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週末モーニング難民になります

おそらく80年代か90年代はじめのころのアメリカ映画だったと思う。朝のダイナー(アメリカの簡易食堂)でウエイトレスが常連客に「いつものでいい?○○と○○ね」と確認してオーダーをメモする。メモしながら常連客と二言三言話をする。そんなシーンを含む映画だった。

地元スーパーの駐車場敷地内に喫茶店がある。山小屋のような佇まいだ。朝7時からオープンし、昼前までは、コーヒーを注文するとトーストとゆで卵がサービスで付いた。いわゆるモーニングである。追加料金を払えば、サラダを追加できたり、サンドイッチやワッフルがつくコースもあった。

私も週末よく使った。7時オープンで8時過ぎには席が空くのを待つこともあった。ネルドリップで淹れるコーヒーは大変美味しかった。山小屋のようなお店は若干暗めだった。時間によって窓からテーブルに陽射しが入り、それが心地よかった。ほぼ黒といっていい柱にはネルドリップされたコーヒーの香りが染みこんでいるかのように思え、僕としてそれもとても心地よかった。

昼間はランチメニューもあった。メニューにはナポリタンとBLTサンドイッチもあった。このふたつ、自分が喫茶店を開くのなら必ずメニューにしたいものだ。両方ともたいへんおいしかった。

朝早い時間帯にもいろいろなお客さんがいた。シニア層が多く、お子様が独立されたくらいのカップルや、町内のおじさんたちおばさんたちグループ。おじいちゃんおばあちゃんを含んだ3世代グループなど。

そのなかのいくつかは常連客のようだった。そういったお客さんに、店員は「旦那さんはサンドイッチにアメリカン、奥さんはモーニングプレートにアマレロブレンドね」といった感じで、メニューをとるというより確認して、二言三言世間話をする場面をたまに見た。まさに映画で観たアメリカのダイナーを彷彿とさせた。それもとても心地よく感じた。

そんなお店が今月いっぱいで閉店するそうだ。同じ敷地のスーパーも閉店して、ほかのショッピング施設ができるそうだ。全国規模の大手スーパーでなく、地元スーパーの駐車場敷地内にあることで、一層僕はその喫茶店に温かみを感じていた。

あのような雰囲気のお店は近所にはない。同じ会社が運営する喫茶店で似たようなお店はある。しかしハイキングする低山とは方向が逆になる。時間も倍くらいかかる。モーニングを楽しむことができなくなる常連さんもたくさんいることだろう。僕もそのひとりだ。



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