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"負けた"という事実は同じでも

「こんなこともあるのか。」

8月6日(金)夜に行われた男子400mリレーを見て、日本中の多くの人がそう思ったことだろう。
競技終了後、テレビ画面右上には「日本 途中棄権」の文字。筆者もテレビに貼りついて応援していただけに、にわかに信じられなかった。


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開始10秒くらいの出来事だった。第一走者の多田選手から第二走者の山縣選手に渡るはずのバトンが、渡らないまま”テイクオーバーゾーン”(バトンの受け渡しが出来る範囲)を超えてしまった。

その瞬間、多田選手と山縣選手は失速し走るのをやめた。同時に実況が「バトンが渡らなかった~!」と残念そうに言葉を発する。

第3走桐生選手、4走小池選手は本気で走る他国の選手たちを横目に、回ってこないバトンを方を見つめ、その場で立ち尽くすしかなかった。


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報道では「メダル獲得」というおめでたい情報が目立つ。コロナやその他の暗いニュースによる精神的ダメージを和らげる鎮痛剤の役割しているかのよう。しかしその一方で、勝負に敗れ去るアスリートもたくさんいる。

インタビューに対し「悔しい」と涙する選手。「悔いはない」と清々しく語る選手。"負けた"という事実は同じでも、この辺りでそれぞれの個性や性格が出る。

これは周囲の環境や期待度によって作られる性格かなと思う。「メダル取らなきゃ非国民」という国もあれば「オリンピック”出場”おめでとう!」と”出場”自体を称える国もある。

日本は”メダルを取れなかった選手”を攻める性格の人は少ない。ただオリンピックに限らず「史上最速」だの「歴史が変わる瞬間」だの、大げさに取り上げ過ぎでは?と感じる時が往々にしてある。


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オリンピックに備えて4年間、いやそれ以上の時間と努力を費やしてきた事だろう。開催国日本を代表する選手という重圧を背負い、メダルを一心に目指し、”攻めの姿勢”で挑戦した選手たちにとって、順位すらつかないという結果に悔いが残らないわけがない。

選手たちの心境はとても想像出来るものではないが、まずはお疲れ様という言葉で労いたい。あと、オリンピックという夢の舞台に立てないアスリートの方が多いわけだし、この舞台でプレーしたという事実を存分に誇ってほしい。

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