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【読書】物理とエロス

群像劇であり、ミステリーである。そして、官能小説かと思わされるエロティック表現。一部、残虐性を含む。混沌としたストーリーの中で、作者が描きたかったものは何だろう?

消えた恋人を探す男

楢崎は、姿を消した恋人・立花涼子を探してとある宗教団体に近づいた。だがそこは宗教団体だと言われているだけの場所で、松尾という不思議な魅力を持つ老人を中心に人々が交流している屋敷だった。探し人の立花涼子はその松尾に詐欺を働いた宗教団体、教団Xと呼ばれる組織の人間だという。楢崎は松尾のもとと教団Xをいったりきたりしながら、多数の人間の思惑の絡まる渦に巻き込まれていく。

人間とは素粒子の集合体である

作中に何度も出てくる表現だが、なんのこっちゃという話である。原子、分子の集合体だと言われたらまだ「あぁ…確かにね」ぐらいに思えるかもしれないが、素粒子とはなんぞや?私もこの本を読む前に初心者向け物理の本に偶然少し目を通していたので、素粒子だクォークだの、陽子だ電子だ中性子だのと並べ立てられてもなんとか世界観に入っていけたのだが、そもそもこういう話にアレルギーのある人にはハードルが高い。ただ、それを松尾という老人のセリフを通して読むと不思議とそれなりに面白い話として読めるのが、ある種妙技ともいえる。

教団Xはハーレム集団

上述した通り、まるで官能小説のような性的表現が随所に出てくる。ぶっちゃけ教団Xは毎週ハーレムパーティを開く情欲を肯定した教団だ。随分ソフトに言いまわしてはいるが。作者がそこに表現したかったものがどのようなものなのか、そこが私には理解が難しかった。女性が犯されたり多数の男女が乱れ混ざりあう表現である必要があったのか。これはだれかわかる人がいたら教えてほしいぐらい。

最終的にストーリーは急旋回するように着地して終わる。結局のところ、誰の思惑勝ちなのか…。


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