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『GameFiの次はSocialFiじゃなくリビングアセットNFT+RMT?』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.9.20

■Freeverseが提唱する「リビングアセットNFT」とは何か

 NFTと言えば,昨今のIT界隈でも話題になることが多いバズワードの一つだが,それとは少し違うという「リビングアセットNFT」とは何なのだろうか。本稿ではその正体も含めたセッションのレポートをお届けする。

東京ゲームショウ2022で、スペインのFreeverseによるスポンサーセッション「リビングアセットNFT:メタバース内でフェアにプレイする」の中で提唱された考え方が「リビングアセットNFT」です。

こういうキャッチコピーや呼称、名づけは大事ですね。
中身を知ってみるとリビングアセットNFTというもの自体はそこまで特別なものではないのですが、考え方が核心を突いているなぁと感じたのでご紹介します。


■育成情報を持たせたNFT=リビングアセットNFT

 エバンス氏が一例として挙げたのが,同社が実験的に開発したサッカーゲームの事例だ。選手をトレーニングして能力が向上すると,価値も上がり高く売れるようになる。逆にトレーニングをサボっていると能力は下がり,価値も下がる要素を導入すると,価値が下がることを嫌ったプレイヤーはより継続的にプレイするようになったという。
 リビングアセットNFTを使えばプレイヤーにゲームを継続的にプレイさせる動機付けも可能になると,エバンス氏は説明している。

リビングアセットNFTは「育てたNFTは高額で取引される」という考え方です。

未強化の装備は安値で取引され,強化されたものが高く売れる。その強化が難しければ難しいほど,希少性と実用性が上がり,価値もあがるというのは,既存のゲームでもよく見る仕組みだろう。そのアイテムをNFT化することで,現実的な価値と,プレイヤーの所有権を明確化するわけだ。

もちろん素体のNFT自体の数量が少なく、さらにそれが困難な育成過程を経て強化されていれば価値が高まります。

ゲーム内で「強い武器」「強い選手」が欲しくなる動機と値段が上がるメカニズムが一致しているのがまず美しい。加えて育成要素というユーザーが関与しゲームに高いコミットメントを示すことで、つまり自分の努力でNFTの値段を上げることができるわけです。

ゲーム内のエコノミー設計としても、育成にコストや時間を費やさせることでバランスを取れますし、ゲーム全体の戦力インフレを新キャラによって加速させてしまうより育成で徐々にインフレていくように調整できそうです。


■難しいトークノミクスよりRMT

この考え方自体は新しくはありません。

Axie InfinityもAxieを育成して売却して稼ぐものでしたし、STEPNでもレベル上げが済んだシューズの方が高値で売買されます。

さらに以前ではソシャゲ、スマホ課金ゲームでアイテムのトレード機能があった2012年前後ではさかんに行われていたリアルマネートレード(RMT)から、レアアイテム×育成したもの=高値で売買される、ということは行われていました。

当時はRMTで高額なお金を払って手に入れたキャラや武器などで「Earn」できるわけではなく、純粋にゲームで勝ちやすくなったり仲間内コミュニティで承認欲求を満たすためだけのものでした。

Earn目的でなくともゲームを楽しむために莫大なお金を使う人がいるということです。

Axie InfinityとSTEPNの影響で独自トークンによるto Earnがブロックチェーンゲームの成功テンプレのように考えがちになっていましたが、既存のスマホ課金ゲームにアイテムトレード機能=RMTがあるだけでも熱狂する人は多いのではないかと思います。

トークノミクス設計を複雑に考えすぎず、RMTをゲーム性に組み込んでみるくらいの発想で考えると、ゲーム自体が楽しめて深みも増すことができ、あわよくば稼げるかもしれない動機の提供でユーザー獲得も進むかもしれません。


■公認RMTゲームが出てこない事情

既存ゲームにRMTを足しただけ、は確かにシンプルです。
アイテムをNFTにするかどうかも無関係、ゲーム内でユーザー間トレードの機能を入れるだけですし、難しい独自トークン発行を避けられます。

しかしRMT入りゲームがまったく登場しない主な理由は賭博法の存在です。

ガチャ課金が主流な日本のスマホゲームにおいて、ガチャで出るアイテムに金銭的価値がつくとガチャ自体が賭博認定される可能性が高まります。

ガチャゲームそのままにRMTを追加するのはどの国でも難しいのが現状です。

しかし一説によると「二次流通での価格は得喪を決定する要件に加味しないという判断」もあるようです。つまり価格決定プロセスに運営が関与せず、ユーザー間などで値付けされた場合はその相場価格と比較して損した得したとは考えない、ということのようです。(もし実装する際は弁護士に相談したうえでご自身で判断してくださいね。)

これをうまく使えばもしかすると既存のスマホゲームにRMTを足しただけ+アイテムを育成したら高く売れる、という比較的シンプルなものが作れるかもしれません。


■周辺アイテムのRMTなら成立する?

NFTゲームの元祖ともいえるCrypto Kittiesは事実上ガチャ+RMTというゲーム性でした。Axie Infinityもブリードガチャ+RMT、STEPNも5月の崩壊前はmint工場と呼ばれるシューズ量産ガチャ+RMTでした。

NFTを転売するキャピタルゲイン型はゲームの崩壊が早まることが経験上わかってきました。そこでトークンをコツコツ稼がせるインカムゲイン型to Earnを主体にしNFT売買を事実上封印させたのが最近のSTEPNです。(加えてトークンEarn量を極小にして「歩く楽しさ」側に目を向けさせようともしています。)

しかしKittiesやAxie、シューズというメインキャラをRMTさせたから失敗したのではないか、という気がしています。

たとえば「ドラゴンクエストNFT」なんていうガチャ課金系スマホゲームがあったとします。ここでガチャで売られるのは武器や防具です。

主人公や仲間のレベル上げやスキル習得はゲーム内の営みや楽しみとしてやります。しかし主人公や仲間を売買はできない設定です。

ガチャで武器や防具を販売するのは今まで通り。運営はガチャで収益を得ます。

ユーザーは運良く手に入れた「ロトのつるぎ」をゲーム内の公認RMTでユーザー間の自由な値付けで売買が可能とします。苦労して育成した場合はより高く売れるでしょう。またはガチャ転売だけが商売にならないように、育成したものしか売れないシバリも賭博法回避のために必要かもしれません。

武器や防具のガチャは頻繁に追加され、そのたびに新しい要素、より強い武器が登場します。育成すれば戦力インフレした新武器と同等以上の性能を発揮するようなバランスであれば、結果売れて回収できるからガチャを回そうというインセンティブにもつながりそうです。

もともとEarnが一切できなくてもガチャは億単位で回されているものなので、中古市場があればより一層回されるのではないかと思います。


■NFTゲーム→GameFiの次はSocialFiじゃなくリビングアセットNFTゲームによるRMT?

Crypto KittiesのNFT自体を売買するゲームから、Axie InfinityやSTEPNのトークンで稼ぐFTゲーム=GameFiに進化、しかしトークノミクス設計の難しさから次はゲーム内Earnではなくコミュニティの重要性が増すSocialFiモデルに進むというのが大方の予想でした。

しかしゲームの世界は特に、もっとシンプルにガチャゲー+RMTに行くんじゃないかという気もしています。賭博法が回避できるならその方がゲーム自体を楽しめますので、Earnとゲームの本音と建前のズレ問題も解消されます。

なにしろトークンは発行もトークノミクス設計も難しい。だったらよりシンプルなRMTゲームを求める声も挙がりそうです。

ドラクエみたいなゲームだけでなく「歩くと稼げる」のような実用っぽいゲームでもリビングアセットな考え方は使えそうですし、広く万人受けするにはシンプルさは重要です。

ガチャって育成して売る。育成の過程が楽しみだったり学びだったりする。そんなリビングアセットNFTゲームが次のトレンドになる、かもしれません。

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