『NFTの二次流通ロイヤリティがゼロ化する真の原因とNFTの未来予測』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.9.5
■NFTのロイヤリティ支払いは強制できるのか──任意制にしたマーケットプレイスにクリエーターが反発
以前にも取り上げたNFTの二次流通ロイヤリティ問題。
ここで取り上げたSudoswapに続いて「X2Y2」もロイヤリティを事実上なくすことを発表して物議を醸しています。
最近のNFTプロジェクトでは一次流通価格をタダ同然とし、数千枚のジェネラティブNFTを多数の人にまず行き渡らせる。そしてコミュニティからの情報発信など様々な施策を仕掛けていくことで二次流通を活性化させる、というマーケティング手法が一般的になっていました。
一次流通がタダ同然なのに二次流通ロイヤリティも入ってこないとなればNFTクリエイターの収益源がほぼ失われますから、反発も当然です。
しかし、二次流通ロイヤリティで収益を上げていく手法にはもともと問題があったのではないかと考えています。
■純投機マネーを当てにしている構造
建前としては、コミュニティにNFTプロジェクトの理解者・ファンを集めて、初期から応援してくれたファンには一次販売で超低価格で買える権利を与え、プロジェクト成功の暁には値上がり差益で還元される、というファンが報われる経済構造だと説明されます。
しかし現実にはクリエイターとファンの関係だけでは成立しておらず、多くの「成功」プロジェクトは投機マネーによって成立しています。
[買い手側]
・プロジェクトの中身は関係なく初期購入~直後に売却で利益が出るからコミュニティに「登録」している。
・botを駆使することも厭わず先行購入権(ホワイトリスト)奪取やmint競争を勝ち抜こうとする。
・二次流通で購入する人もプロジェクトの中身ではなく将来の値上がり期待のみで欲しがる。
つまりファン要素はなく応援する気持ちもない人が多く参加しています。
そのような人にとってロイヤリティ手数料はゼロの方がありがたい。
[売り手側]
・一般認知度が低い人が多数参入しており供給過多。
・一次流通で高い金額を付けても売り切れない人が多い。
・将来の値上がり期待以外のユーティリティを提供できないプロジェクトが多い。
・初期販売の設計時点で投機マネーが一定程度入らないと成立しない枚数を売ろうとする。
・「初期ファンに報いたい」のは本音だが、応援してくれたNFTを手放して利益を出すしかない構造。
・一次流通で複数枚を買った人が二次流通で少しずつ売却する「流動性の確保」をしないとプロジェクトが成立しない構造。
・一次販売は売り切りたいが、初期にたくさん買った大規模投機家が一気に売却して価格が暴落するのは困ると思っている。
つまり売り手側もファンだけと向き合っているわけじゃないことをよくわかっています。
特に「ファンが売らないといけない構造」は自然と投機家主体になる構造でもあります。
■二次流通ロイヤリティがあっても投機期待だと解決しない問題
いまのNFT市場において二次流通が起きるのは「高値転売の期待」があるからです。将来どのくらいの利益が出そうかに基づいて買うか売るかを判断します。
「次回作を優先的に買う権利」というユーティリティ
これは問題の先送りです。結局、売買差益を期待させることがメインであって、売買差益のみを狙う投機家にとって二次流通ロイヤリティは「ないほうがいい」というバイアスがかかって当然です。
NFT市場の参加者の多数が投機家で、二次流通ロイヤリティがない方が利益が出る、と願う人が多ければ、とても民主的なweb3の世界では必ずロイヤリティをなくしたソリューションが提供されます。それがSudoswapでありX2Y2だったということです。
「コミュニティに参加する権利」というユーティリティ
参加対象のコミュニティがもたらす価値を価格が表します。
基本的には会員権の価格がコミュニティで得られるベネフィットと釣り合っていると思える価格に落ち着きますが、ゴルフ場の会員権のようにバブル期にはゴルフをしない人が投機マネーで売買しユーティリティ以上の価格が付くことがあります。しかし基本的には会員として参加して得られる価値が価格に反映されるものです。
そして重要なことが「本当にコミュニティに参加したい人だけが買う」のが本来の姿だということです。ゴルフをしない人によって値段が決められるとゴルフをしたい人がユーティリティ以上の高値で買うことになりファンのためにはなりません。
そしてゴルフをしない投機家は手数料はゼロであってほしいと願います。
「株主になれる権利」というユーティリティ
法的には証券、セキュリティトークンに該当してしまうNFTというのは規制対象になる恐れが高いですが、組織の利益を案分して受領する権利、利益配当を得る権利、利益を出すための議決投票をする権利というNFTも事実上存在します。
「コミュニティに参加する権利」に近いものではありますが、配当や株主優待が多い会社の株を買うような発想なので、コミュニティの構成員になることやコミュニティの中で活躍する動機は薄いのが一般的です。
プロジェクトの将来性や納得度は株式会社の経営理念への理解と共通で、まったく投機的な判断だけではなく一定の共感性は必要ですが、儲けるというユーティリティでしかないので「配当利回り」として適切な価格に落ち着きます。そして証券会社の手数料と同じく二次流通ロイヤリティはない方がいいと考えます。
■仕組みに合わせるだけでなく本質的価値を高めることが重要
そういうニーズも出てくるでしょう。
しかし投機家が市場のプレイヤーの多くを占め、クリエイターもプロジェクトも投機家に頼って成立しているなら、二次流通ロイヤリティをゼロにする圧力は高まるばかりです。
JPEG画像が何千万、とは昨年秋ごろNFTが話題になった時に揶揄的・疑問的に言われていたことです。当時はNFTの知識がない人がこれを口にしていましたが、今は「ユーティリティ以上の価格がついている」という意味で異常です。
長期的には提供される価値に応じた適正価格に落ち着くはずで、それを大きく超えている状態をバブルと言います。
NFTプロジェクトが目指している理念や活動自体が生み出す価値をいかに高めていくかが重要。OpenSeaが設定した二次流通ロイヤリティという仕組みを大前提に収益を組み立てても、プロジェクト参加者・NFT市場参加者が投機家ばかりではロイヤリティゼロ化の圧力に負けてしまいます。
プロジェクトの参加メンバーがいる場所そのものが上記の「専用マーケットプレイス」です。
中央集権的で閉じた狭い世界、ということではなく、売買する以外の機能もすべて持ったリッチサービスプラットフォームになっていくと捉えています。
絵を描き、Discordでコミュニティを作り、OpenSeaで売買する。
これではできることが限られすぎます。
絵は単なる集金手段でありコミュニティ入室の鍵でしかありません。プロジェクトが実現したいことをすべて集約したサービス化をする。その参加権がNFTという技術で作られ売買される。これがNFTの真にあるべき姿だろうと思います。
GameFiなんかは自ずとそういう構造になっていますね。ひとつのサービスの中にNFTマーケットプレイスもユーティリティもまとまっている。ユーザーが投機家ばかりという悩みも共通です(笑)
ゲームに限らずNFTアートの文脈で語られてきたプロジェクトもリッチサービス化していくし、絵の売買だけで投機できた時代も長くないし、リッチサービス用のプラットフォームをSaaS的に提供する会社も出てくるんだろうと思います。
二次流通ロイヤリティは画期的でしたが、NFTはまだ黎明期。だんだん実需化して一般に浸透していくのだろうと思います。
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