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『NFTに相互運用性を取り戻す?リップルのNFT新規格「XLS20」ってなんだ?』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.11.2

■仮想通貨XRP経済圏、スマコン使わず発行可能なNFTの新規格「XLS20」実装へ

暗号資産(仮想通貨)XRPのブロックチェーン「XRPレジャー(XRPL)」で31日、NFT(非代替性トークン)の新規格「XLS20」が実装された。

XLS20は、XRPL上でのNFT作成をより効率化するための規格。リップル社の吉川絵美コーポレート戦略担当VPによると、イーサリアム(ETH)やEVM互換チェーンに用いられる従来の規格とは異なり、スマートコントラクトを使わずに簡単にNFTを発行できるのが特徴。

開発者としては、スマートコントラクトのセキュリティリスクや複雑さを回避して、NFTを運用できる。

なるほど目から鱗です。

パブリックチェーン系のNFTは「チェーンの上でNFTというプログラム入り証明書を発行する」という概念だと捉えています。

Ethereumの思想がプログラム可能なブロックチェーンからスタートしている都合、チェーンの上に乗っかるものはプログラムであるべきと考え方が固定化していた気がします。

スマコン不要なNFT「XLS20」が実現することは

①EVM系チェーンなどと違って、NFT機能がプロトコルレベルでネイティブに実装されている
スマコンが不要(数行のコードで簡単に書けてしまう。ソリディティ知らなくても簡単にNFT発行できるよ!)
スマコン開発のバグなどのセキュリティリスクを回避(よく精査されたプロトコルレベルでのサポートなのでセキュリティレベルが高い。スマコンは開発者に依存する部分が高い。)
②レジャー上での取引手数料(ガス代)がとても低い (0.001 XRPなど)
③XRPレジャーの分散型取引所(DEX)でそのままレジャー上で売買できる
③譲渡不可能(nontransferable)なNFT発行が可能 
所謂SBTが発行可能。
④自動ロイヤルティ機能が提供されている(二次流通のロイヤルティ自動支払い)

リップル社の吉川絵美コーポレート戦略担当VPのツイートより

と、EVMだとNFTのスマコン側に書かれていた機能をチェーン側に共通で持たせるようにすることで、多くのNFTがやっていることをスマコン知識不要で実現できるようにすることです。

これは結構NFTの本質的な課題を突いた革命的な仕様かもしれません。

私が考えるNFTの本質的な課題は「インターオペラビリティ」です。相互運用性ナシならNFTである意味があまりなく、アンチNFTな人の理解が得られない最大の要因になっていると思うからです。


■NFTはカセットROM

NFTのイメージとしては
・Ethereumなどブロックチェーンがファミコン本体、
・NFTがファミコンに挿すことができるカセットROM、
・NFTに仕込まれているスマートコントラクトがカセットROMの中に収められているゲームプログラム
というような概念構造です。
(カセットROMの方がダウンロード型ゲームよりイメージしやすかったのでファミコンと古い喩えにしてます。)


■多くのNFTはだいたい同じ

必ずこの構造でなければならないと思い込んでいましたが、実際のNFTは
・スマコン的にはだいたい同じ
・独自に工夫されたNFTは多くない
・だいたい同じなら、ひとつひとつスマコンの中身を確認して動作させるのは処理が重くなるだけ
が現状なのだと思います。

もちろん独自の工夫を凝らして新しいユースケースに挑戦するNFTも多くあるのですが、割合としては少数です。


■多くのNFTはインターオペラビリティを考慮していない

多くのNFTはそもそもインターオペラビリティを考慮していません。多くの「だいたい同じ」NFTは絵柄やストーリーを愛でたり投機差益だけが目的だったり、何かに使えるという用途=ユーティリティを持っていません。

せいぜいDiscordでNFTを持っている人が入れたりロールをもらえたりする程度です。もともとユーティリティがなければ複数のプラットフォームで互換性を持たせる意味がありません。

独自進化させたNFTは特定のプラットフォームでのみ使えることが前提であることが多く、インターオペラビリティがそもそも眼中にありません。

いや、最大のインターオペラビリティはOpenSeaとMetaMaskで扱えることか。ERC-721であればOK、だけですね。


■NFTである必然性はインターオペラビリティから生まれる、はず

特定のプラットフォームのみで独自な動作をするだけなら、パブリックチェーンでNFT化するのではなく、Web2的なサーバ&クライアント方式で実現してもよいはずです。

独自な動作が全くないなら、スマコン部分はほとんど必要ありません。極端な話、オフチェーンデータでもプライベートチェーンでもなんでもよくNFTである必然性はないと思います。

であれば、チェーン側で共通仕様としてスマコンで記述していた部分を巻き取り、チェーンの上にのっかるNFTからプログラムをなくしてしまっても「今のNFTの用途」は実現できるはずです。

リップル社デイビッド・シュワルツCTO(最高技術責任者)は、二次流通の取引量の一部を直接還元する自動ロイヤリティ、資産の共同オーナーシップなどの注目機能がプロトコルレベルで標準化されている点を強調。

つまり売買する、所有権移転する、ロイヤリティ設定する、などが今のNFTに必要な用途で、それらは多くのNFTでだいたい同じなのでNFT個別にスマコンで書く意味がありません。


■NFTにインターオペラビリティを取り戻せる仕様

カセットROMの中身が独自プログラムでないなら、ファミコン側に機能を持たせた方がNFTの発行が簡単で処理も高速化できます。

なんならファミコン側で持っている機能に仕様を共通化でき、むしろインターオペラビリティを実現することが環境的には容易になります。

独創性は失われますが、独創性を単一サービスだけで発揮するならWeb2サバクラでよく、インターオペラビリティを実現するなら共通仕様化した方が対応サービスが増えやすいはずです。

今回XRPレジャーの「XLS20」で実現することは、Web2サバクラでよくない?JPEGでよくない?NFTでなくてよくない?という「Why NFT? Why Blockchain?」への反論のようにも感じます。


■まさしく転換点になるかも

シュワルツ氏は「継続的な反復とコラボレーションを通じて、真のNFTのユーティリティを有用性を解き放つことで、ブロックチェーンの採用における転換点を作り出す」と締めくくった。

真のNFTのユーティリティ、有用性とは、ひとつのNFTが複数の無関係なプラットフォームで共通利用できるインターオペラビリティだろうと考えています。「ブロックチェーンの採用における転換点」とはすなわち「今までの多くのNFTはブロックチェーンを採用する必然性がない」ということだと理解しました。

22年3月には、第一波(Wave)の対象者を選出。4,000件の応募の中から、映画監督のSteven Sebring氏、作家やプロデューサーとして活躍するJustin Bua氏、NFTエコシステムに携わるxPunksなどが選ばれた。

10月にリップル社は第二波となる7つの対象者を発表したばかり。NFTチケットを活用し、ライブ等を行うことができるメタバースプロジェクト「9LEVEL」や、日本のクリエイターやアーティスト向けのNFT電子市場「Anifie」等が含まれた。

これからどういうユーティリティサービスが登場するか楽しみですが、NFT側が共通仕様化され(独自性を失い)、代わりに各サービスプラットフォーム側で共通利用できることが確定しているなら、NFT側もプラットフォーム側も視野を広げて他プロジェクトを巻き込んだ企画が立てやすくなります。

XRP自体が海外送金以外ではマイナーなイメージがありますが、相性が良いグローバル労働市場や貿易市場でのXRP採用が広がってユーザー自体はずっと増えるだろうと思っています。

XRPのユーザー数増加に合わせて今回のXLS20 NFTの登場とインターオペラビリティを大前提としたサービスが数多く産まれる相乗効果によって、EVM系とは別のマーケットが生まれたりブロックチェーン自体の普及につながる、まさしく転換点になると面白いなぁと思っています。

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