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『寝て稼ぐ「SleeFi」のLGGさん分析を分析してみる』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.8.21

■動画紹介:【SleeFi】 新しいBCG Close βが開始された睡眠版STEPN SleeFi調査レポートを読み解いてみた!

寝ているだけで稼げるSleep to Earnの新サービス「SleeFi」が登場です。
YouTube「IDOFIREチャンネル」さんがさっそく解説動画をアップされています。

この動画ではSleeFiを紹介するのに、ブロックチェーンゲームの分析を専門にやられているLCA GAME GUILD、略してLGGさんのサービス分析レポートをもとに解説しているのが非常にユニークな動画です。

トークノミクスやサービス設計に対する強みと弱みを的確に分析されているLGGさんのレポートについて解説する、という動画の構成によってSleeFiをとてもクリアに理解できます。

なのでSleeFi自体の説明はこの動画をご覧いただければバッチリ理解できるとして、今回はLGGさんがSleeFiをどのように評価しているのか、今後のブロックチェーンゲームは何に気を付けてどのような設計であるべきだと分析されているのか、の方に注目したいと思います。

つまり「SleeFiの分析レポート、の解説動画、の分析記事」というマトリョーシカのような書き方をしてみます(笑)

LGGさんが評価しているポイント、ネガティブに捉えているポイントがわかれば、今後のBCG設計に大いに参考になるはずです。


■1.調査の総論:プロジェクトの可能性とリスク

SleeFiはSTEPNのトークノミクスを踏襲した「Sleep to Earn」アプリです。
ホワイトペーパーを見ると分かる通り、SleeFiのゲームルールやトークノミクスは、STEPNの影響を多分に受けつつ、改良を加えた設計になっています。

まずはSTEPNの設計をベースにしていることを指摘しています。

STEPNはうまくいった部分も多いものの、大幅下落とユーザー離脱の大きな波が起きたという結果も皆が知っているプロダクトです。

基本設計を踏襲すると同じ問題が起きる可能性がありますが、LGGさんはSTEPNベースであることをプラス評価するのかマイナス評価するのか?

STEPNの成功に再現性を持たせつつ、STEPNの改善点もカバーできるようであれば、大きな成長が期待できるプロダクトだと言えます。

プラス評価と捉えていらっしゃるようです。

まずSTEPNは成功モデルのひとつであることから、今後出る多くのBGCはどれもSTEPNをある程度踏襲することが予想されます。まったく新規の設計はそれが成功するかがわからないため、STEPN踏襲はプラスであると。

そしてSTEPNの改善点も見えてきていますので、対処すべきポイントや対処方法が明確化されつつあるという理解です。

STEPNも今が完成形ではなくどんどん修正が加えられていますが、後発は初めから対処を織り込めるのが優位なところです。

SleeFiに期待できるポイント
1.「睡眠」という可処分時間の外側で稼げる、というコンセプト
2.STEPNの失敗を踏まえ、初期のトークノミクスを改良している点
3.OG(※)キャンペーンなどに見る、マーケティング施策の成功
※OG…オリジナル・ギャングスタの略で、GameFi界隈では専ら「早期にプロジェクトにコミットした人」を指します。

LGGさんはこの3点を高評価だと捉えていらっしゃいます。

1.についてはSTEPNもある程度日常の延長線上の行為をEarnさせるという目新しさがありましたが、「睡眠」は延長線上どころか枠外です。これは有利。

時間の奪い合いに勝つことが必要で、超おもしろいゲーム性でのめり込ませるのもひとつの方法でしょうが、「ついで・ながら」の方向性が成功確率が高いと考えられます。

裏返して「おもしろい・すごい」は「わざわざ」時間を作る必要があり、Axie Infinityのように長時間を要するゲーム性はto Earnには向かないという分析です。

2.と3.については後半に登場するのでここでは割愛します。


■2.プロジェクト概要とロードマップ

具体的なトークノミクスの改良点は、NFTバーン機能やガチャ機能などを最初から実装している点です。トークンやNFTの消費ポイントをさらに多くすることで、価格の安定を狙っているのが伺えます。

NFTバーン機能やガチャ機能などを最初から実装している(STEPNは後から実装した)ことで、NFTの増えすぎと価値の希薄化、不人気のNFT(STEPNではRunner)を市場から減らせる仕組みがあることを評価しています。

一方で、

SleeFiの抱える課題
1.経済的なインセンティブに紐づかない消費設計、NFTバーン設計が不十分である
2.提携しているVCやギルド等が公表されておらず、組織体制や資金力も不透明である
3.運営母体が不透明なため、トークン上場後のトークノミクス運営能力に不安がある

の3つの懸念点を挙げています。

1.Earnに無関係な消費やNFTバーンをしたくなる設計がとても重要。ユーザーの行為動機が「Earn量が増えるから」のものばかりだと、ユーザーがNFTを育て終わるころに一斉に巨大な売り圧が発生して破綻する、と言っています。詳しくは後半に出てきます。

2.と3.はほぼ同じことを言っていて、運営が明らかであり資金力があることが明確であるべきだと言っています。web3プロジェクトは匿名なことは多いですが、実名の方が信用は得やすいのが現実です。

特に、運営からコミュニティへの直接的な情報発信が少ない点は、信頼関係をベースにしたコアなコミュニティを作る上で大きな課題となる可能性があり、改善の余地があります。

運営がユーザーコミュニティと一体になり、サービス提供とプレイヤーという一方通行の関係性ではなく相互の信頼関係が重要である、と指摘しています。

これまでのゲームは基本的に一方通行でした。多額の課金を集めるスマホゲームでも、動くお金は大きいものの運営とユーザーが一体化することはありませんでした。

うっすらと見えない糸のように「この運営はユーザーの気持ちを分かってくれる」「この運営は自分たちではプレイしていないんじゃないか」みたいな想像や雰囲気での関係性だったと思います。

しかしBCG、to Earnにおいて、またはweb3という思想性の中では、運営とユーザーコミュニティが一体感を持ち相互に信頼しあえる関係性が重要であるとLGGさんは分析されています。

余談:個人的な見解

個人的には半分は同意、半分は従来型スマホゲームにto Earn機能を追加するポイ活ゲーム市場のweb3化という流れもあり必ずしも運営とユーザーが一体化せずに成功するプロダクトもあり得るんじゃないかと考えています。

かみ@Kami | 図解おじさんのこのツイートが個人的にはしっくりきます。

Web2側のマスをターゲットとして、to Earnという魅力を提供することが成功のカギであろうし、このマスの人たちに「ゲームでも頑張る・コミュニティでも積極的に頑張る」ということを強いるのは難しいんじゃないかと思うのです。

web3プロジェクトは参加者が非常に優秀で、頭がよく、お金を持っていて、自発的に活動する凄い人。というペルソナに対してサービスやコミュニティを提供しようとするクセがあるように感じています。

多くの人はきっとそうじゃない。
もっと受動的だし、そこまで特別じゃないし、お金も時間もありません。

運営がユーザーコミュニティと一体化するということは、運営レベルでユーザーを巻き込むということ。とするとユーザーにも一定レベルのスペックを要求してしまいがちです。

プレイヤーの気持ちや意見をくみ取ることはとても大切ですが、運営の一員としてユーザーへの期待値を上げすぎると、図説おじさんの今回のイラストの左上、「単にWeb3側をターゲットにした場合」になることもあるんじゃないか、と思っています。

プロジェクト概要1:どんなプロジェクト?

STEPNに類似している設計
・NFTのLvUpによるNFTのステータス強化と、ソケット解放
・ジュエル(宝石)をソケットに嵌めることでのステータス強化
・宝石を3つ使用して、確率で高レアの宝石をミントできる
・親Bed動詞を掛け合わせて、最大七回まで子 Bedをミントできる
・ウォレットがアプリ内に組み込まれている等

STEPNにない設計
・3回以上ミントに使用されたBedをリサイクルをすることで、確率で同レアリティか、1つ上のレアリティのBedに交換できる(NFTのBurn要素)
・SLFTを使用したガチャ要素
・Bed NFTのステータスに、プラスの補正をかけるアイテムの存在とミント要素
・ミント成功率などのゲーム内メカニクスを高めるトロフィーの売買(STEPNではGMT消費でゲーム内メカニクスを高める仕様)
・トークンのステーキングによるリワード獲得

プロジェクト概要2:基本プレイイメージ

1.ヘルスケアアプリと連携
2.SleeFiで睡眠目標設定
3.毎晩の睡眠で報酬を稼ぐ
4.Bed NFTを強化する

プロジェクト概要3:デュアルトークンシステムを採用

SLGT:ガバナンス+ユーティリティ
・発行上限:120億枚
・2022年冬ローンチ予定

SLGTのユーティリティ
・アイテムの購入/ミント
・ベッドステータスの振り直し
・Rare以上のベッドミント
・高いレアのLucky Boxの開封
・DAO機能

SLFT:ユーティリティトークン
・発行上限:無制限
・2022年第3Qローンチ予定

SLFTのユーティリティ
・ベッドの修理
・ベッドのミント
・ベッドのレベル上げ
・ジェムのアップグレード
・ソケットの解放
・ガチャ機能
・アイテムの購入/ミント
・ベッドステータスの振り直し
・Rare以上のベッドミント
・Luck Boxの開封
・Insurance(保険機能)
・高いレアのLuck Box開封

プロジェクト概要4:ロードマップ

2022
・フェーズ1(2022年6月~9月)

・マーケティングキャンペーン
・コミュニティビルディング(Discord、Reddit、Telegram)
・Genesis NFT発行イベント
・SLFTのローンチ
・ホワイトリストコンテスト
・コミュニティイベントの開催
・オープンBetaの公開

直近のシステム実装スケジュール
・8/18:Closed βテスト開始
・9/2:WL Genesis ベッド販売開始
・9/3:一般 Genesis ベッド販売開始
・9/11:Jewel Genesis 販売開始
・9/30:SLFTのDEX上場
・10/1:オープンβテスト開始

2023
・フェーズ2(2022年10月~3月)

・ガバナンストークンのIDO/IEO
・睡眠アルゴリズムの改善
・ウェアラブルデバイスの計測に対応
・上位モデルの解放
・CEXへの上場
・企業との戦略的提携

・フェーズ3(2023年3月~9月)
・トロフィークエスト機能の実装
・レンタル機能の実装
・DAO機能の公開
・マルチチェーンアップグレード

・フェーズ4(2023年10月~)
・定期的にアップデート
・観光業との提携(ホテル・観光名所)
・自社ウェアラブルデバイスの開発
・地方自治体との提携(SleeFiを通じた呼び込み)
・睡眠医療機関との提携(研究への貢献)

ユーティリティトークンであるSLFTもDEX上場し購入可能にすること、ガバナンストークンであるSLGTは追ってフェーズ2でIDO/IEOさせ、CEXでも売買可能にすることとしています。この辺はSTEPNまんまなのですが、GSTにあたるSLFTをDEX上場させると後述の賭博法にひっかかる気がします

フェーズ4ではユーザー課金以外のEarn原資、いわゆる外貨獲得に言及しています。これが1年後からというのは、初期ユーザーに暴騰と暴落を経験させてしまうことを心配します。実績がなければ提携先がお金を出すことは難しいですが、外貨ナシの期間をいかに安定的に過ごせるか、できるだけ早く外貨を獲得できるかがカギになりそうです。


■3.ユーザーの6つの収益モデル

1.Bed NFTを購入し、睡眠で稼ぐ
2.Bed NFTやBedBoxの販売
3.宝石やキャンディーといったアイテムの販売

これらはSTEPNと同じです。
歩いて稼ぐ、シューズNFTをmintして売る、ミステリーボックスから出たGemを売却する、の3点にあたります。

とすると問題点も同じになります。

初期課金だけでひたすらEarnしたGSTを換金出金し続けるだけになり、新規ユーザーが増えなくなったりmint工場が機能しなくなったあとはGSTが大暴落する。初期に高額でNFTを買った投資額を歩くEarnで回収することが不可能になる。地道にMBから出るGemを売って少しずつ回収する。

の流れに数か月で突入する、かもしれません。

4.クエスト報酬(開発中)
5.トロフィー(開発中)
6.レンタルシステム(開発中)

これらはSTEPNにまだない機能です。

あとで説明が出てきますが、4.と5.はEarn量を増やし売り圧を高めてしまうデメリットがあるため、ゲームにハマらせる効果とは別に崩壊までの期間を短くしてしまう恐れがあります。

6.は崩壊後のNFTが安値安定してしまったあとでは機能しません。借りるまでもなく誰でも買えるようになりますので。

ユーザーではなく資本家に大きなお金を入れてもらい、働かずに人に稼いでもらうレンタルモデルは考えがちなのですが、実際は投入時期は初期に限られるんじゃないかと思いますし、初期に投入しても売り逃げる気マンマンの資本家が短期間に経済をかき混ぜて終わる気がします。レンタルは難しいですね。

収益性の変数

1.Bed NFTのステータス(ソケットの解放と宝石の装着で強化)
・Efficiency
・Luck
・Bonus(STEPNの靴にはない要素)
・Special:(cf. STEPNのComfort)
・Resilience

ほぼSTEPNまんまですね。

2.Bed NFTのレベルとレアリティ
Bed NFTのレベルが31以上になると、SLFTを引き続き獲得するか、SLGTの獲得に移行するかを選択することになります。

レベルを上げてポイントを割り振ってステータス強化する点、よりレアリティの高いNFTの方が割り振りポイントが高い点もSTEPNと同じです。

GST EarnかGMT EarnかをLv31以上で選択するというのもSTEPNの仕様を織り込んだものと言えます。こうやってあらかじめ予告されているのは親切ですが、Lv30まではEfficiencyを上げ、Lv31でポイントを割り振りなおすために莫大なコストを払わせてリセットさせるのは厳しいし複雑な気がします。

このへんはSTEPNをなぞらえたからこその弊害で、ブラッシュアップの余地がりそうな気がします。

3.Bedの保有数
2個で1.5倍、3個で3倍、最大30個で10倍のトークンを獲得できます。

レポート中でも指摘されていますが、やりすぎだと。

これは複数のNFTを所有する動機としてかなり強力に働きますが、吐き出されるSLFTやSLGTの量を大幅にあげてしまい、将来的に巨大な売り圧を作る設計です。

予定されている消費システムだけでは将来的にこの巨大な売り圧をカバーできるとは考えにくいため、持続可能性を阻害する要因ともなりそうです。

倍率が高いということはNFTの単価が高く設定される可能性が高く、すると値下がり幅も大きくなることを意味します。将来のEarn量を増やすために初期投資し、暴落し、さらに育ったBedでのトークン吐出量が増えているため売り圧が巨大化する、という、まさしくSTEPNが失敗した設計を修正できていないように見えます。

4.収益計測のアルゴリズム
最終的に、トークンの獲得量は次の要素によって変わります。
・睡眠時間と質
・BedのEfficiencyの数値
・アイテムの能力値
・トロフィーの獲得状況
・Bedの保有数など、その他の補正値
このうち、睡眠時間と質によって変わるのはトークン獲得量の20%になるとホワイトペーパーには記されています。

つまり80%は課金とパラメータを上げるためにかかる時間で先送りされるということですが、この80%が満ち満ちた「アガリ」の時期が売り圧Maxで危険です。80%も将来の変動幅があるということですから。

睡眠時間と質によるEarnはこのBCGの本質の部分なので、ここの依存度をもう少し上げた方がユーザーにとってもわかりやすいし、長期での変動要素が小さくなることから将来の売り圧も下がる気がします。


■4.SleeFiとSTEPNのトークノミクス比較

SleeFiのトークノミクスはSTEPNを参考にして作られたモデルになっています。

動画の14分ごろに出てくるこの図説は非常にわかりやすいです。
STEPN自体の理解にも役立ちます。

SleeFiでは、Bedや宝石が一定確率で壊れてしまう設計になっており、これはSTEPNにはなかったNFTのBurn機能です。
また、日々のトークン獲得量の3~7%(Bedのレアリティによって変動)を税金的に納めることで、NFTが壊れるのを防ぐこともできます。(Insurance:保険機能)

これは妙手にも見えますが、結局ユーザーは「税金」を織り込んでEarn量を理解するだけで、全員が保険に入ってしまうとNFTをBurnさせる効果が期待できません。

ユーザーのBedミントを許しているのでNFTが制御不可能なかたちで増殖し相場を荒らします。それを一定程度抑制するためにBurnが必要なのに、Burnが事実上起きないなら意味がありません。

STEPNにはない消費ポイントとして、ガチャ機能があります。ガチャ機能ではSLFTを使用することで、Bed(CommonとUncommon)・宝石・アイテム・SLFTを獲得することができます。

これは日本国内法ではまさしく賭博でしょう。
SLFTが売買可能で金銭価値を持っていることもあって言い逃れできない仕様だと思います。

これらの消費設計は、いずれもユーザーの「経済的なインセンティブに紐づく」消費設計であり、「経済的なインセンティブに紐づかない」消費設計が不足していると言えます。

これはto Earn系BCG全般の課題です。
稼ぐことを一番のセールスポイントで普及させるわけですから、稼ぎにつながらない課金やBurnはなかなか促せません。

特に「寝て稼ぐ」というコンセプトの中心である「寝る」ということ自体にプレイアブルな楽しさ、面白さを持たせづらいことから、あとは自慢する・競争するという周辺価値に課金を促すしかありません。

GameFi経済圏を循環させるには、トークンのユースケースの数(縦軸)とエンドゲームまでの長さ(横軸)によるトークン消費面積が長いことが重要です。

これはそうなのかな?と疑問を持ちます。
結局エンドゲームまでの時間を引き延ばすだけですし、投じたお金以上に稼ぐことができるか・できないかでいうとこの図のままだと「絶対誰も稼げない」が確定してしまいます。ただの時間稼ぎです。

やはり「経済的なインセンティブに紐づかない消費」と「外貨」が入って初めて成立するのだろうと思います。


■5.トークノミクス考察:巨大な売り圧・NFTバーン・賭博法

1.将来的に約束される巨大な売り圧

つまり、エンドゲームに近づくユーザーが増えてくればくるほど、将来的なトークンの売り圧が巨大になっていく設計になっているのです。

STEPNが(厳密な言葉の定義とは異なりますが)ポンジスキームだと揶揄されるポイントが解消されていません。

またも図解おじさんに登場していただきました。
厳密な言葉の定義通りのポンジかどうかではなく、世の中でto Earnが批判されるのはユーザーの払ったお金を分配するだけのスキームだからです。

そしてエンドゲームに近づくにつれ売り圧が巨大になっていくという設計と組み合わせると、時間の問題で必ず崩壊することが確定している、とも言えます。

ガチャによるトークンの大量消費が、その買い圧の一部にはなり得ますが、そのためには賭けた金額から考えていて大きく損する設計になっていないとバランスが取れません。しかし、その設計は日本の賭博法に抵触する可能性が高く、日本市場をメインターゲットにしているSleeFiにとっては大きな障壁となるでしょう。

これも危険です。賭博法はゲーム設計で一番といってもいい気を付けるポイントで、STEPNのシューズmintやGemのパリチャレすら危ないと考えています。

2.売り圧を作らない消費設計の必要性

SleeFiのトークノミクスを持続可能なモデルにするためには、複数所有やレンタルによるトークンの吐き出し量を抑える仕様に変えるか、新たに経済的なインセンティブにつながらない消費設計を追加していく必要があると考えます。

とLGGさんは分析されています。
裏返すと、初期の短期であれば相当稼げる抜け穴があり、ある程度のところで売り逃げる気でやれば稼げる、と言っているも同然です。つまり初期に逃げる気マンマンの人が桁違いのお金を突っ込み、短期で逃げる恐れがあります

そうなるとどんなに魅力的な長期計画をかかげても、短期間に大きく荒らされてアップダウンの大きさからマスユーザーに恐怖されてしまい、新規が早々に入ってこなくなります。

3.NFTバーン設計の不足

現状のトークノミクスには、STEPNに見られるような、NFT5つを使用して高レアなNFTを獲得する合成機能や、NFTのステータスの振り直しを行うフュージョン機能のような、NFTのバーン設計に欠けている印象を受けます。

前述のInsurance機能にも言及されています。全般的にBurn機能が不足していることから需要の少ないダメNFTがあふれることで市場価格が暴落する恐れがあります。

Burn機能を充実させることもひとつの方法ですが、BurnさせてEarn量が増えるなら、先の「将来の巨大な売り圧」につながりますので根本的な解決とは言えません。

STEPNをなぞらえるばかりにNFTミントを自由化していることから仕様変更した方がよいように感じます。

4.賭博法に抵触するリスク

SleeFiのNFTガチャは、以下の賭博の構成要素を満たしており、日本の賭博法に抵触する可能性があります。

1.偶然の勝敗により、2.財産上の利益の、3.得喪を争うこと
4.失われ得る財産上の利益が一時の娯楽に供するものでないこと

・ガチャのランダム性は1.「偶然の勝敗により」を満たす特性です。
・獲得できるトークンやNFTは、資産価値を有するため、2.「財産上の利益」に該当します。
・ユーザーはガチャ費用よりも、市場価値の高いアイテムと市場価値の低いアイテムの両方を手に入れる可能性があるため、SleeFi運営と2.「財産上の利益の」3.「得喪を争う」関係にあると解釈できます。*1
・一時の娯楽とは、財産的価値が低いものが一般に想定されています。マーケットプレイスで取引がされるNFTは、財産的価値が高く4.「一時の娯楽に供するものではない」といえます。
*1)トークンやNFTの価格は変動が激しく、対価が費用を上回っているか否かの判断は議論が分かれる可能性があります。

ユーティリティトークンであるSLFTをガチャに使う場合、SLFTがDEX上場しておらず金銭価値を持たないと言えるならば、単なるゲーム内ポイントを消費しただけと見なせるかもしれません。

しかしSleeFiではSLFTも(GSTと同様に)DEXで売買可能にする計画です。

また売り圧を下げるためにSLFTをゲーム内で消費させ換金させないためにガチャを用いるならば、前述の通り「多くの人は外れる・少数の人が当たりを引く」という確率設定にしないといけません。

まさしくギャンブルなのでそれはそれで楽しめる人も多いと思いますが、それこそ賭博法にひっかかります。

賭博法に抵触していると判断されればサービス自体が強制終了したりアプリがAppStore/Google Play StoreからBANされる恐れもあります。

そんな危険性があるBCGのNFTに何万円も投じるのは危険だと考える人も多いでしょうし、日が経つにつれ当局にバレる可能性も高まると思います。

賭博法に抵触しないように細心の注意を払うことこそBCG、to Earnの設計で最も留意すべきポイントだと思います。


■6.DiscordとTwitterを活用したマーケティング施策

SleeFiでは、マーケティング施策の一環としてOGキャンペーンを行っています。
これは、SleeFiの拡大に貢献した人に、OG(Original Gangsta)という役割を公式から与え、WLやトロフィーNFTなどの特典を付与する、というキャンペーンです。

これは結構うまくいっているようです。

大手で名の知れているところがブランド力・信用力とコストでマーケティングするのと違い、BCG運営は認知度の低いところが多いため、ユーザーに宣伝をしてもらえる体制を敷くのは鉄板です。

SleeFiの公式Discordでは、定期的にOGの招待ランキングが発表されていますが、トップ10のOGだけで2,600人以上をSleeFiコミュニティに招待しています(8/10時点)。

こうやって競争させること、トップランカーの自尊心をくすぐることも重要なマーケティング手法です。

STEPNは、運営がクイズイベントやミームコンテストなどのイベントを直接的に行ってユーザーを引き込んでいきました。
一方SleeFiは、初期段階からOGにマーケティングをある程度任せており、ユーザー同士の関わり合いや相互作用をより重視した施策になっています。
アプローチこそ異なりますが、ユーザーを巻き込んでのコミュニティ形成をするという点では共通しているマーケティング手法です。
この手法は、WEB3プロジェクトにおけるマーケティング施策の基本になっていくと思われます。

ICOブームの時も、NFTプロジェクトでもこの手法が一般化しています。先にコミュニティがあり、プロダクトができる前から情報発信して一定の見込みユーザーを確保、その中からインフルエンサーを育成してバイラル集客を委任していくとう方法です。

モノがない時から仕掛けていくので信ぴょう性やリアリティ実感に欠けることと、先述しましたがコミュニティメンバーへの依存度や負荷が高くなりすぎるのは懸念点です。

さらに言うと、BCGやweb3プロジェクトが今後もっと増えてくると、コミュニティに積極的に参加する人の奪い合いになります。活躍する人は限られていますから、うまく良い人が確保できないプロジェクトは初期から失敗してしまいます。

さらにさらに言うと、OGマーケティングに関わる人の目的がNFTプレセールでWLを安値で獲得して売り逃げることだという人も多いのが実情で、本当にサービスのファンであり続けてくれる人でなければ初期の未熟な経済設計のタイミングで大きく荒らされてしまう可能性もあると思います。

そういう意味でもコミュニティに依存しすぎるマーケティング手法や、プロダクトがない中で立ち上げられ集まった人に任せきるやり方はリスクもあると思います。

従来のゲームのように、プロダクトを楽しむ中でファンが集まり、そのファンの意見を伺いながら運営が適切にプロダクトを進化させていくという道もあるんじゃないかと考えています。


■7.SleeFiの抱える今後の課題

本当にプロジェクトが成功するかどうかは、運営のトークン上場後のトークノミクス運用能力とコミュニティとの信頼関係構築にあります。

トークンやNFTの価格、需要と供給のバランスに応じて、適切なオペレーションが組めるか(適切な経済圏への介入ができるか)は、経済圏の維持にとても大切な能力です。

この重要性は、STEPNの歴史を振り返ると明白でしょう。

加えて、SleeFiのコミュニティ運営方針や運営体制には不透明さがあります。

この不透明さがユーザーのFUDにつながり、コミュニティの信用基盤を揺るがし、ユーザーのトークンの握力を弱める結果につながってしまわないか?という不安があります。

今後運営は、トークノミクス設計やマーケティング施策で盛り上がった市場の期待値に、誠実に応えていくためのオペレーション能力を求められることになると予想します。

運営が不透明なのでこのあたりが不安という指摘です。

これは有名な運営元だったとしてもBCGの実績が薄ければ大差ない気がしますし、現段階では成功事例や鉄板手法が確立されているわけではないので、長くたくさんトライし実績を作っていくことが重要だと思います。


■8.まとめ

・STEPNフォーマットでBCGを設計するのは悪くない。
 しかしすでに修正が必要だと分かっているところを修正することが前提。

・題材は「ついで・ながら」の方向性が成功確率が高い。
 「おもしろい・すごい」は「わざわざ」につながるためto Earnに向かない。

・賭博法に抵触しないように最大限気を付けるべき。
 どんなに良いコンセプトや設計でもサービスがBANされたら元も子もない。

・将来売り圧が巨大化する設計には難がある。
 初期に稼ぎ逃げするつもりマンマンの投機マネーに荒らされる危険性あり。

・「経済的なインセンティブに紐づかない」消費設計や「外貨」が重要。
 投機マネーも含めたユーザーの初期課金額を分け合うだけの経済設計では時間の問題で必ず崩壊する。

・コミュニティと運営との信頼関係を構築し、コミュニティ主導のマーケティングを進めるのが今後の定番となりそう。
 でも個人的には異論アリ。逃げる気マンマンのファンではない投機家を呼び込むと初期に荒れる。ユーザーの負荷が高すぎるとマスアダプションしづらい。負荷を担ってくれる人の人数には限りがあり魂胆も持っている。この3点から、改善の余地があると考える。


引用が多いとはいえ1万2000字は書きすぎました。
読むのも大変だし、この記事が直接的に役立つ人はweb3プロダクトを開発している人だけという超ニッチになってしまいましたが、誰かのお役に立てれば幸いです。

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