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『カリフォルニア州、車両所有権のNFT化構想もコレジャナイ感』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.3.29

■カリフォルニア州、車両所有権のトークン化でブロックチェーン応用の先陣を切る:バンク・オブ・アメリカ

カリフォルニア州自動車局は、州内で登録されている1400万台以上の自動車をトークン化することで、車両の所有権と譲渡の管理システムに革命を起こそうとしている。

テゾス(Tezos)ブロックチェーンのプライベートバージョンに記録したNFT(非代替性トークン)として車両の所有権を発行する予定だ。NFTは、仮想的または物理的なアイテムの所有権を表す暗号資産で、販売や取引ができる。

ん~どうなんでしょう?

役所が管理している車両すべての登録情報、現在の所有者の台帳データをNFT化するニーズ、あります?


NFT売買だけで車両の所有権移転は理想的なのか?

自動車の所有権発行と譲渡のプロセスが数週間から数分に短縮され、スマートコントラクト対応のエスクロー口座を通じてより安全に所有権を譲渡できるようになり、不正行為が減少し、自動化によってコストが削減されるかもしれないと述べている。

確かに役所の登記事務手続きが面倒、遅いという課題はあると思います。
しかしNFT化してスピードアップすればいいという問題ではないと思います。

正規の登録かどうか、登録内容に誤りや不正がないかをチェックするから面倒で遅くなるわけで、NFT化して売買を自由化したら所有権移転は手続き不要、と一足飛びに行っていいものか疑問です。

また役所の登記データですから個人情報満載、パブリックチェーンに公開記録するわけにはいかないので「テゾスのプライベートチェーン」のNFTにしているようですが、第三者がトランザクションを確認できない状態では不正売買かどうかを確認する術がありません。安心して買えないのに手続きだけ簡素化してスピードアップしても不安です。


車両の所有権の細分化は利用の細分化ルールとセットであるべき

「車両所有権のトークン化は、細分化された車両所有を可能にし、保有者が車両所有権NFTを現実世界や分散型金融(DeFi)プロトコル内で担保として差し入れることをなどを通じて自動車市場の流動性を高めることもできる」

クルマは高額ですから所有権の細分化ニーズは投機的にはあると思います。また上記のように部分所有権を担保に借入するニーズもあるだろうとは思います。

しかし車両は1台しかありません。実需で乗るためなら、細分化した所有権のぶんだけ乗れる、それ以上は乗れない、を実現させるための運用ルールが必要です。

不動産の所有権を細分化する際には、ホテルのように年間○日宿泊できる、予約方法はこのWebを通じて行う、などのルールを決めるはずです。そしてそんな使い方の対象になる不動産物件は日常的に住む「住居」ではなくリゾート地の別荘のような物件に限られるはずです。


投機的ニーズの車両だけでいいのでは

カリフォルニア州に登記されている1400万台を対象に、すべてをNFT化すると、全車両が技術的には所有権の細分化ができてしまいます。

投機目的ではなく普段のアシとして使おうという大半のクルマの場合、1台まるまるの所有権を買い集めなければならないとしたら非常に煩雑です。所有者が1人でも「売らない」と決め込んだり、連絡が取れなくなっていたり、ウォレットのシークレットフレーズを忘れてGOXしていたら、その車両は1台まるごとゴミです。

また、今でもまだ多くの人にとってブロックチェーンは難解です。
すべての車両がNFT売買で移転する、ウォレットを持つ必要がある、ましてや支払いがテゾス(XTZ)で払う必要がある、だと悪夢です。(きっとそんなことはないはずですが。)

高額な資産を細分化して買いやすくすることは意味があると思っていますし、それを実現させるためにNFTを使うのは合理的だとは思っています。

しかし1400万台全部をNFT化する実需はない、と思います。


NFTは投機から卒業し実需を探る時期

ブロックチェーン調査データを公開するDuneによると、2022年に入ってからNFT取引は急減し、9月末までに年初比で97%減少しました。すなわち、約170億ドルあった月間取引量が約4億5,000万ドルにまで急激に低下しました。

LUNA事件、FTX事件などもあり現在はもっと状況が悪くなっています。

ブーム隆盛の頃に宣伝活動に駆り出されたインフルエンサーが大量起訴されています。もちろん未登録証券販売と見なされたり儲かるという触れ込みであっせんしたりする違法行為があったからですが、暗号資産に限らずNFTでも同じく証券と見なされたり必ず儲かると触れ込んだりした例はあるはずです。

NFT市場の時価総額は2022年までに350億ドル、2025年までに800億ドル以上に到達すると予想する調査もあります。
(中略)
現在、取引量が低下していることは事実ですが、NFT市場が終わりを迎えたと判断するのは時期尚早です。課題を抱えていますが新しい利用例も出てきており、今後もNFT市場の動向には注目です。

NFT市場自体は長期的には伸びると思っていますが、NFTアートの投機的売買やコミュニティへの帰属証明のための高額売買という市場がこれから何倍にもなるとは思えません。

NFT市場は将来伸びるのだ!

だからNFTアートは買いなのだ!

の「」にある論理の飛躍に、NFTアート投機ブームの頃に気づいた人がどれほどいたでしょうか?

NFT市場は将来伸びますきっと。でもNFTアート投機市場は伸びません。

今回ご紹介した自動車の登記情報のNFT化は、これまでのNFTアートの売買とは違うユーティリティの模索で悪くはない発想なはずなのですが、所有権を細分化してDeFiでレンディング、など、やっぱり投機的な方向に向かっているのが流行らないよなぁと感じます。

暗号資産の冬と呼ばれる今、そろそろNFTの実需に基づいたNFTらしい使い方で市場を作る方に目を向ける時期です。

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