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『Free2Play2Earnにおける「広告」』~【新しいWeb3ビジネスのアイディアのタネ】・Web3ニュース2022.7.13

■初期無料「Free2Play2Earn」のトレンド

一般にブロックチェーンゲームといえば、初期に何万円もするNFTを購入するのがこれまでのイメージでした。Axie InfintyやSTEPNの成功でスタンダード化した印象です。

ゲームプレイで原資回収を目指し、原資回収完了後に大きな利益を生み出し続けられるようにすることを期待はするのですが、やはり初期に数万円以上かかることに躊躇する人は多いはずです。

そこで最近では初期無料で始められるto Earnゲームも増えてきました。STEPNで爆発的な人気を博したMove2Earn系ゲームでは、Sweatcoin・Aglet・Walkenなど後発のものは無料で始められるようにしています。(Sweatcoinはブロックチェーンゲームじゃなかった時代の歴史は長いのですが、to Earnとしては後発としています。)

無料で手軽に始められて、わずかには稼げる。けれど同じ行為を同じ時間かけてやるなら課金した方が稼げる額が増える、のでNFTを買おう。そんなカスタマージャーニーを想定しているのだと思います。

つまりPlay to EarnなゲームがFree to Play化する「Free2Play2Earn」がトレンドになりそうです。


■無料ゲームアプリと広告とUX

いわゆる従来型スマホゲームでは無料で始められるFree to Playがスタンダードで有料販売されているゲームの方が少数派です。

このFree to Playなゲームもざっくり2種類に分けられます。

1.広告収益で運営されているもの
2.課金収益で運営されているもの

併用型もなくはないですが、おおむね棲み分けられている印象があります。

インディーゲームやライトゲームが広告収益で運営されていて、大手が出すメジャータイトルや見た目・ゲーム性がリッチなゲームは課金収益で運営されているという棲み分けになっています。

インディーかメジャーか、ライトかリッチかの棲み分けになっているので、印象としても広告収益がメインなゲームは少し怪しい印象も持ちがちです。

また広告があまりにも多く出るものも多く面倒なイメージがあったり、胡散臭い広告が多いことで印象を落としているものも多くあります。

個人開発者のYanase氏は7月8日、ゲーム内広告と収益にまつわる悲しい出来事をSNS上で報告。ユーザーから反響が寄せられていた。モバイル向けゲームにて広告量を削減したものの、その成果が芳しくなかったという。

開発者・パブリッシャーも広告の煩わしさや胡散臭さは100も承知で、UXやブランドイメージに悪影響があるのを知りつつ収益化して運営を継続するために広告を使っています。

今回ご紹介する記事ではユーザーのUXを改善するために広告を半分に減らす試みを行ったら単純に収益が半分になり、期待していたユーザーの没入度アップには全く貢献しなかった、というものです。

広告半減によりポジティブな効果もあったという。iOS/Androidにおけるユーザーレビュースコアは5段階中0.2~0.5ポイントほど向上。レビュー内容としても、「広告が不快」などの意見は比較的少なくなったという。

一方で、収益の半減は大きな痛手だ。アップデートや新作開発などの作品展開にも収益減は影響するとのこと。たとえば、やりこみ要素の追加や声優起用などが難しくなり、さらには広告などでの認知度向上も難しくなるそうだ。そうした状況を鑑みて、Yanase氏は「今後は広告量を増やすしかないと思っている」と語った。

レビューがいくら上がってもユーザーが2倍以上増えるわけではないはずで、やはり「今後は広告量をふやすしかない」と結論付けています。


■Free to PlayとPlay to Earnの間の深い溝

今回は試されていませんがおそらく、無料で楽しみたいFree to Playユーザーと課金して原資回収や収益化を目指すPlay to Earnユーザーには結構深い溝がある気がします。

無料で手軽に始められて、わずかには稼げる。けれど同じ行為を同じ時間かけてやるなら課金した方が稼げる額が増える、のでNFTを買おう。そんなカスタマージャーニーを想定

と言ってはみたものの、どのくらいPlay to Earnへのユーザー移行が進むのかはまだFree2Play2Earnの成功例がないのでわかりません。

先述のSweatcoinは1日3回限定で広告を見てEarnできる仕組みを導入しています。

・広告を見ることが完全に任意であること
・必須導線に割り込んで強制的に広告を見させられることがないこと
・広告を見ることで得られる報酬が歩いて稼ぐ量をはるかに超えることが多いこと
・出てくる広告の内容が極端にひどくはないこと(人によるかも)

という丁寧な実装の仕方をしているおかげで広告による評判低下のダメージは最小限な印象を持っています。

唯一、広告の読み込みが遅い・読み込みに失敗することが多い、という読み込み周りの不具合は気になりますが、大きな問題ではありません。

問題・関心事は、SweatcoinがIEOを果たした9月12日以降、無課金ユーザーがどのくらいNFTを購入して本格的なto Earnユーザーにコンバージョンするかです。

もともとブロックチェーンゲームではなかった時代が長いSweatcoinはよいサンプルになると思っています。サブスクリプション課金(※)しているユーザーは一部いたものの、もともと大半が無課金ユーザーなはずです。しかしNext STEPN銘柄のMove to Earnゲームだと初めて認知して触り始めたユーザーもそれなりにいます

初めからMove to Earnだと認知していた人はNFTを購入することにあまり躊躇がないと思いますが、古くからのSweatcoinユーザーがNFTを買うかどうかが、広告で無料を維持していたユーザーがNFTを買うようになるか?と似た結果になるのではないかと予想しています。

そして私の予想は「Free to PlayとPlay to Earnには深い溝があり、Freeで入ってきたユーザーがNFTを買うようになるコンバージョンはあまり進まない。NFTを買うユーザーは初めからMove to Earn銘柄だと認知して始めた人が大半になる。」です。

Sweatcoinの広告周りのUXはブランドイメージの毀損を最小限にしているので、課金転換がうまくいかなくても従来のSweatcoinユーザーが離れることは少なそうです。しかし広告の量をもっと増やしたり、必須導線に割り込むような表示方法にしたとしたら、課金転換は進まない・既存ユーザーは離れる、という最悪の結果を広告のせいでもたらす恐れもあると考えています。


■Free to Playな人へのEarn原資の明確な分離

Free to Playで初期投資をせずに始められることはユーザー数の裾野を大きく広げるのに必要だし効果的だろうと思います。

課金ユーザーが払ってくれたお金で無課金ユーザーも楽しめる、無課金も含めた大勢のユーザーがいるおかげでゲーム全体が活性化する、という相互にメリットのある状態が従来の課金型Free to Playゲームの構造でしたが、Free2Play2Earnの場合は無課金ユーザーにむしろ支払いをしなければならないというのが大きな違いです。

課金ユーザーが払ったお金を、90%以上のFree to PlayなユーザーのEarn原資に充てると課金ユーザーが「養分」となってしまいます。運営として最も大切にしなければならないお客様は課金ユーザーなので、あまりに無料ユーザーへの支払いが多くなると「大勢のユーザーがいるおかげでゲーム全体が活性化する」メリットを「養分化」というデメリットが上回ってしまいます

Free to PlayなユーザーのEarn原資は広告収益からのみに分離し、Play to Earnな課金ユーザーの支払ったお金とは明確に区別することがひとつの対処方法です。

この区別の方法なら広告によるUXの悪化は課金ユーザーに広告を表示しないことで解決できますし、無料ユーザーはUXの悪化を納得の上でポイ活程度の収益を得られます。そして課金ユーザーになることでUX悪化を回避し一層稼げる側に回るチャンスも常に開かれています。

ただ、大半の人が無料ユーザー・広告ユーザーだと、ゲームとしての評判はその大勢のユーザーの声で印象が作られることになります。あまり下品な広告の見せ方や詐欺まがいの広告主ばかりだとゲーム全体の評判を落としかねず、そんな悪評高いゲームでto Earnをやろうとする投資家も減ってしまいます。

広告は確かに重要な収益源ですが、見せ方や量、広告主の選定制御は丁寧にやる必要があります。


■Free2Play2Earnにおける最適な広告の使い方、または使わないほうがいいのか

Sweatcoinが先例となりそうな無料→有料へのコンバージョンがうまく進むかについては9月以降に要注目です。

Free2Play2Earnにおける最適な広告の使い方、または使わないほうがいいのか、引き続き動向をウォッチしていきます。

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