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『IPOとIEOのダブルオファリングがなぜ難しいのか?web3会計士 水地先生の考察を紹介』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.3.8

■IPOとIEOのダブルオファリングがなぜ難しいのか?web3会計士 水地先生の考察を紹介

株式上場している公開企業が独自トークンを取り扱うことが非常に難しいのが現状です。これは日本に限った話ではありません。

さらにその独自トークンを暗号資産取引所にそのトークンを上場させるIEOを株式上場企業が行うのは非常に困難とされています。

いまは独自トークンを自社発行しIEOさせるような使い方をすると株式上場企業に義務付けられている会計監査を監査法人から忌避されます。監査忌避されれれば株式の上場が維持できませんので、独自トークンの自社発行やそのIEOの方をあきらめざるを得ません。

このことは会計監査事務のテクニカルな事象、つまり「上場企業が独自トークンを自社発行する=監査忌避される」くらいの理解だったのですが、昨日web3会計士の水地一彰先生が、監査忌避問題に留まらないIPOとIEOのダブルオファリングが難しい根本的な理由と解決法についてツイートされていましたのでご紹介します。

ただ、水地先生が挙げている原因と解決法についてコメントを現段階で持ち合わせていない検討不足な段階なので、ツイートを広くご紹介させていただき最後に個人的な感想を述べるに留めます。


≪困難な理由≫

(1)複雑なオーナーシップ構造 株主という株式会社のオーナーと、ガバナンストークンホルダーというプロダクトのオーナーとの間でのコンフリクト

(2)中央集権と自律分散の共存 株主総会、取締役会という株式会社の中央集権的な意思決定構造とトークンホルダーにより組成される自律分散的な集団の文化的背景の相違と指揮命令系統の有無とその線引き

(3)取締役の責任範囲と株主代表訴訟 ガバナンストークンホルダーのコンセンサスによりプロダクトの仕様が決定された場合、当該意思決定により株主利益が毀損された場合の取締役の責任範囲と株主の責任追及の議論

(4)株主権の行使がトークンホルダーに不利益を与えた場合の対応 トークンホルダーが明らかに不利益を受ける意思決定を株主総会、または取締役会でなされた場合のトークンホルダーの保護の仕組みの不存在

(5)株主兼トークンホルダーの立場 株主であり、かつ、トークンホルダーである二重のステークホルダーがとりわけ有利になる取扱いの決定の可能性とその制御方法

(6)プロダクトの不確実性 トークン保有者が大量にイグジットした場合のプロダクトの弱体化の可能性と成長性の疑義。

(7)インサイダ―情報規制 オープンな環境を好むトークンホルダーの文化的背景とそこで交わされるプロダクトに関するインサイダー情報の管理

(8)匿名性 匿名環境下では誰と取引しているか分からず、ガバナンストークンホルダーの出自・属性が確認できない問題。 つまり、反社がいないことを証明できないし、粉飾の温床になりやすい。

(9)トークン価格のボラティリティ トークン価格のボラティリティにより株価にまでボラティリティが生じることによる証券市場の不安定化

(10)株価とトークン価格の整合性 両者の価格差の現行ファイナンスロジックでの説明困難さ。つまり、トークン時価総額が株価時価総額を上回った際の論理的不整合

(11)資金調達の説明の困難性 IEOにより資金調達をできる中で、株式上場により資金調達する合理的説明の困難さ

(12)IEOプロセスとIPOプロセスに登場するプレイヤーのコンフリクト IEOプロセスとIPOプロセスにより登場するプレイヤー(東証、暗号資産交換業者、証券会社、監査法人、信託銀行)のコンフリクトと、片方の審査結果に対するもう一方の過度な保守的な評価の懸念


≪解決方法≫

(1)複雑なオーナーシップ構造

(2)中央集権と自律分散の共存

(3)取締役の責任範囲と株主代表訴訟

(4)株主権の行使がトークンホルダーに不利益を与える場合の対応

(5)株主兼トークンホルダーの立場

(6)プロダクトの不確実性 =>株主とトークンホルダーの二重ガバナンスの解消はマスト。
これを解消した上で、株主とトークンホルダーがコンフリクトしないインセンティブ構造の設計が必須。
端的に申し上げると、暗号資産にガバナンストークンとしてのユーティリティを持たせるのはアウト。

(7)インサイダ―情報規制 =>プロダクトの重要情報などのインサイダー情報ついては秘密保持契約にサインした者しか入れないクローズドな環境でのみ行うという従来型の情報管理の順守。

(8)匿名性 個人認証を完了した人しかトークンが買えない状態、もしくはトークンホルダーであっても個人認証した者でなければ取引が行えない環境の整備。

(9)トークン価格のボラティリティ

(10)株価とトークン価格の整合性 =>>解を持ち合わせていません。

(11)資金調達の説明の困難性 =>トークンのオファリングしない暗号資産取引所への上場。そして、株式上場時もダイレクトリスティングなどオファリングをしない上場スキーム。

(12)IEOプロセスとIPOプロセスに登場するプレイヤーのコンフリクト =>IEOプロセスとIPOプロセスのプロセスの擦り合わせと結果の共有など。


感想:使途を細分化したうえでのルール化を是非

困難な理由と解決方法案はいずれもそうだよなぁと納得しました。

独自トークンを株式の代替物のようなセキュリティトークンとして活用するケースについては特に株式上場企業としてのガバナンスルールが無効化してしまいますし、だからこそ米SECは頑なに「全部ガバナンストークンだから株式同等に規制する」と言い張っているわけです。

かたやGameFiなどで使うユーティリティトークンではガバナンス投票などの機能を持たせる前提がない場合が多く、それも一緒くたにして株式同等の規制をかけられてもトークンの使い道が狭まりすぎます。

最終的にはルールやガイドラインが策定され、準拠していれば監査が受けられてIPOとIEOのダブルオファリングが叶えられるようになるのだろうとは思いますが、トークンの使途を細分化したうえでルール策定するなど使い道をできるだけ幅広く選択できるとありがたいなと思います。

またトークンIEOだけで資金調達する企業群が株式公開の道を選ばなくなる「棲み分け」の状況はむしろ投資家や市場に対しての情報公開やガバナンスの透明性を失いやすくなりますので、トークン経済の信頼性を高めるためにもダブルオファリングが実現できるルールは必要だと思います。

株式上場企業がweb3業界に参入することは市場活性化やイノベーションの加速のためにも必要なことだと考えています。水地先生は最低5年かかるとおっしゃいますが、それが1年でも早く実現できることを願ってやみません。

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