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特許取得のポイントはここ!―—近刊『実例からわかる 特許化の要点』はじめに公開

2022年11月下旬発行予定の新刊書籍、『実例からわかる 特許化の要点』のご紹介です。
同書の「はじめに」を、発行に先駆けて公開します。



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はじめに
特許を取得するにはいろいろと手続きがあり、すべての条件をクリアしていく必要がありますが、そのなかでも、発明者にとってとくに重要なことはなにかといえば、それは、発明に「新規性」と「進歩性」をもたせることでしょう。

新規性とは、特許出願時にあなたの発明が知られていないこと、進歩性とは、同じ分野の技術者が既存の技術からあなたの発明を容易に思い付かないこと、です。一見かんたんそうに思えますが、経験がないとこれが案外難しいようです。実際、申請した発明が拒絶される理由の9割は進歩性の欠如ともいわれています。そのように、重要な「新規性」と「進歩性」ですが、どうすればそれらを示せるかは、多くの書籍ではあまり深く説明されていません。進歩性は、既存の技術との相違点や有利な点が明確になるように、発明の組み立て方や捉え方を変えたり、新たな要素を追加したりすることで仕立てることができます。

本書では、発明から特許出願後までの、発明者が押さえておきたいポイントを説明していきますが、とくに特許出願前に「新規性」と「進歩性」をどのようにして見出すかに焦点をあてて解説していきます。とりわけ第6章では、どのように進歩性を向上させるかを具体例で説明するとともに、実際の特許のどこが進歩性として認められているかを示しますので、実務に参考になると思います。また、権利範囲の決め方についても、例を使って解説しますので、これも実務に活かしてもらえればと思います。なお、本書では、さまざまな分野の実際の特許例を挙げていますが、ポイントがわかりやすいものばかりですので、専門分野が違っても理解できると思います。

私はこれまで30年以上、弁理士として知的財産業務を行うとともに、高校生や大学生、企業の研究者や開発者、日本および海外の知的財産の分野に従事している方々に、セミナーや授業を行ってきましたが、本書で説明する内容をもとに、多くの方が特許を取得できています。ですので、本書を通じてより多くの方々が特許取得を目指していただければ幸いです。

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著:川北 喜十郎(川北国際特許事務所)

発明から出願後までの、発明者が押さえておきたいポイントがよくわかる
拒絶理由の90%ともいわれる重要な要件を、どう判断し、どうクリアするか

 
◎●◎とくに重要なポイントはここ◎●◎
①新規性(知られていない)
ポイントは、「発明を要素に分けること」。審査で土台となるこの考え方を実例をもとに説明し、またこの考え方を使って取りこぼしの少ない先行技術調査の仕方を解説します。
 
②進歩性(容易に思いつかない)
ポイントは、「発明の構成要素どうしの関係付け要素」「発明の新たな課題を見つけ、解決すること」。段ボールカッターや太陽電池のモニタリング方法などの例を示し、具体的にどのようにクリアするかを解説します。
 
③権利範囲(どのように決めるか)
書類に書くこと、書かなくてよいことの整理の仕方と、成果物(発明)からその概念を抽出して権利範囲を広げる方法を、コピー機の操作パネルや洗濯ばさみの例を使って解説します。

【目次】
1 特許の基本
 
1.1 特許とは
 (1)特許権
 (2)発明者と出願人
 (3)発明が特許になるまでの流れ
 (4)特許の力
 1.2 特許の活用方法
 (1)研究開発者による活用とメリット
 (2)個人や小規模企業による活用

2 特許における発明
 2.1 発明の条件
 (1)自然法則を利用していること
    特許例:自然法則のポイントは「もの」の使用と技術的意義
    ・ステーキの提供システム(特許第5946491号・(株)ペッパーフードサービス)
 (2)技術的思想の創作であること
    発明例:発見は発明につながる
    ・導電性ポリアセチレンフィルム(白川英樹博士:ノーベル化学賞)
    ・緑色蛍光タンパク質(下村脩博士:ノーベル化学賞)
    ・エバーメクチン(大村智博士:ノーベル生理学・医学賞)
 (3)発明の種類
 2.2 発明の構成要素
 (1)構成要素
    特許例:構成要素で考える
    ・iPS細胞の製造方法(特許第5098028号・(大)京都大学)
    ・青色発光ダイオード結晶膜の成長方法(特許第2628404号・日亜化学工業(株))
 (2)要素どうしの関係
    特許例:要素どうしの関係は特許化のポイント
    ・トッポの製造方法(特許第2894946号・(株)ロッテ)
    ・リファの美容ローラ(特許第6480913号・(株)MTG)
 (3)技術分野別の特徴
 2.3 課題と効果
 (1)発明が解決する課題
    特許例:潜在的な課題が特許化のポイント
    ・折り畳みマウス(特許第6232531号)
    ・コンパクト型穴あけパンチ(特許第6630010号)
 (2)発明による効果
 2.4 発明=思想
 (1)大量生産できる
 (2)共有できる
 (3)権利範囲は表現により変化する

3 出願書類の基本
 3.1 出願書類とは
 (1)特許請求の範囲~権利範囲を決める
    発明例:権利範囲の表し方
    ・コピー機の操作パネル(例)
 (2)明細書~権利範囲を詳しく説明する
 (3)要約書~概要を簡潔にまとめる
 (4)図面~明細書をわかりやすくする
 3.2 記載要件~明細書の書き方のルール
 (1)サポート要件
 (2)当業者実施要件
 3.3 補正を前提としてまとめる

4 新規性と進歩性
 4.1 審査の流れ
 4.2 新規性
 (1)新規性とは
 (2)新規性があるかないか
 4.3進歩性
 (1)進歩性とは
 (2)進歩性があるかないか
    特許例:阻害要因による拒絶の解消
    ・エレキギター(特許第6743016号・エアロ3ギターズ)
    ・特許例単なる寄せ集めにならない組み合わせ
    ・美容ローラー(特許第5570385号・ファイテン(株))

5 先行技術調査
 5.1 先行技術調査とは
 5.2 構成要素の確認
 5.3 実際の調査
 (1)調査の基本は要素
 (2)調査対象は公開特許公報と特許公報
 (3)キーワード検索と分類による検索
 5.4 先行技術があったときの対処
 (1)同じ発明があったとき
 (2)部分的に同じ発明があったとき
 (3)類似の発明があったとき

6 進歩性の出し方
 6.1 有利な効果
 (1)異質な効果
    特許例:「課題→解決」を繰り返せば進歩性は向上する
    ・多機能段ボールカッター(特許第6006450号)
    ・弦楽器のための松脂塗布装置(特許第6383904号)
 (2)同質で顕著な効果
    特許例:要素を置換して同質で顕著な効果を出す
    光ファイバコネクタに用いるフェルールの製造方法(特許第3308266号)
    特許例:要素を追加して同質で顕著な効果を出す
    ・風レンズ(特許第3621975号・(株)産学連携機構九州)
 6.2 要素どうしの関係から生まれる進歩性
 (1)関係付け要素
 (2)技術分野別の関係付け要素
    特許例:化学系の関係付け要素
    ・半導体基板研磨用組成物1(特許第6797665号・花王(株))
    ・半導体基板研磨用組成物2(特許第6730254号・日揮触媒化成(株))
    特許例:材料・デバイス系の関係付け要素
    ・光学位相差部材(特許第6849657号・ENEOS(株))
    ・摺動部材(特許第6063698号・ミネベア(株))
    ・特許例:機械・装置系の関係付け要素
    ・タイルカーペット解体装置(特許第6957565号・(株)明光商会など)
    ・カレンダー保持具(特許第6994270号)
    特許例:コンピュータ制御・ソフトウエア系の関係付け要素
    ・太陽電池モジュールのモニタリング方法(特許第6414721号・(株)スマートエナジーサービスなど)
 6.3 用途・ニーズから生まれる進歩性
 (1)用途に特化させて生まれる進歩性
    特許例:用途は進歩性になる
    ・高所用の掃除機(特許第5865700号・(株)東芝)
    ・エスカレータ踏段用の掃除機(特許第5744139号・東芝エレベータ(株))
    ・グルーミングしながら毛を吸い取る掃除機(特許第5318036号・ダイソンテクノロジーリミテッド)
 (2)特殊なニーズから生まれる進歩性
    特許例:特殊なニーズに応えれば進歩性になる
    ・バドミントン用練習ターゲット(特許第6194133号)
    ・パンの自動レジ用の識別装置(特許第5510924号・(株)ブレイン)
    ・回転寿司の鮮度管理用システム(特許第3607253号・(株)あきんどスシロー)
 (3)ビジネスニーズから生まれる進歩性
    特許例:ビジネスモデル特許
    ・求職者と雇用者間のマッチング支援サーバ(特許第6474089号・(株)タイミー)
    ・クラウドコンピューティングによる会計処理方法(特許第5503795号・freee(株))
    ・機械学習による会計処理方法(特許第6511477号・(株)マネーフォワード)

7 権利範囲の決め方
 7.1 権利範囲の表し方
 (1)書くこと,書かなくてよいこと
    発明・特許例:書くこと,書かなくてよいこと
    ・コピー機の操作パネル(例)
    ・修正テープ(特許第1820418号(特公平03-011639)・シードゴム工業(株))
 (2)関連する発明は一つにまとめる
 7.2 どこまでが権利範囲か
  演習1:「トッポの製造方法」の権利範囲
  演習2:充電用コネクタの権利範囲
 7.3 権利範囲を広くする方法
  演習3:洗濯ばさみの発明の権利範囲を広くする

8 出願後にする重要なこと
 8.1 改良発明の出願
 (1)元の発明の出願に内容を追加できる
    特許例:改良発明の出願
    ・ショルダーストラップ(特許第3359627号)
 (2)複数の出願をまとめることができる
 8.2 外国出願
 8.3 拒絶理由への対処
 (1)拒絶理由に対してできること
 (2)補正を前提とした権利範囲のまとめ方
 8.4 分割出願

索引


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