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『Makuakeが収益性急悪化。web3やNFTの未来を占う相似性』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.10.1

■クラウドファンディングのMakuakeが方針転換で収益性急悪化

クラウドファンディング事業のMakuakeの収益が急激に悪化している、というニュースです。

Makuakeに限った話ではありません。記事中にも出てきますがCAMPFIREも大きな損失を出しています。

収益悪化の事情はそれぞれかもしれませんが、

矢野経済研究所(東京都中野区)の「国内クラウドファンディング市場の調査」によると、2021年度の国内クラウドファンディングの新規プロジェクト支援額は1,642億2,100万円。前年度比11.1%もの減少となりました。2020年度はコロナによって支援額は前年度比17.8%増加。その反動減に見舞われました。

クラウドファンディングを通じた支援総額全体が大きく減少しているとのこと。

NFTはクラウドファンディングの集金機能として使われるケースも多くあります。収益性悪化の原因を知ることはNFTプロジェクトの参考になりそうです。


■クラウドファンディングのビジネスモデル

マクアケは購入型クラウドファンディングを主軸として事業を展開しています。ビジネスモデルは比較的単純で、クラウドファンディングプラットフォームに発案者の企画内容を掲載して、支援者を募集。集まった支援金の20%を手数料として徴収するモデルです。

そのため、購入型クラウドファンディングは、流通取引総額をできるだけ大きくすることが事業拡大の最大のポイントです。しかし、マクアケの流通取引総額は2021年9月期3Qを境に減少に転じました。

クラウドファンディング「プラットフォーム」のビジネスモデルなのでNFTプロジェクト単体でクラウドファンディング的に支援を集めるのとは異なりますが、支援内容への共感で購入者を募り、流通取引総額を大きくすることで収益化するという点においては共通です。

マクアケの流通取引総額が減少した要因は2つあると考えられます。1つはコロナ禍をきっかけとして飲食店、宿泊業などを中心に購入型クラウドファンディングを駆け込み寺として利用しましたが、それが一服したこと。もう1つはマクアケが審査基準を厳しくする方針転換を行ったことです。

審査基準を厳しくする方針転換とは

2022年3月1日に基本方針を発表。その中で、「海外商品において日本市場独占契約を締結せず、日本市場での流通を実施すること」や、「商品を製造委託する場合において、実行者が創出をした「アタラシイ」が認められない商品でプロジェクトを実施すること」を禁止しました。

この背景には、中国で発売されていた製品が、新たに開発されたように装って資金調達しているケースが目立っていたことがあります。プロジェクト説明で新規で開発した商品と書いてあるにも関わらず、越境ECサイトなどで同様の商品が販売されているといったSNS上の口コミを後を絶たなくなりました。

つまりクラウドファンディング、支援とは名ばかり、新規性のない商品の海外EC通販になっていたことを改めようとしたわけです。

最近の物販系クラウドファンディングは、支援したい!という強い思いで資金提供するというより新しくて見たことがない珍しい商品が買えるECサイトとして売り上げを伸ばしてきたのが実情です。

コロナ禍で一時的に「本気で支援」を求める飲食店などの利用が入りましたが、それも今は一服。

支援目的でないことは100歩譲ったとしても「アタラシイ」商品でなければ「怪しくて保証のない無名メーカー」の商品でしかない状態になっています。

一見このルール変更は正しそうに見えますが、結果的に大きく収益を減らしてしまいました。

NFTプロジェクトに例えると、プロジェクトに共感してくれた人・Discordでしっかりプロモーションを支援してくれた人にだけNFTを買ってもらいたい、とピュアにやったら投機マネーが入ってこなくなった、みたいな感じでしょうか。

やりすぎてはいけませんが、海外通販では売っていても一般には珍しい商品を発見するのはクラウドファンディングのひとつの楽しみでもあります。私も以前「Wish」という海外通販で怪しい商品を安く買うことにハマっていた時期があります。謎商品買いって面白いんですよね。

NFTの投機性も、そこだけに注目されてはいけませんが、楽しみや魅力のひとつではあります。

何事もバランスは大事。


■流通取引総額の増加につながらない人件費増加が痛手に

審査基準が上がったためにプロジェクト数が制限されます。それが結果として流通取引総額の減少を招きました。痛みを伴いつつ、クラウドファンディングプラットフォームの健全化を図ったのです。

しかも、この方針転換は人件費増という別の痛みも伴いました。

審査基準を上げれば、基準に合致しているかの審査項目が増えたり、是正のための出展社との調整などに人手がかかるようになります。

マクアケは2022年9月期2Qの人件費が3億6,200万円となり、前年同期間比で70.7%も増加しています。人件費の増加についてマクアケは、「オペレーション改善を目的とした人材採用に積極的な先行投資を進めた」と説明しています。審査等にかかわる人員を強化したのです。これがマクアケ最大の赤字要因です。

これを先行投資と位置付けているので、プロジェクトの純度を高めていくことが長期的にはクラウドファンディングのブランド価値を向上させ収益アップに寄与するとおいう発想なのだろうと思います。

しかし冒頭に「流通取引総額をできるだけ大きくすることが事業拡大の最大のポイント」と著した通り、

しかも、この人員強化は会社の成長を左右する流通取引総額の増加への貢献度が低いという特徴があります。

と評価されています。

良質なプロジェクトに厳選して、クラウドファンディング自体の価値を高め、競合他社より選ばれる環境を作る。これは一見して正しそうに見えますが、もはや既に購入型クラウドファンディングは面白ECだと認知されているということだろうと思います。


■NFTプロジェクトの信念と収益のバランス

NFTプロジェクトも、社会問題の解決や新しい民主主義の実現のためのツールとして期待される部分はありつつ、しかし世間一般でニュースになるのは「JPEG1枚が75億円!?」なのです。

こういう実情は冷静に見ながら、信念に共感してくれる人と投機的に期待する人をうまくまとめていくことが必要になってきていると感じます。

投資や金融の側面ばかりが注目されるWeb3だが、その真価は「民主主義」から「オープンソフトウェア」の開発まで、人々の協業の仕組みを再設計できる点にあるはずだ

web3やNFT、DAOに魅力を感じるのはお金じゃない、金臭いのは嫌いだ、という人はとても多いと思います。金臭いプロジェクトはweb3の技術を借りたWeb2的発想で古臭くも見えますし。

人件費が上がった2022年9月期2Qから四半期単体での赤字が出ています。広告費を絞り込めば流通取引総額が減少して人件費が重荷となり、赤字が膨らむ可能性があります。
(中略)
そうなると、マクアケは広告費や人件費、その他諸経費の微妙な匙加減で赤字体質を解消するほかないことになります。プラットフォームの健全化を進めたマクアケが、極めて難しい局面に立たされました。

純粋におもしろくて他で買えない独創的な商品が「お金が集まったら開発できるんです!」で開発されていく購入型クラウドファンディングの理想形は、一定必要だと思います。

しかしビジネス規模が一度大きくなった後は売り上げを下げると「業績悪化」と言われるし、上場企業なら株価が下がります。許されない状況に取り囲まれています。


■web3の理想との相似性、これからどうなる?

莫大な収益をプラットフォーム1社が上げ続けることへのカウンターカルチャーという側面もweb3にはあると思います。もしMakuakeがDAOだったら、収益を追わず理想を追う決定もできるかもしれません。もしガバナンス投票でそれが通るなら、理想を追いたいファンが人数として多いということですから。

クラウドファンディング本来の社会性イメージと、web3やNFTの民主化の思想性、そして逆に購入型クラファンを株式会社がプラットフォームとして運営し売り上げ成長を株主から要求されることと、NFTが投機マネーで成立していること。非常に似ています。

Makuakeがこれからどのようにバランスを整えていくのか、市場からどう評価されていくのかは、これからweb3、NFTが市場からどう評価されていくのかを相似的に表すような気がします。できれば理想を追求したことが評価されてほしい。バランスは大事なので何度か揺り戻しがありつつ、理想側に進んでいくことを期待しています。

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