自分でありたい」ということだった。まったく同じタイミングで、わたしが推していた「高橋朱里」が、まったく同じ理由でAKB48からの卒業を発表した。
4:独自のポジションを確立するメンバーたち
AKBでの成功は、センターのてっぺんを取るだけではない。それぞれの個性を活かして、花を開かせたメンバーがたくさんいる。
相手のニーズを読み取って自分を客観視する天才、「小嶋陽菜」。
バラエティの道で、抜群の知名度をほこる「大家志津香」。
憲法アイドルから政治タレントに転身した「内山奈月(現在は芸能界を引退)」。
身内だけのアイドルドラマでも圧倒的な演技力を見せていた、いまや人気女優の「川栄李奈」。
SHOWROOMの配信をつづけて、その名を知られることになった朝5時半の女「大西桃香」。
総選挙の出馬を固辞しつづけて、劇場の出演回数が4年連続1位の独自ポジションを築いたシアターの女神、「村山彩希」。
AKBは「夢をかなえる少女たちを応援する場所」
あまり知られていないが、AKB48グループのメンバーで芸能事務所に所属しているのは、ほんの一握りだ。AKB48であれば、ほとんどのメンバーは運営会社のAKSに所属している。秋葉原の劇場にたち、握手会に参加して、チャンスの順番がまわってくる機会を待っている。
たとえばAKBのエリートコース(な印象のある)太田プロには前田敦子、大島優子、指原莉乃、北原里英、横山由依、入山杏奈、中井りか…とそうそうたるメンバーが所属している。
地道にがんばって、運が良ければ芸能事務所からのスカウトがあり、正式な所属が決まるシステムなのだ。それぞれのメンバー特性にあった事務所から声がかかるといいなと強く思っている。
演歌歌手を目指していた「岩佐美咲」は、徳間ジャパンに移籍したり(最新曲、いい感じ!応援!)。
最近だとバラエティメンなHKT48の「村重杏奈」が、鈴木奈々や須田亜香里も所属するツインプラネットに移籍した。しかもこの移籍は、さっしーこと指原莉乃が大プッシュして決まったという、これまたヲタ泣かせなエピソードつき。
芸能界で成功するだけが、幸せでもない。今年発売された、元SDN48メンバー大木亜希子さんの著書「アイドル、やめました。」では、卒業後のメンバーたちがどんな葛藤をかかえながら、あたらしい道を踏み出したのかが詳細につづられている。これも、ぜひ読んでほしい。
AKBと夢とnote
AKBのコンセプト「会いに行けるアイドル」は有名だけど、もう1つ、明言はされていないものの「夢をおいかける少女たちを応援する仕組み」であることは間違いない。
たとえば…「夢」はAKB の歌詞における頻出ワードだ。
わたしは、自分の仕事とAKBを重ねて考えることが増えた。
現在、この記事を書いているnoteで広報・PRの仕事をしている。ぜんぜん共感してもらえないのだけど、常々「noteとAKBはよく似ている」と感じている。
クリエイターは自分が得意、もしくは好きな表現手段をえらんで、note上で自分のペースで創作活動をしている。いいコンテンツを出していると、誰かが見つけてくれる場所がnoteだ。
クリエイターの活動をファンが応援して、注目を集めると、書籍化につながったり、映像化されたり、仕事のオファーが増えたり。メディアプラットフォームと謳いつつ「夢のプラットフォーム」なんだよなとつくづく思っている。
クリエイターが活躍しはじめると「ワシが育てた」と言いたい昔から応援していた人たちが、さらに応援してくれる仕組み。あったかくて、大好きだ。
ここまで「夢」を連呼しておきながら白状すると、わたしには明確な夢がない。特に20代は、それがコンプレックスだったときもあった。やりたいことがハッキリしている友人がまぶしくて、うらやましかった。
でもAKBではどちらも許容されている。明確な夢に向けてまっしぐらな人もいれば、活動をしながらゆるやかに自分の針路を決める人もいる。幸せの定義も人それぞれ。それでいい。そう教えてもらった。
わたしはこれからも応援しつづける。noteのクリエイターも、AKBのメンバーも。
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